日本百名山・磐梯山は満水の銅沼に感動したが山頂へのルートは残雪で不明瞭。

銅沼(あかぬま)

2019年5月9日 晴れ

道の駅いなわしろを車中泊の場にすると安達太良山と磐梯山に登るのに都合がいい。
昨日の安達太良山に続いて今日は磐梯山だが、登山口は6箇所あるうちでここからもっとも遠い裏磐梯にした。
道の駅から近い登山口は他にあるが、いずれも磐梯山の南面に位置しているのでさすがに雪はないだろうと考えたのだ。
山に雪がなければ今回の福島遠征は意味がない。
暖冬少雪だった日光では満足に雪の上を歩けなかっただけに福島県の山に期待してやって来た。この地も雪は少ないと耳にしているが、それでも日光とは格段の差があるはずなのだ。
是が非でも雪と戯れたい。

行程表(各地点は地理院地図と昭文社「山と高原地図」に基づく)
裏磐梯登山口(8:23)~噴火口分岐(8:46)~銅沼(9:24)~八方台分岐(10:59)~弘法清水(13:02)~磐梯山(13:54)~ピーク1457(14:52)~噴火口(15:35)~噴火口分岐(16:17)~裏磐梯登山口(16:35)

メモ
・歩行距離:13.4キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:8時間12分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1330メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

車中泊の拠点とした道の駅いなわしろからは磐梯山が一望できる。
実にいい形をしている。
磐梯山は東西南北に6つの登山口があって、昨年9月に2日続けて登ったときは一度の山行で2つの登山口を利用、2日間で4つの登山口を経験した。
ここからは磐梯山の南斜面を見ていて、猪苗代登山口と翁島登山口がある。少し東には渋谷登山口、山頂の向こうが裏磐梯登山口と川上登山口、左のすそ野が八方台登山口である。
今日は雪が残っていると思われる裏磐梯登山口を利用するが、時期をあらためて川上登山口と渋谷登山口からも登ってみたい。


磐梯山の北方、裏磐梯登山口。
スキー場が登山口となっていて駐車場が利用できる。


正面に磐梯山を見ながらスキー場のゲレンデを上がっていく。
ファミリー向けらしく急な斜面ではないから登山靴で歩くのも苦にならないのがいい。


振り向くと大きな桧原湖が見える。
林に隠れて見えないが桧原湖の右には小野川湖そして、秋元湖、五色沼がある。


遠くにいい形をした山が見えたのでズームで撮ってみたが、あれは西吾妻山だろうか?
中腹の白い弧はスキー場に違いない。


スキー場の途中に噴火口へのルートと銅沼(あかぬま)へのルートの分岐がある。
昨年は噴火口経由で磐梯山に登り、銅沼を経由して下山したので今日はその反対回りにする。


スキー場の終わりに大きな案内板があるので一通り読んで予備知識に(すぐ忘れてしまうが)。


ここから銅沼まで、平坦路が続く。


フキノトウだ。
平地の土手などで成育するものと思っていたら、ここのように標高が千メートル以上ある場所でも芽を出すんだな。


帰宅して画像を整理していて失敗に気づいた。
もうすぐ銅沼というところまで来ると、道が雪解け水をかぶって通行できそうにない。
その場面を撮ろうと思っていたところに後から来た登山者に声をかけられ、話し込んだのがいけなかった。
肝心の写真を撮り損なってしまったのだ。
銅沼の少し手前に沼というか池というか、地図に名前のない小さい池沼があって、そこから溢れた水が靴が水没するくらいある。
それを避けるため池沼の山側(西側)に回り込んだのがこの画像。
おかげで水没は避けられたが季節の貴重な写真を残すことはできなかった。
そいうえば、管理人と話をした男性はその後、どうしたんだろう?
磐梯山山頂まで出合うことはなかった。


