雨後の風荒れ狂う山王帽子山にチェーンスパイクで登る。

2016年2月21日(日)
光徳~おとぎの森コース~太郎山登山口~山王帽子山ピストン~光徳

お客さんとのツアーを予定していた今日21日は、前々から雨の予報は出ていた。
が、予報は奥日光の天気を正確には表してくれない。
観測計が奥日光と50キロ以上離れた大田原にあり、その観測データに基づいて予測されるのが奥日光の予報であるため、往々にして外れる。
特に標高の高い奥日光は大田原とは気温差が5度もあるので雨の予報が雪になるのは当たり前のこととなっている。

管理人が住む霧降高原の麓は予報通り、土曜日の午後から雨になった。
奥日光の天気が気になるところだがその場合は、戦場ヶ原にある「三本松茶屋」がネットで公開しているライブカメラの映像と気象観測データを観ることにしている。大田原の観測データよりも当然だが、現地の実態を正確に表していて役に立つ。ただし、気圧や気温の傾向から予測は自身でおこなわなくてはならない。

霧降に雨が降り出した時間からずっと、三本松茶屋のライブカメラを観続けていると13:15現在の気温は0.1度まで下がり、気圧も急降下している。ライブカメラに映る三本松茶屋の駐車場は雨に濡れているが背景に映るしずくはみぞれのようにも見える。雪に転じる兆しだ。

15:30、それまで濡れて黒っぽく見えていた地面がうっすらと白くなったのを確認した。よしっ、いいぞ! このまま気温が下がれば雪になる。そうすれば雪質は一気に改善されること間違いないはずだ。気分はハイに向かっていった。

15時半に雪に変わったので安心して仕事に取り組むことにしたのだが、仕事の合間にライブカメラを覗いてみると、18時を過ぎたころ気温が上昇に転じているのを確認した。とはいえ、春の雪は2度くらいがもっとも降りやすい。こうなったらパウダースノーなど望まない、春特有の水雪でもいい。とにかく積もってくれさえすればいいのだ。

実はこの日、スノーシュー常連のOさんと、スノーシューが縁でOさんと知り合ったこれも常連のKJさん、KTさんの二人合わせてKKコンビと、山王帽子山への冬山登山を約束していた。Oさんの名前は「kyoko」さんだからKKコンビと一緒になるとトリプルK。あるいはちょっと無理があるかもしれないが綺麗、可愛い、健脚で3K(^^)。ともかく、若き女性三人を2千メートル超えの冬山へ誘う魂胆が管理人にあったのだ。

山王帽子山は赤薙山に次いで、日光の2千メートル超えの山では安全で登りやすい。雪が少ない今年であれば安全性はより高まる。
三人ともすでに冬の丸山登山を経験しているから当初は丸山の延長にある赤薙山と決めていた。ところが、14日に降った大雨で赤薙山は稜線上の雪が一夜にして溶けてなくなり、無残にも地肌が剥き出しとなってしまった。雪解け直後の登山道は危険度が増す。であるならば次に安全な山王帽子山を候補とした次第だ。

夜になって気温は下がるどころか上昇の一途だ。ライブカメラはすでに暗くなった駐車場を映すようになり、雨なのか雪なのかそれとも、止んでいるのかがわからない。
気圧は低いままだ。安普請の我がペンションの屋根をうつ雨音が、室内にいても激しく聞こえる。

気温の高さといい気圧の低下といい、雨あしの強さといいこの分だと奥日光も雨かもしれないという不安がつのってきた。
霧降高原のキスゲ平は14日の大雨であっという間に溶けてしまった。奥日光の積雪は霧降よりは多いものの例年に比べると1/3だ。雨だとすればダメージは避けられない。

管理人、雨後の雪というのを経験しているが、雨がしみこんだ雪は夜半から早朝にかけての気温の低下で凍りつき、その上を歩くとバリバリと耳障りな音をたててスノーシューが沈み込む。沈んだスノーシューを引き出すのに今度は凍った雪がじゃまをして、ラッセルとは違った負担が足にかかる。ときにはスノーシューが凍った雪に固定されて顔から固い雪に突っ込むこともある。

フカフカの新雪を蹴散らしながら歩くといった状況とは明らかに違ってなんとも不快である。それをトリプルKに経験してもらうというのも自然の変化を知る要素のひとつなのだが、強いる気持ちにはとてもなれない。

すでに支度を調えて出発を楽しみにしている三人には気の毒だが、明日のツアーは中止にしよう。それがもっとも賢明な選択だ。奥日光の天候を読み取るのに時間がかかってしまい、中止を決定したのはすでに23時を回っていた。
楽しみにしていたツアーが中止になって落胆すると同時に、こんな遅い時間になって中止を決めたことにたいする、三人の戸惑いの表情がうかがえる。

