栃木県最北の2千メートル峰、帝釈山へ。田代山湿原も堪能(?)したが濃霧に泣く。

2016年9月15日(木) 天候:霧雨/濃霧

猿倉登山口(7:07)~小田代(8:27/8 : 32)~田代山頂(9:00/9:10)~弘法大師堂(9:18/9:45)~帝釈山(10:51/11:20)~弘法大師堂(12:25/12:50)~田代山湿原西(12:48/12:55)~小田代(13:23)~猿倉登山口(14:12)

22年も日光に住んでいながら日光以外の市町村のことをよく知らない。
では日光なら隅々まで知り尽くしているのかといえばそんなことはなく、特に平成の大合併がおこなわれて栃木県の面積の1/4を占めるようになってからというもの、市内の別の場所へ行くにもカーナビに頼らざるをえない。

山にしたって昨年になってようやく日光以外の山を楽しむようになった。といってもお隣の宇都宮市にある古賀志山だけど(^^)
それほど山は日光で充分足りていて他に目が向かないのだ。
このままでは井の中の蛙になってしまうからもっと遠くの山へでも行こうかと、昔、家族旅行で歩いたことのある鬼怒沼を思い出し調べたところ、そこも日光市であった。登山口まで車で1時間半もかかるのにだ。

鬼怒沼へは先月25日と今月9日に行ってきた。
期待に違わず鬼怒沼は美しかった。広くて開放感がある。
大小いくつもの池塘が鬼怒沼の美しさを際立たせている。
歩きながら、ここを我がフィールドにしたいと思ったが、車での移動時間に加えて片道4時間もかかる距離の長さがそれを許してくれない。

鬼怒沼の計画を組んでいるとき、鬼怒沼の北西、群馬県境に鬼怒沼山(2141M)という魅力的な名前の山があることを知った。実際には笹藪の中の畳一枚ほどしかない山頂は展望もなく、おそらく二度行くことはしないと思うが、これまで日光西部にしか目が向かなかった管理人にとって、鬼怒沼山に登ったのは日光の奥深さを知るいい機会であった。

興味がわいたので、地図の上でのことだが、県境をさらに北へ辿ってみるとやがて栃木、群馬、福島の3つの県が交わる場所があり、そこに黒岩山という2千メートル峰がある。黒岩山(2163M)の先で福島県境になって台倉高山(2067M)、帝釈山(2060M)、田代山(1926M)、少し間が空いて安ヶ森山(1354M)、荒海山(1581M)へと続いている。そして男鹿岳(1777M)が日光市と那須塩原市との境になる。
いずれ日光市の2千メートル峰すべてを登りたい気持ちのある管理人は北部にも登れそうな山があることで、夢がぐんと広がった。
あぁ、なんと些細な夢で満足できてしまうんだろう、俺って(^^)

手始めに黒岩山にでもと思ったが、昭文社「山と高原地図」によると鬼怒沼からでさえ2時間半と長丁場だ。鬼怒沼まで女夫淵から4時間かかるから片道だけで少なくても6時間半を見ておかなくてはならない。
ましてや日が短くなる一方のこれからの季節だとヘッドランプの灯りを頼りに歩き始め、ヘッドランプを灯して帰っ てこなければならない。日帰りの限界を超える距離と時間で危険すぎる。
まだ実現にはこぎつけていないが、前回9日の山行記録はそこのところを考察してみた。→詳しいことはこちらに

次に候補として挙げたのは帝釈山だ。
黒岩山よりもさらに北へ遠のくが、南会津の猿倉を登山口にすれば往復10キロ、7時間半で行って帰ってこれそうなのだ。途中、鬼怒沼のほぼ倍の広さを誇る田代山湿原を通るため歩く楽しみは大きいらしい。
難易度の高い黒岩山の前に、福島県境の山特有の環境というものがあるとすれば、身体を慣れさせるためにも登っておくべきだろうと思う。

