青空と樹氷と強風の太郎山

2018年12月1日(土)

前回の山行は10月30日だったから丸1ヶ月空いての山行となる。
しかも管理人自らの予定ではなく、お客さんからの依頼に基づくガイド登山なのでこれがなかったとすれば空白期間はもっと長くなったかもしれない。

とにかく11月は忙しかった。
本業がある日は出かけることができないばかりか、その前日は仕入れなど前準備で外出できない。その上、地域のイベントがあったり、穴が空いた床板を張り替えたり、経費節減のために車検(ジムニー)を自分でやったりしたものだから山歩きに充てる時間が削られ、というよりも皆無にひとしく、それで1ヶ月も空いてしまった。

いくら本業に関わる雑用がかさなったとはいえ、山に行きたくても行けないのは大きなストレスとなる。
管理人の場合、ストレスの大きさに比例して酒量が多くなり、自制が効かない。毎晩、ダラダラと飲み食いし、気がつけば寝る時間になっている。疲れと酔いで寝るのは早い。が、寝覚めは悪く起きると頭がボーッとしている。そんな怠惰な日々が何日も続くと次第に山への意欲が薄れてしまうものだ。それまで、あれほど頻繁に天気予報をチェックしていたのがウソのように、天気にも無関心になった。

山に行かなくなった時間と引き替えに得たのは夜、思いっきり飲んで食えるという快楽である。山歩きのための筋トレやランニング、節酒という抑圧から解放され、どうせ山に行けないのなら羽目を外したっていいじゃないかという思いが強くなるばかりである。
コントロールしていた体重も2キロ増えて身体の動きが鈍い。室内のちょっとした段差につまずいてヨロッ、、、とまではいかないもののこんな状態で山へ行ったらアブナイ。

「忙」しいとは、「心をなくす」と書きます。
綿密な計画にもとづく忙しさは人の成長の糧になるのかもわかりませんが、仕事に追われっ放しの生活は時間があっという間に過ぎ去り、充実感というものがありません。
なんとかしなくては、ナントカシナクテハ、なんとかしなくてはと思いながらもそのきっかけがつかめないまま、ずるずると引きずってしまいます。
まっ、これは本人の意志に大いに関係するわけで、すべての人に当てはまることではありませんが、こと管理人にはぴったりなんですね。

そんな折、この時期としては珍しく、ガイドの依頼が舞い込んだ。
依頼主は宇都宮市に住むKさんで、9月に女峰山、続いて男体山に登ったから次はその子供(※)の太郎山に登りたいと思って探したところ、当ブログ(9月28日の記事)が目に入ったらしい。
日程として11月の土曜日を希望されたが11月の日光は紅葉の見ごろと重なって管理人の本業が忙しくその上、市内の道路は激混みで登山口に着くのは午後になってしまう恐れがある。
やむなく、紅葉が落ち着いたら行きましょうとの約束で今日を迎えた次第だ。

自堕落な日々で体力の低下が心配だが、その日がくるまでに立ち直ろう。お客さんを前にみっともない姿を見せるわけにはいかないではないか。
管理人自身の意志ではないにしても、今回のお客さんからの依頼をきっかけに元の山歩き中心の生活に戻れればいい。だからKさんからの依頼に救われた思いがするというのが正直なところだ。
※日光連山には太郎山の他に大真名子山、小真名子山があって、これら三座を女峰山と男体山の子供と言い表している。
余談だが、この子供たち、母親の血筋を引いたのか手強い山として名が知られている。


行程表(各地点は地理院地図と昭文社「山と高原地図」に基づく)
太郎山登山口(7:50)~山王帽子山(8:47/8:52)~ハガタテ薙分岐(9:43)~小太郎山(10:41/10:50)~太郎山(11:19/11:25)~小太郎山(12:00/12:15)~ハガタテ薙分岐(12:46)~山王帽子山(13:40)~太郎山登山口(14:36)
・歩行距離:9.6キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・歩行時間:6時間46分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1250メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

光徳温泉と川俣温泉を結ぶ山王林道(※)の太郎山登山口。
表示は太郎山となっているがその前に山王帽子山と小太郎山を越えなくてはならず、このルートはけっこうな長丁場になる。
ルートは他にもう1本、裏男体山から新薙を上がっていくのがあるが、以前なら登山口まで車で行けたのにいまは4キロ手前の飯場跡で通行止めとなっていて、往復8キロ3時間の林道歩きを強いられるからその苦痛を考えると現実的とは言えない。

※山王林道は車の通行量が少ないことから積雪があっても除雪しない。そのため、12月(今年は3日)から4月末頃までゲートが閉まって通行できないので注意。
ここへ来るには光徳温泉から歩くしか方法がない。


まずは山王帽子山を目指し笹が刈られて歩きやすい登山道を歩いて行く。
広葉樹の葉はすでに落ち見通しが良くなっているがこの山はとにかくコメツガが多い。
風がやや強いがこれから樹林帯に入るので身体に直接受けることはないはずだ。


コメツガの樹氷。


コメツガは1センチほどの葉が密生しているので露や雪は落ちずに溜まり、それが気温の低下で氷状になる。


樹林帯から抜け出すとそこは山王帽子山。
1時間弱で着いた。


山王帽子山を越えると今度は小太郎山との鞍部まで一気に160メートルの下りが待っている。


鞍部の次は標高差400メートル、勾配22度という長い登りに転じるので脚力を残しておくためにも時間をかけてゆっくり上っていく。往きはいいのだが帰りの下りが辛いのだ。


ほっ、小太郎山だ。
太郎山まで800メートルのところまで来た。


南に男体山が見える。
とはいえ雲が多く日差しを遮っている。


目指すはあの頂、太郎山だが難所がある。
小太郎山から先、岩場が待っているのだ。気を抜けない。


うっすらとはいえ雪で濡れた岩場を安全にクリアするため写真を撮る気持ちの余裕などなく、太郎山へと向かった。


30分に一度、5分間の休憩をとりながら3時間20分で山頂に着いた。
前回、9月28日は定期的な休憩に加えて小太郎山からの展望が良かったので20分も休んで4時間6分かかった。それを差し引いても今日は30分ほど早かった。
ではここで昼ご飯、、、といいたいところだがもの凄い風に追い立てられるようにして早々に下山することにした。どこかの岩陰で風を避けて食べよう。


このルートは何本もの倒木が道をふさいでいて、そのたびに潜ったり跨いだりしなくてはならない。


立ち枯れの斜面を通過。


目の前に小太郎山が見えてきた。
あそこまで行けば強風を避ける大きな岩がある。


岩場を巻くようにして下り次に岩場を上る。
昼食はこの上の岩の陰で食べることにしよう。


標高差400メートルという小太郎山からの長い下りを終えて山王帽子山との鞍部に着くと今度は160メートルの登り返しだ。


山王帽子山は朝通過したときよりも雪が増えたみたいだ。


霧のような細かい雪が降り続きこの時間の積雪は3センチに達している。
木の根が隠れ知らずにその上に足を着くと滑る。バランスを崩して危うく尻もちをつきそうになったのが数回あった。
山はそろそろチェーンスパイクを必要とする時期になってきた。