念願の錫ヶ岳に二歩も三歩も近づき、日帰りが現実味をおびてきた今日の錫ヶ岳下見であった。螢塚山も堪能。

2015年9月14日(月)
丸沼高原スキー場1620M付近~螢塚山麓~大広河原~標高1750Mで折り返し~螢塚山(1884M)~丸沼高原スキー場1620M付近

日光山域に属する2千メートル以上でまだ登っていない山に錫ヶ岳がある。
奥日光に向かって車で中禅寺湖畔を走っていると、わずか数秒だけ白根山が望める地点がある。そして白根山の左に稜線が続き、二等辺三角形のきれいな山が見える。それが錫ヶ岳だ。
憧れる理由は形がいいからだけではない。

標高は2388メートルなので白根山や男体山、女峰山より低いが特筆すべきはそのアプローチの悪さである。管理人のような正攻法を好む(でもないか・笑)スタイルだと17時間くらいかかる。難易度が高すぎるというわけではなく、距離が長いのだ(同じようなものか・笑)。

正攻法でいけば湯元から往復30キロも歩かなくてはならない。2012年8月、錫ヶ岳の下見のために湯元から前白根山、白根隠山を経由して錫ヶ岳の手前3キロの白桧岳まで行ったことがある。
往復24キロ、13時間も歩いて疲労困憊した経験がありこれは手強いぞという感触をつかんで帰ってきた。
白桧岳から錫ヶ岳まであと3キロを時速1.5キロで歩いたとして、往復4時間かかる。それはあまりにも過酷ではないだろうか。でも、挑戦意欲が湧く山であるのは間違いない。
なんとかして成し遂げたい。

必要な情報を入手するのにネット検索を利用するのは当たり前の時代となり、管理人も大いに活用しているがとくに、ガイドブックに載っていないようなマイナーな山や、地理院地図にルートが描かれていない場所に行くには事前の調べが不可欠である。それを可能にしてくれるのがネット上の情報なのだが、目的とする場所があまりにもマイナーであったりすると情報は少なくなる。

日光の最深部、群馬県境に位置する錫ヶ岳などその典型で、距離を短縮するためにとられた手段は藪の中を突き進むことであったりして地図に描かれた尾根伝いに錫ヶ岳まで行ったという情報はお目にかかれない。
それだけ難しいのが錫ヶ岳の正攻法なのであろう。

往復30キロも歩くことなく、藪歩きでもなく、この老ハイカーが正攻法で登る方法はないのか?
錫ヶ岳は挑戦意欲を駆りたててくれる山には違いないが、過度な挑戦意欲はケガの元。山歩き人生の寿命を縮めては本末転倒である。
往復30キロにはいずれ挑戦するとしてその前に、もっと楽な方法はないものかと探していたところ、目から鱗が落ちるほどびっくりする方法が見つかった。
う~ん、このようなルートがあったのか。まったくもって予想もしなかったアプローチである。敬服に値する方法である(地図参照)。

明日からしばらく忙しい日が続くので行くなら今日しかない。今日14日は戦争法案反対のデモがあるので参加しなくては後悔すると思いながら、忙しさのストレスから逃れるためにも山を歩きたい。そんなウジウジした気持ちで出かけた。気持ちが晴れるといいな。

map金精道路を群馬県側に入り、丸沼高原スキー場にもっとも近づいたところが螢塚山の入口。丸沼高原スキー場は白根山の麓までゴンドラで行ける人気のスポットだが、そのずっと日光寄りが螢塚山の入口だ。
そこを起点に螢塚山に向かってゲレンデの中を歩き、登山口に着いたら大広河原と小広河原とを結ぶ沢へ降りる林道を進む。
沢に着いたら次に別の沢に入り、いくつかの堰堤を乗り越えて白錫尾根に乗り、進路を西に変えて錫ヶ岳に到達、というのがネット情報からの推察である。なるほど、そうか。そんな手があったのか。
ただし~、、、地図に道は描かれてなくおまけに沢伝いに歩くルートである、危険はないのか。