藪こぎで時間をくってしまったが無事に銅沼にたどり着くことができた。


この日の銅沼は満水で実に見応えがあった。
銅沼と書いて「あかぬま」と読ませるが、当て字ではなく、銅の訓読みの「アカ」であることからきている。ではなぜ、あかぬまなのか?
それを貴重な画像を使って説明してみせる。
あっいや、その前にこの画像の説明を。
昔、この場所に小磐梯という1750メートルの山があったが、1888(明治21)年に大規模な水蒸気爆発が発生し、山全体が吹き飛んだ事実がある。崩れた小磐梯は岩雪崩となって北に流れ、住んでいた人も家も家畜も飲み込んで多大な被害をもたらせた。それによって生まれたのが大小数十もあるとされる湖池沼で、現在の裏磐梯の姿である。
ということが銅沼畔にある説明板でわかる(管理人の理解が正しければ)。
噴火で吹っ飛んだ小磐梯の跡がこの画像の正面に見られる山の壁で、噴火壁と呼ばれている。
噴火壁からその手前の林にかけてが噴火口として残っていて、登山ルートにもなっている。


銅沼は噴火によってできた窪みに雨水や雪解け水が溜まったもので、他に水の流入経路がない。
そのため渇水期には水位が下がって今とはまったく違う光景が出現する。


昨年9月に銅沼を訪れた際の前の画像と同じ岩。
昨年は空梅雨に加えて梅雨明け後も雨が降らなかったらしく、銅沼の水位は著しく低下していた。
岩は剥き出しとなり沼の底が見えていた。
岩の色が上下で違って見えるが茶色の部分が満水時の水位(前の画像)を示している。
この岩の色から銅沼には鉄などの金属を多量に含んだ水が溜まっていると考えて差し支えない。
という結論に導きたくて長ったらしい説明をした次第(笑)。


銅沼をたっぷり観賞したので先を急ぐことに。


登山道に埋め込まれた今は使われていない湯導管(源泉を旅館に運ぶためのパイプ)。


道はこの辺から傾斜になる。


残雪混じりの登山に替わり、足下がおぼつかなくなってきた。


これから先、ずっと残雪が続くであろうと考えてここでチェーンスパイクを装着した。


なにかの木の実?
いや、ニホンカモシカの糞のようだ。


今は廃墟と化した中ノ湯の旅館。
八方台登山口から近いので利用客は多かったらしい。
ここにたどり着くまでは大変だった。
踏跡のない雪の斜面を上がっていくと藪に当たって軌道修正を余儀なくされ、それを数回繰り返した。


前の画像の斜面を上がると八方台登山口への分岐となる。


振り返って西吾妻連峰方面を眺める。
大きな湖が3つ。左は桧原湖、中は小野川湖、右が秋元湖。


これは秋元湖ですね。


崩れた雪庇の脇を慎重に通る。


磐梯山直下、きれいな水が噴き出す弘法清水への案内板。
そこには2軒の売店があるが、この時期はまだ冬季休業中であろう。


厚みはないながらも残雪は絶えることなく続いている。
踏跡はあったりなかったりでルートがよくわからない。


ここがもっとも緊張した部分。
踏跡はしっかり付いているし雪は締まっている。
なのだが、、、


斜面は数十メートルにわたって続き、その間、立木などないから滑ったら止まることなどできない。


弘法清水を経て山頂へ行くには2つのルートがある。
この分岐をそのまま弘法清水へ進むとやや近い。
お花畑からも行けるが少し遠回りになるものの弘法清水で合流する。


山頂が見えてきたがまだ距離がある。
山頂のことは考えずにまずは弘法清水を目指そう。


なんとか目処が立った。
この斜面の上が磐梯山の山頂である。
さあ、頑張ろうといったところにガイドをしている仲間から仕事の電話が入り、せっかくの気が削がれる結果となった。
気合いを入れ直すのも大変に思い、ここで昼メシにすることにした。
案内板の下に伏流水の出口があって無雪期であれば美味い水が飲める。


