天上の楽園、田代山湿原へふたたび。今回はお客さまと。

2018年7月22日 晴れ 行程表

3日間の福島遠征から戻って間もなく、今度はリピーターを福島県の田代山湿原にご案内した。
今年3月、管理人が主催するスノーシューツアーに参加してくれたKさんとYさんで、その際に雪のない季節の日光も素晴らしいから是非とPRしておいたのだ。
それが実現して喜んだのはもちろん、管理人に他ならない。
ふたりとも豊富な登山経験と知識があるから話が楽しい。空に雲がかかっていても景色が明るく見える。花がより美しく映える。さらには、、、これがもっとも大切なことなのだが、井の中の蛙を自認する管理人にとって、世界が広がるのがいい。
それがガイドを生業とする醍醐味と言って過言ではない。
もちろん、相手による。
話題に乏しい管理人に話を合わせてくれる気遣いや、ときに的外れな解説で浅学を露呈する管理人を大目に見てくれるなど、知的センスを感じさせてくれる必要がある。ということを歳を重ねるとともに深く思うようになってきた。
あと数日で古稀を迎える管理人なのである。

さてと、独り言はこれくらいにしてそろそろ出かけることにしましょうか。
場所は栃木県と福島県の境(日光市との境ともいえる)にある田代山湿原である。
隣接する帝釈山とともに、降った雨を日本海と太平洋にわける中央分水嶺の山として知られている。

県境にある山とはいえ、日光からのアクセスは悪い。電車だと絶望的である。マイカーの場合、日光からのルートは2本。距離が短いのは霧降高原経由で栗山から土呂部を抜けて林道を走るルート。ただし、土呂部から先はとんでもない悪路を走ることになる。速度は20キロ以上出せないから土呂部から1時間はかかる。
あちこちで山が崩れているしガードレールもない。冒険なのである。
もう1本は福島県南会津町の舘岩まで走り、そこから南下して湯ノ花温泉を抜けるルートである。この林道も砂利道だが田代山登山で利用する人が多く日光側ほど酷くない。ただし、日光から舘岩までの距離が90キロメートルと長い。2時間かかる。舘岩から登山口までの20キロは1時間かかる。
どっちもどっちなので飽きがこないよう、往きは日光側から入り帰りは福島県に抜けて舘岩から日光に戻ることにした。


行程表
猿倉峠登山口(10:45)~小田代(11:57)~田代山山頂(12:41)~弘法大師堂(13:11/14:15)~猿倉峠登山口(15:42)


田代山猿倉登山口お客さんとは8時半に東武日光駅で待ち合わせ、コンビニで昼食を買って現地へ向かった。
ここまでの所要時間は約2時間。それでも田代山は日光からもっとも近い福島県の山だ。管理人、一昨年から福島県の山を登るようになったのが遠くは5時間かかった。それに比べれば2時間は近い。

田代山の登山口となる猿倉峠の駐車場は日曜日ということもあってこの時間、管理人の車を駐めると満車であった。
でも心配はいらない。
ここから300メートル先(南会津町側)へ行けば同じくらいの広さの駐車場があり、トイレも備わっている。登山口から遠ざかるという理由だけでガラ空きなのである。


登山口の案内板大きな看板には田代山・帝釈山登山口と表示されている。帝釈山は田代山と稜線続きの分水嶺の山。その帝釈山には田代山から1時間10分くらいで登れる。
帝釈山に先に登って田代山という方法もあって、その場合は檜枝岐から林道を走って馬坂峠まで行く。そうすると登山口から40分もかからず登れてしまう。
一昨年の10月、中央分水嶺を踏破した人が書いた本を読んで興味をもち、田代山と帝釈山、荒海山といった山が手近にあることを知って、初めに田代山から帝釈山、二度目に帝釈山から田代山を登ったことがある。
一度目は冒頭に書いたように土呂部から悪路を走って猿倉峠へ行き、二度目は檜枝岐を通過して馬坂峠まで走ったのだがその際、檜枝岐に会津駒ヶ岳の登山口があることを見つけた。日光から近いと思っていた帝釈山よりもさらに近いところに会津駒ヶ岳(日本百名山)があることに思わぬ発見をした気分になって喜んだものだ。
会津駒ヶ岳に登ったのはその5日後であった→こちらに詳しく
ちなみに分水嶺(尾根、峰)だからといってそこが必ず登山道になっているわけではない。登山道がたまたま分水嶺に位置しているということである。分水嶺の多くは深い藪になっていてそこを歩くには大変な苦労を強いられるということが本を読んでよくわかった。
藪が雪に埋もれる冬が分水嶺歩きの適期だそうだ。