つい先日まで、難易度の高い未踏の山として皇海山と錫ヶ岳を挙げていたのだが、錫ヶ岳をクリアしてホッとする間もなく今度は黒岩山他、日光北部の山が候補に浮上して気持の休まる暇がないw

それでは行って来ま~す。


6:52
帝釈山の登山口は2箇所あるが今回は地図に車道として描かれている猿倉登山口にした。田代山を経由するルートである。
もうひとつは帝釈山の南に位置する馬坂口だがこちらは「軽車道」といって、幅3メートル未満の細い道なのだ。万一、路肩が崩れていたり斜面が崩落していたりするとそこから先へは進めないものと想像できる。
だが帝釈山まで1時間ほどで登頂できるらしいので魅力はある。
まぁでも、初回は登山口まで確実に到達できるよう、やや安全な道を走ることにした。
経由する田代山は鬼怒沼と同じ高層湿原だし一度見てみたいと思っていた。
その田代山は日光市栗山から始まる県道249号線を走り、途中で350号線に名称は変わるが同じ道を走って県を跨いで福島県に入り、南会津町の猿倉登山口に車を駐めて歩き始める。
ここまでが長かった。2時間かかった。誤算だった。
距離でいえば50キロ強なので女夫淵まで行くのと変わらないのだが、県道は土呂部をすぎた辺りから大小の石が転がる砂利道となり、それが猿倉登山口までずっと続く。うんざりするほど長い。
時折、車体に石がぶつかる音がする。速度を上げることができない。20キロ以下での走行を強いられたのが2時間もかかった原因。


7:07
猿倉登山口に着いたのは7時を回っていた。


台倉高山までの行程を示す案内図があったので眺めていると、なんとなく違和感がある。
理由は地図の上が北になっていないからだ。
現在地から田代山へは西、田代山から台倉高山へは南西に向かうのだが、この案内図だと南へ下ってそれから東へ向かうようになる。東西南北が逆転している。
右隅の方角を示すアイコンを見て、あぁそうなのかと知るが、紙の地図を見慣れているとこのような案内図は頭が混乱する。南会津町いや、環境省かな? に減点1。
ここまで予定より30分オーバーで走ってきたので機嫌が悪い。案内板を相手に文句を言ってる管理人なのである。


駐車場の前を流れる沢。地理院地図によるとここから下流に向かって、新道沢という名前が付けられている。
雨ではないが霧の重たいやつが身体にまとわりつく。強い雨にならなければいいが、、、


歩き始めると間もなく、水場を示す案内板があって右を見ると小さいが勢いのいい沢が流れている。
ザックには充分すぎるほどの水が入っているので立ち寄らず、先へ進んだ。


間伐材を利用した階段がある。
丸太の表面は滑るから靴を載せない方が無難。


前方がやや明るい。小田代かな?


8:27
田代山湿原の手前に位置する小さな湿原、小田代に到着。
小田代と書いて「こたしろ」と読むらしい。奥日光のは「おだしろ」。ちなみに、田代とは湿原のことを指す。
やや雨が強くなってきたので雨具を着込む。ズボンをどうしようか迷ったが面倒に思え、上着だけとした。


オオカメノキの真っ赤な実。


8:53
田代山湿原の入口に着いたようだ。長い木道が見える。
入口で木道が分岐している。
地図を見ると木道は湿原を一周するように敷設され、左回りの一方通行になっている。
道標が示す帝釈山方面へ歩き、一周すると画像左に見える木道を歩いてここに戻る。


弘法沼らしき池塘。
鬼怒沼と同じくここも標高2千メートルに近い高層湿原だが鬼怒沼と違って池塘は少ない。目につくのはこの弘法沼くらいだろうか。
それにしてもこれだけ大きい湿原だと植物の種類も多いんだろうなぁ、是非来てみたいが人が多いのはいやだなぁ、やはり花が咲き終わって人がいないこの時期がいいのかなぁ、と心が微妙に揺れ動く管理人なのである。