夜が明けると青空が広がっていた。昨日、雨さえ降らなかったら絶好のスノーシュー日和となったはずだ。霧降から見上げる奥日光の空はそのように見えた。
今日はバリバリに凍った雪の上を管理人が自ら歩いて、三人への罪滅ぼし(になるのかこういう場合)としよう。それに月曜日は別のお客さんを“どこかへ”案内しなければならない。その“どこか”はもはや、劣悪ながらわずかに雪の残る、「おとぎの森」しかない。


「おとぎの森」は昨年、管理人が開拓し、Oさんが命名した新コースである。
ミズナラの広大な林を抜けると次にカラマツ林に変わる。葉が落ちたカラマツ林は見通しがよく、開放感に溢れじつに気分が良い。それと一日に数百人ものハイカーが訪れる小田代ケ原や戦場ヶ原と違って、いつ行っても静かだ。
雪が降っている日など、ウラジロモミやコメツガなど常緑樹の葉に雪が積もりとても幻想的な雰囲気に変化する。それが「おとぎの森」の名前の由来。
営業上、秘匿しておく必要があるため地図は掲載しない。

案の定、スタートからバリバリと音を立てながら歩き、おとぎの森コースの折り返し点近くまで来ると、それまで木々の間からのぞいていた日光連山をはっきりとらえる場所がある。
火口をぱっくり開けた男体山、とんがり帽子の大真名子山である。他の場所からの見慣れた山容と異なり、その展望は雄大で息をのむ光景だ。

山王峠に達すると太郎山の登山口がある。山王帽子山は地図には掲載されているが太郎山への通過点として、無雪期は軽んじられている。
女峰山への通過点という意味では赤薙山も同じだ。が、どちらも冬はがらりと変わって、冬山登山入門編として利用できる、貴重な2千メートル峰だ。

ここまで来るとバリバリ感はなくなり、といってフカフカでもなく固く締まった雪だ。登山口から先、スノーシューは必要ない。
だが、傾斜を登山靴のまま登るのは滑って効率が悪いので、ここでチェーンスパイクに換えた。その方が速度も速くなる。

登山道はウラジロモミとコメツガの樹林帯の間をぬうように、ジグザグにある。
今日の積雪は50センチくらいだろうか、積雪が少ないので枝のほとんどは頭上にあるが、雪が深い年だと木々の枝が身体の前に立ちふさがって前進のじゃまをする。昨年はそのため捗らず、時間切れで敗退したほどだ。
それと、雪が深いと目印となるリボンさえ雪に埋もれてしまい、登山道がわからなくなる。
したがって、冒頭に書いたように冬でも安全な山という形容は今年だから当てはまると言っていい。

ようやく樹林帯を抜け出て視界が開けた。
雲ひとつない青空が広がっているが、この画像など自然の瞬間を切り取ったものに過ぎない。
実際にはものすごい風が吹き荒れている。

昨年は確か、このダケカンバを見た覚えがある。この先の樹林帯まで行って時間切れで引き返したのかもしれない。

傾斜が緩くなり山頂に近づいたことを思わせる。
風さえなければここから気持ちに余裕を持って戦場ヶ原を見下ろすことができるのだが。

ふ~、やっと山頂にたどり着けた。風を遮るものがない山頂は厳しいのひと言。
脱いだフリースを再び着込みジャケットのフードを被って風を防ぐ。

気温はマイナス5度なので普通なら寒くはないはずなのだが、とにかく身体が持っていかれるほどの強風に泣く。
バナナの皮をむく手に感覚がない。カメラに三脚をセットするのももどかしく、確認もせずに撮ったのがこれ。
早々に退散することにしたが、もしもトリプルKをこの場に置いたとしたら一体、どうなるのか。管理人でさえ寒さに根を上げたのだから、おそらくもう二度と付き合ってはくれまい。

過酷な山頂から逃れるべく、急いで下山したのはいうまでもない。登山口まで下りてホッとした。手の感覚が戻ってきたのもこのころだ。

山王林道に出てようやく人心地がついた。これで遭難せずに済むw

前日、深夜近くになって中止の判断を下したのだが、結果論になるものの判断は良かったと思う。それだけ過酷な登山であった。
冬でも登りやすい山とはいえ、2千メートルを超える山の怖さをあらためて実感した。、
風速20メートルの風に晒されて疲れが激しい。寒さに慣れているとはいえ、さすがにこの老体には耐えられず、早々に下山したのだが、トリプルKに2千メートル超えの冬山の経験はないからこの風による寒さの中に身を置くことは生命の危険を意味する。今日のツアーを中止にした決断は正しかった、と自分を納得させる。
しかし、あまりのタイミングの悪い決定に、三人には大変な迷惑をかけてしまった。
か弱き乙女三人を独占しようといった、管理人のやましい心が天に知れたのか、その罰をうけた一日であった(泣)。早く帰って熱燗にしようww

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