参考
新樹社・細川舜司著「日本の分水嶺をゆく」単独初踏破の全記録


登山者カードのポスト前回、6月22日に訪れたときもそうだったが、この山では登山者カードを受け付けていない。管理している南会津町からここまで砂利道を走って1時間もかかるから、おいそれと回収に来ることができないという理由なのかもわからない。しかし、せっかくのポストがもったいない。
※前回の様子→こちら


ツルアリドウシツルアリドウシ
地味な花である。


前回(6月22日)も記事にしたが田代山へのルートは登山口からすぐ急登になる。
ときおりこのような平坦な場所があるが、小田代までは急登と考えた方がいい。


オトギリソウオトギリソウ


ワタスゲは終わっただいぶしょぼくれてしまったがワタスゲ


キンコウカ尾瀬でも人気のあるキンコウカ(金黄花)


キンコウカ少しアップで


キンコウカ小田代の標柱に着いた。
ひと月前のワタスゲ乱舞はすでになく、今はキンコウカの盛りだ。


KさんとYさん今日のお客さまは今年3月にスノーシューツアーに参加してくれたKさん(左)とYさん(右)。
Yさんは各地の山を登っている山女子、Kさんは苔に詳しいコケジョなんである。


サワランキンコウカに混じって鮮やかな色合いのサワランが咲いている。


キンコウカキンコウカをアップで


イワショウブイワショウブ
花が終わるとピンクの実に替わる。


キンコウカキンコウカは湿原のどこでも見られた。


田代山湿原小田代は小さく、通り抜けると再び急登。
急登はすぐに終わり、本命の田代山湿原に着く。


田代山湿原田代山湿原の入口に佇んで日光から那須にかけての山並みを眺める。


田代山湿原を謳歌するKさんとYさん我々の後ろには誰もいない。
湿原を謳歌するKさんとYさん。


Kさんはしきりと湿原をのぞき込んでいる。
苔を探しているのだ。


モウセンゴケモウセンゴケが見つかった、というよりもよく見ると一面、モウセンゴケだ。


モウセンゴケの花モウセンゴケの花も多く見られた。


弘法沼田代山湿原は水は豊富だが池塘は少ない。
これは弘法沼。

サワラン鮮やかな紫色のサワラン。が、株は少ない。


イワショウブこれもイワショウブ


湿原をのぞき込むふたり腰を落として湿原をのぞき込むおふたり。
その視線の先は、、、


ミズゴケとモウセンゴケミズゴケと食虫植物のモウセンゴケだった。
モウセンゴケのこれは葉っぱ。葉っぱからはたくさんの毛が出ていて甘い香りの粘液を出す。それにつられて昆虫がとまると葉っぱが丸まって昆虫を包み込んでしまう。昆虫はその状態で消化吸収されるという恐ろしい植物なのである。
自然界では植物と昆虫は共存していると思われがちだが、非共存関係ということもあるのだ。


ミズゴケミズゴケをマクロで撮ってみた。
表情豊かだ。


イワショウブイワショウブもマクロで。


チングルマそろそろ散髪はどうだい、チングルマくん?