9:00
弘法沼のすぐ先で木道が分岐する。ここが標高1926メートルの田代山頂らしい。山頂ではあるが周りよりも標高が高いいわゆるピークではない(って、わかるかなぁ、この意味)。
続けて湿原を歩くには左へ行く。右へ行くと木賊温泉だがその距離12キロと刻まれている。
それにしてもなんと見事な霧なんだ。幻想的ではあるが日光霧降高原に住む管理人にとって霧は日常、見慣れている。できれば視界すっきりの湿原を歩きたかったというのが本音。


帝釈山へは田代山頂から南西に向かって歩いて行くが濃い霧のため距離感がつかめない。


9:17
田代山湿原の西の外れ、ここが湿原の折り返し点でなおかつ、これから向かう帝釈山への分岐。


湿原をあとにしてふたたび林の中へ入っていく。
滑る足下を気にするあまり下を向いて歩いているから周りの樹木が目に入らない。顔を上げるとあれはツツジにシャクナゲだろうか。針葉樹はコメツガか。


9:18
林の中から2棟の建物が見えた。
近づくとそれは高床式のトイレと避難小屋であった。


避難小屋と書かれた木札の右には弘法大師堂という木札が並んでいる。はて、弘法大師堂とは?


トイレの階段を上り中へ入ってみた。おぉ、なんときれいな!!
登山靴のまま上がり込むのは躊躇うほどの清潔さだ。


きれいに保たれている理由は清掃が行き届いている上に、土足禁止だったのだ。
床に大小2種類のサンダルが置いてある。右のはごく普通のサイズ。それに比べると左のは相撲の力士用かと思うほど大きい。
なんのためのサンダルなのかと思って壁に目をやると、注意書きがあり、登山靴のまま履けるサンダルなのだ。登山靴を脱ぎ履きするのは実に面倒なのでこの配慮はとてもありがたい。
これほどきれいな上に登山者への配慮がされているとは実に素晴らしい。先ほどの案内板への減点は取り消すことにした。


こちらもきれい。
車いすで入れるくらいの広さがあるがここまで車いすで来ることはできない。


なるほど、チップ制なのか。
管理人、「小」を利用したのだが小銭の持ち合わせがなかったため協力することができなかった。
次は2回分のチップを置いていこう。
いずれにしても管理している南会津町には敬意を表したい。


トイレの脇に設けられている休憩スペース。地面から一段、高くなっているので靴が運んだ土は雨で流されるようになっている。木々に遮られて景色は見えないがそこまで望むのは罰があたるというものだ。ちなみにトイレとこのスペースは平成23年度に建設された。と、トイレ外壁の銘板に書かれているのを見逃さなかった(^^)


こちらは避難小屋の内部。
扉を開けたとたんに目に飛び込んできたのがこのお堂。弘法大師の仏像が祀られている。
建物入口に掲げられている弘法大師堂という木札はこのことだったのね。いやぁ、度肝を抜かれました(^^)
四国巡礼だと同行二人という言葉があり、一人で歩く場合でも弘法大師が常にいっしょにいて安全を守ってくれるそうだ。これから帝釈山に向かうにあたって管理人も弘法大師像に向かって拝んでから扉を閉めた。弘法大師様、同行してくれるのだろうか。

小屋の中はゴミひとつなく、利用者のマナーのほどが伝わってくる。町による管理もされているのだろうか。
雨足が強くなってきたのでここで雨具の下を着けることにした。
きれいな避難小屋にきれいなトイレ。日光では考えられない設備に、登山者を快く迎えようという南会津町の気持ちが表れている。