これまで管理人は、錫ヶ岳へは奥日光からの尾根伝いのルートしか考えていなかっただけに、このネット情報には目から鱗がボロボロとはげ落ちる思いである。これなら年老いた管理人にもなんとかなりそうだ。情報主には心から感謝する。

で、結論から言ってしまうと今日は3年前と同じように錫ヶ岳の手前、3キロ地点まで行き、その時間を計測してみた。結果はわずか90分、3年前は湯元から歩き始めて片道、6時間もかかったのでこの違いは大きい。まるで夢でも見ているようだ。これで錫ヶ岳が身近になった。

地図を見ると沢は折り返し点から上流に向かってさらに1300メートル続いている。沢には7つの堰堤がかかっている。折り返し点での沢の流れは緩やかだったので錫ヶ岳に近づくにつれてさらに細くなり、いずれ消滅するはずだが、堰堤をすべて乗り越えることができるかどうかは未知である。
沢の状況は尾根と違って刻々と変わる。折り返し点まで林道があったが、途中、先日の豪雨によって土手が大きくえぐられた箇所があった。折り返し点から先がどうなっているかは皆目、見当がつかない。
このルートも正攻法とは言えず危険は未知数だが、湯元からの尾根歩きに比べれば距離はぐっと短くなる分、時間に余裕ができるので落ち着いて行動できるはずだ。
念願の錫ヶ岳日帰りに大きく前進したのは間違いない。

ところで今日のブログのタイトルに「螢塚(けいづか)山」と入れたが、スキー場から錫ヶ岳へ行くには螢塚山登山口を右手に見て、林道を広河原へ向かう。登山口の標高は1830メートルで山頂は1884メートルだからその差はわずか50メートル、これは登っておくべきであろう。そう思って帰りに登ってみた。


DSCF3019丸沼高原スキー場の入口、標高1620メートル。
ゲレンデ内に作業用の道路が敷設されており、道路とゲレンデとを利用してまずは螢塚山へと向かった。

DSCF3022地図によると正面に見える斜面を直登するのが近道のようだが斜度は30度ほどある。距離は短いが長時間かかる典型だ。
ゲレンデ右に見える山の裏に回り込むのがいいようだ。それには作業用道路を右へ進む。

DSCF3027作業道の右(西)側にリフトの発着場が見える。

DSCF3031標高2000メートルの山頂駅に行くゴンドラの下をくぐる。

DSCF3032作業道とわかれ、このゲレンデを登っていく。始めに見たゲレンデよりも傾斜は緩いがけっこう厳しい。

DSCF3038ゲレンデに咲いていたネジリバナ。まっすぐなのもある。

DSCF3045ふ~。
傾斜が緩やかになり螢塚山の入口を示す標識が見えてきた。

DSCF3046螢塚山はここから50メートル登るだけなので帰りに立ち寄ることにして、先を急ぐことに。

DSCF3049ゲレンデ内の作業道はまだ続くがここで分岐を右へ進む。

DSCF3052沢へ降りる作業道。

DSCF3056リフト乗り場だがリフトにワイヤーはなく、廃線になっているようだ。

DSCF3060道は下る一方なので戻る際の苦労が頭をよぎる。

DSCF3064ここで白根山の麓で派生した沢を渡る。地図には流れがあるようになっているが枯れていた。

DSCF3066カニコウモリの群落

DSCF3067白桧岳と錫ヶ岳を結ぶ尾根で通称、白錫尾根から派生する沢の河原に出た。
この河原を右(北西)に進むと先ほど渡った沢と合流する。この沢も枯れていた。
錫ヶ岳へはここを左(南)に進む。

DSCF3070沢は枯れていて河原を歩けるが沢に沿って林道もある。
地図で見るとこの先に7つの砂防堰堤があるようになっている。その建設工事に利用された作業道なのであろう。
林道は途中で崩れていたので河原に降りて歩く。