弘法大師堂湿原の折り返し点から帝釈山の方向に進むと2棟の建物がある広場に出る。
そこには弘法大師堂という避難小屋とチップ制のトイレがある。


綺麗なトイレ週に4~5回はスタッフが掃除に訪れるという清潔なトイレ。
その脇にはコンクリート敷きの休憩所がある。
登山者への気遣いが感じられる。
2016年10月7日の様子→こちら
2016年9月15日の様子→こちら


下山話が弾んだ。
十分すぎるほどの休憩の後、下山することにした。
折り返し点まで戻って木道を湿原入口へ向かう。


ニッコウキスゲおぉ、ニッコウキスゲが!!
先月来たときに登山届け入れの中に田代山のパンフレットがあったので持ち帰り、咲く花のリストを見たらこの花があったので期待していたのだが、本当だった(^^;)
日光だと霧降高原の群落が有名だが福島県では各地で見られるようだ。管理人、福島県内のニッコウキスゲはここと那須連峰北の大峠で見た。


ヨツバヒヨドリヨツバヒヨドリ


ガクアジサイう~ん、ガクアジサイなんでしょうねぇ。


センジュガンピセンジュガンピ
奥日光の千手ヶ浜で発見されたことから名前がついている高山植物だが前述のパンフレットには載っていない。


水場で登山口の近くまで降りると水場がある。
綺麗な沢水で、飲める。


無事に下山ちょうど5時間の山と湿原の旅だった。
日光からの移動時間は長く、山の中を歩くのとほぼ同じ時間だ。
しかし、湿原の光景と花を楽しむのに移動時間の長さは負担にはならなかった。


猿倉登山口へ行くのに日光から土呂部を経由するのと舘岩を経由するルートの距離と時間を比較してみた(いずれもグーグルマップで計測)。

ルート 距離 時間
ペンション~土呂部~猿倉登山口(霧降高原、栗山経由) ペンション~土呂部:54キロ
土呂部~猿倉登山口:18キロ
72キロ
ペンション~土呂部:55分
土呂部~猿倉登山口:65分
2時間
ペンション~舘岩~猿倉登山口(川治、会津田島経由) ペンション~舘岩:91キロ
舘岩~猿倉登山口:18キロ
109キロ
ペンション~舘岩:116分
舘岩~猿倉登山口:56分
2時間52分

舘岩まで行って南下すると52分も余計にかかる。猿倉登山口に早く着きたいので、往きは悪路を我慢して土呂部から北上するのが常道。帰りは南会津町の田園風景を楽しみながらドライブするのがいいかも。


田代山湿原をグーグルアースで見ると、小田代から上がってきて弘法大師堂に至るまで見事に真っ平ら。広さは約25haもあるそうだ。これほど広い山頂は他に類を見ないのではないだろうか。


次の日

イタリア大使館別荘跡予備日としていた翌23日は丸一日、自由時間となった。
日光はあまり馴染みがないおふたりに管理人が観光案内をして差し上げた。
ここは中禅寺湖畔にある元イタリア大使館の別荘。
1997年まで実際に使われていたものを栃木県が買い取って改修し、一般に公開するようになった。贅沢な時間が過ごせる→より詳しく
なお、以前は任意のチップ制だったが現在は維持管理の名目で200円の入館料が必要。次に紹介するイギリス大使館別荘跡も200円だが共通券を買うと300円。


イギリス大使館別荘跡こちらはイギリス大使館別荘跡。イタリア大使館別荘跡に隣接する。
使われていたのは旧イタリア大使館よりも最近で2008年まで。やはり栃木県が買い取って改修し公開されるようになった。→より詳しく


窓ガラスから望む中禅寺湖。
写真では伝わらないが肉眼だと景色が歪んで見える。
建物は老朽化に伴って再建築したものだが、ガラス戸は当時の雰囲気を再現するため建具そのものを再利用している。
管理人の古い記憶では、たしか通っていた小学校の窓ガラスも外の景色が歪んで見えた。
当時はそれを普通に感じていたが、いまこうして中禅寺湖を眺めるとガラス製造技術の未熟さが返って新鮮に感じる。


広いロビーで往時を偲ぶYさんとKさん。
実際に利用されていた頃の大使館など見たこともないが、壁が白に統一されていてモダンな雰囲気を醸し出している。


大使の執務室(だったかな?)


中禅寺湖と男体山場所を中禅寺湖スカイライン展望台に移し、景色を楽しんだ。


中禅寺湖と男体山ここは中禅寺湖を俯瞰する絶景の地。