さあ、行くぞ!
と気合いを入れるものの、この傾斜の前になかなか足が前に出ない。
大きく深呼吸をした上で重い足を一歩前へ出した。


ガレ場の斜面に雪はない。
気温の上昇で解けた雪は大小の石のすき間を縫っていち早く地面に染み込んでいくのであろう。


ヤッホー!
猪苗代湖が一望できる。いい眺めだ。
残雪でルートを見失ったり、急斜面に恐怖を感じながらも無事に山頂に達することができたので喜びは大きい。


猪苗代湖をズームで。
周囲50キロは25キロの中禅寺湖をはるかに凌ぐ。
いつかは一周してみたいものだ。


西に猫魔ヶ岳が見える。
あそこも今年の目標にしている。
2016年、日光の山から転じて福島県の山に登るようになったら、登りやすさと展望の良さにすっかり魅了され、虜になった。
奥の深い福島県の山は生涯かかっても登り切れるものではないが、まだ元気なうちにひとつでも多くの山に登りあの世への思い出として残しておきたい、そんな魅力がある。


山名板はガレ場の山頂から一段下がったところにある。
擦れた山名と標高を示すハッキリした数字の取り合わせがちぐはぐだが、これも山の個性であろう。


なんども登場する西吾妻連峰。
いいなぁ、あの形。惚れ惚れする。
昨年は浄土平からあの稜線の東に位置する東大巓まで7座を縦走した。
今年はその東大巓と西吾妻連峰の西端、西大巓とを結んでみたいと思っている。


飯豊連峰


いつまで見ていても飽きない景色だが下山のことも考えなくてはならない。
弘法清水まで下って別ルートで帰ることにする。
建物は「弘法清水小屋」で売店兼軽食堂になっている。
また、トイレブースが備えられ緊急時には携帯トイレ(販売もしている)で用を足すことが可能(ただし、使用後は登山口に設置してある回収箱に入れる)。詳しいことはこちら
また、この斜め向かいには「岡部小屋」があり同様に売店になっている。ただし、土日しか営業していないと聞いている。


ルートはここで先ほどのお花畑を回って銅沼へ、噴火口を経て登山口に降りる2通りの方法がとれる。ここは当然ながら往きとは別のルートで戻りたい。


鋭い形で構えているのは櫛ヶ峰。
地図には登山道は描かれていない。
ここから櫛ヶ峰の斜面の際まで進むとピーク1457地点に達するのでそこから北に向かって下りる道がある。ルートはハッキリしている。


黄金清水で喉を潤し、ボトルに補給する。


もの凄い形をしているな、櫛ヶ峰って。


磐梯山の東に位置する渋谷登山口への分岐。
出発地の裏磐梯登山口へは案内板の川上登山口に向かう。


新しもの好きの管理人の病気のようなもので、山で使う便利品には目がない。
今回はスマホの新しい地図アプリ「スーパー地形」を使ってのナビゲート(される側)である。
「スーパー地形」は管理人が長年愛用しているPC用の地図ソフト「カシミール3D」のスマホ版で、同ソフトの開発者がスマホ用に作成したアプリである。
「カシミール3D」を山で使うには別にGPSとノートPCを担いで登るという非現実的なことをしなくてはならないが、「スーパー地形」はスマホにもともと備わっているGPSを利用してナビゲートをおこなうため、道具はスマホだけでいい。
機能はこれも管理人が愛用している「Geographica」と同様に、ナビゲートする(される)には十分すぎるほどでまた、操作性もいい。
現在地やウェイポイントを示すアイコンは「スーパー地形」の方がやや見やすいが、機能的にはほぼ同等と考えていい。


ピーク1457地点。
ここから下りに転じる。


それにしてもなんという荒々しさ。
那須連峰も顔負け(笑)


ピーク1457からの下りは急である。
だいぶ疲れているのでゆっくりと慎重に下っていこう。


これが噴火口。
ここが山だったとは想像できないほどで、噴火のすさまじさを彷彿させる光景である。


噴火口から見上げる噴火壁。
噴火した小磐梯の残った部分である。


噴火口を過ぎると林間に入る。
ここはシラタマノキが圧倒的に多いが、よく見ると別の植物も見つかる。
これはイワナシ。


裏磐梯には大小あわせて数十という池沼が存在する。
五色沼と同じく、水の色がそれぞれによって異なっているのが面白い。


スキー場のゲレンデと合流した。
あとは緩やかな傾斜を下っていけばいい。


車を置いたスキー場のレストハウスに到着して磐梯山登山が終わった。