避難小屋から先は一旦、下って、それから帝釈山まで緩やかなアップダウンを繰り返しながら標高を上げていく。


赤い実を残して枯れゆくゴゼンタチバナ。


今日は足の動きが悪い。
泥濘を避けるようにと地面に敷かれた木材や丸太のせいだと思う。滑るのだ。
木材や丸太は古く、水をたっぷり吸い込んで朽ちかけているものがある。傾いているものがある。丸太は3本、組み合わさって進行方向に長く置かれている。ばらけてしまっているものがある。太さの違うものがある。いずれも濡れていると滑るから慎重に足を運ばなくてはならない。バランスの悪さを自認している管理人としてはとても気をつかう。


アルミ製の脚立を梯子の代わりにした岩が2箇所ある。
古賀志山とは違うから梯子を利用する方が賢明。ここで格好つけて岩を登り、滑落したら笑いものになるはずだ。


ツツジに違いないがヤシオツツジだろうか。


10:51
雨で滑りやすいという悪条件ながら無事に到着。
山名板には南会津町と書かれているが日光市との境界線上でもある。
このまま檜枝岐登山口へ進むと馬坂峠という林道に降りることができ、その林道は日光に続いているらしい。次回、挑戦してみたい。でもそっちの林道も悪路なんだろうなぁ、きっと。


山名板を背にして立つと南を向く。
この方向に日光の山並みが見えるはずなのだが濃い霧のためご覧の通り、、、
今年は霧と縁が深い管理人である(泣)。


帝釈山からの戻りは同じ道を辿って田代山湿原へ向かう。
帝釈山を下りると緩やかな気持ちのいいアップダウンとなる。


12:25
避難小屋(左)とトイレ(右)に到着。
下山まで時間はまだ充分あるのでトイレ脇の休憩スペースで時間をつぶすことにした。


田代山湿原に向かって快適だが滑りやすい木道を歩いて行く。


12:44
田代山湿原の分岐。
正面に見える長い木道が手前に向かっての一方通行で、ここまでが半周。ここを右へ進むと一周できる。また、それ以外に帰る方法がない。
左に見えるのは休憩スペース。


湿原の中に咲いているのはアキノキリンソウのように見えるが、あれって湿原に咲くのだったか?
帰ったら調べることにしよう。
→湿原に咲いていたので惑わされたがアキノキリンソウに間違いないようだ。


高さ10センチほどのモウセンゴケ似の花。
これもあとで調べることに。


これは鬼怒沼でも見たイワショウブ。
花は白いが終わるとこのように朱に染まる。


とにかく広い。鬼怒沼のほぼ倍、25ヘクタールもあるらしい。
木道は湿原を一周しているが部分的に1本しかないため一方通行になっている。
したがって他のハイカーとすれ違う事態にはならないものの花の写真を撮るときなど、後続の人を待たせてしまいそうだ。
花の季節はどのようになってしまうんだろう? 足の遅い管理人としては気になるところだ。


13:10
湿原に別れを告げて林間へ。


これは紛れもなくアキノキリンソウ。


ヤマハハコ


14:00
駐車場近くまで来たので水場になっている沢へ降りてみた。


水は大きな石の隙間に差し込まれた塩ビ管から勢いよく流れ出ている。カップはここに備え付けられているもの。
登山口から10分という場所柄、この水場の有用性についてはわからない。


14:12
雨の平日にもかかわらず車が6台に増えていた。
田代山湿原で折り返すハイカーが多いのかも。


帰りもこの道を走らなければならないと思うと気が重くなるが、他に道はなし。
まだ明るいことだしゆっくり走ることにしましょ。


今日は南会津町(福島県)をスタート地点としたが目指したのは県境にある帝釈山だった。相変わらず日光から外へ出ることのない管理人だ。
福島県から歩き始めるのは今回が初体験。花の季節の田代山湿原はさぞ素晴らしいと思う。
田代山湿原だけでも満足できそうだが自宅から登山口まで2時間もかかるので、どうせなら帝釈山とのセットで登るのがいい。あと2・3度、通ってしまいそう。

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