DSCF3071土手が深くえぐられている。先日の豪雨の影響だろうか。

DSCF3077ここで河原歩きから林道に切り替えて進む。
この辺りまで来ると水音が聞こえてきた。はて、沢は枯れていたのに。

DSCF3079おっ、ケルンがあるぞ。
このルートで錫ヶ岳へ行く人はけっこういるものと見た。
ここまで来ると沢には流れがある。

DSCF3080林道はここでも崩れていて先へ進めなくなってしまった。河原に降りれば進めるがその落差2メートルもある。
次回に備えて河原への降り口を確認し、ここで折り返すことにした。錫ヶ岳まで3キロの地点である。ここまで来れば下見としては十分である。

DSCF3084前方に見える山が錫ヶ岳であろう。
西側の尾根が緩やかなのが特徴である。
中禅寺湖から見るのは錫ヶ岳の東(写真左)側、急な面だ。
空腹を感じたのでコンビニで買った菓子パンを1ヶ半食べて帰途につく。

DSCF3089ここにもシカが生息しているらしく、足跡と糞をあちこちで見る。

DSCF3097来た道と同じ道を辿って螢塚山に向かう途中、巨大な溶岩石を見た。
古賀志山に登り始めてからというもの、このような岩を見るとつい悪戯心が出てしまう(^^)

DSCF3100螢塚山の入口。
時間はたっぷりあるので登ることにした。

DSCF3102真っ赤な実をつけたゴゼンタチバナ。
この花は成熟しないと花芽をつけない。葉が4枚では咲かないが5枚、6枚になると花を咲かす。

DSCF3107進化著しいスマホのGPSアプリ。
Geographicaは国土地理院の地形図を読み込み緯度経度はもちろんのこと、標高や現在地まで表示する。
他のGPSアプリと比べてもっとも優れているのは地図が常に進行方向を向いてくれることだ(紙地図でいう正置)。これは使いやすさの指標にもなる。
山用のGPSではGARMIN社のが広く使われているが機能、精度とも負けていない。

DSCF3109登山口を一歩入るとこれまでのゲレンデ歩きとは大きく変わり、気持ちのいい樹林帯の中を歩く。

DSCF3112山頂近くになると傾斜は急になり、階段が敷設されている。この階段、すべて間伐材あるいは倒木を加工したものだ。

DSCF3116登山口からゆっくり歩いて7分で1884.8メートルの山頂というあっけない一幕であるが、馬鹿にはできない。山頂からの眺めが素晴らしくいいのである。ほぼ360度と言っていいくらいだ。
今日はあいにくガスがかかってすべての山頂は隠れていたが、晴れた日であれば最高だと思う。

DSCF3127三等三角点をもつ立派な山頂なのだ。

DSCF3125西に武尊山と谷川岳があることを示している。

 

DSCF3136反射して見づらいがスマホとGARMIN社のGPSを並べてみると、専用地図を内蔵したGARMIN社のGPSにたいして、見慣れている国土地理院の地図を表示するスマホのGPSの方が見やすい。画面が大きいことも視認性をよくしている。精度もほとんど変わらない。
欠点はバッテリのもちが悪いことだがこれは使い方次第で克服できそうだ。

DSCF3139山頂からの景色を堪能して下山、再びスキー場のゲレンデだ。

DSCF3144来るときとは違うゲレンデを降りることにした。
歩き始めて最初に見た急斜面のゲレンデだ。

DSCF3152下り始めるとすぐ、ヨツバヒヨドリの群落にじゃまされる。粗くなっている部分を探して慎重に下っていく。

DSCF3158長さ450メートル、標高差200メートルの急斜面を下り終えた。登るのは大変だろうな。

DSCF3160あちこち見ながらゆっくり歩いて3時間20分であった。これに錫ヶ岳往復を加えると推定7時間半から9時間といったところだろうか。
湯元からだと16時間は覚悟しなくてはならないことを思うと、錫ヶ岳日帰りは夢ではなくなった。さっそく計画しよう。