古賀志山10回を記念して、ここらでちょっと総括。

地元、日光の山でさえこれほど多く登っていないのにわざわざ宇都宮市まで遠征して古賀志山に登り続けているのには訳があるので、24日に10回目を数えた機会にそのへんのことを記録として残しておきたい。

きっかけ
ケガの後遺症や手術によってほぼ5年もの間、まともに山歩きもできず、心は山に飢えていた。
昨年5月、まだ痛みは残るものの我慢すればなんとか歩けるようになったので山歩きの勘を取り戻すためにも初心に返り、まずは地元の低山歩きから始めた。
日光の低山といえば外山(880M)と鳴虫山(1100M)、丸山(1689M)がその代表である。が、足の動きがよくなってきたころにはときすでに、日光は紅葉の時期を迎え、市内の道路は出かけるのさえ躊躇うほどの渋滞が始まっていた。
地図を眺めては渋滞の影響を受けない山はないかと探していたところ見つかったのが距離はやや離れているが、近隣では唯一の山、それが古賀志山であった。標高は日光のどの山よりも低く583メートル(※)である。低くてもいい、傾斜があって木があって土の上を歩ければそれだけで満足だ。

紅葉見物の車で渋滞する国道を横目に、反対車線を走って約1時間、車の距離計は36キロを示した。これは管理人が住む霧降から湯元へ行くのと同 じだ。だが、紅葉の時期、湯元へ行こうと思ったら平日でも片道3時間はかかるからそれだけで山行に費やす時間が犠牲になる。低山とはいえ、渋滞のない古賀志山を選んだのは正解であったと思う。

※国土地理院の地図では582.6メートルと表記されているが山名板やガイドブックだと582.8メートルになっていて、どちらが正しいのか管理人にはわからない。男体山のように2484メートルを山頂としていたのをそれより高い地点が見つかり、2486メートルに訂正した例があるから同じ理由かもわからない。
当ブログでは使い分けるのも面倒なので583メートルとする。


古賀志山の概要
古賀志山は宇都宮市街から12.5キロ、北西に位置する独立峰で標高は583メートル。峰続きの御嶽IMG_0659山(おんたけさん、560メートル)と赤岩山(535メートル)を含め、3つの山を総称して古賀志山と呼んでいるようだ。
ただし、国土地理院の地形図に御嶽山の表記はなく、山頂のすぐ近くに鳥居の記号が描かれている。
ただし、鳥居は御嶽山とはなんら関係がないらしい→詳しいことはこちらを。
他に地理院地図に表記のある山は鞍掛山(492メートル)と天狗鳥屋(365メートル)だが、山名がついていないピークを数えると10ほどある。
地図にスケールをあてて距離を測定すると、およそ3.5キロ四方の中に古賀志山山域と鞍掛山が含まれ、古賀志山山域だけだと東西に3.5キロ、南北は1キロという狭い範囲にすっぽり収まってしまう。その範囲に10ものピークがあるというのがこの山を象徴している。ピークとピークの間には必ずアップダウンがあるので、ピークが10もあればアップダウンも自ずと多くなる。それがこの山を面白くさせている。

20131124_084227古賀志山への起点となるのは宇都宮市森林公園内の赤川ダムが一般的だ。灌漑用水用の小さな人造湖だがここから古賀志山の全貌が見渡せる。ダムの堰堤に立ち、正面(西)を見るとふたこぶの山が目に入る。左のこぶが古賀志山で右は見晴台と呼ばれている570メートルのピークだ。
古賀志山山頂からは南面の眺めが良く、鹿沼市街や宇都宮市街が見える。見晴台からは北西部に位置する日光連山が一望できる。古賀志山西方の御嶽山からの展望も素晴らしい。

歩いてみると、赤川ダムからの標高差が360メートルしかないだけに誰にでも歩けてしまうという印象。それだけに平日でも登山者は多く、とくに地元の方と見られる年配者が目立つ。あとから聞いてわかったことだが年に300日以上も登っている地元の人がいるそうだ。まさに地元に密着した山である。日光の山では考えられない(紅葉の写真はOさんからいただいた赤川ダムに映る古賀志山)。


古賀志山の情報について
情報を入手するにはネットがもっとも手っ取り早いのは今日、疑う余地がない。
しかし、古賀志山に関しては、国土地理院の地図にルートが1本しか書かれていないので、ネットから得られる情報が活用できない。
なぜなら情報の多くが正規のルートではないいわゆる、バリエーションルートに関する内容だからである。このブログも例外ではないが(^^)

後述するが詳しいことは古賀志山で出会った地元の人に聞く、これがもっとも確実な方法である。


Oさんとの出会い
管理人は本業と併行してアウトドアのガイドをおこなっている。フィールドは霧降高原と奥日光である。年間通しておこなっているがメインは冬のスノーシューツアーだ。
スノーシューツアーのガイドを務めるようになって17年にもなるので、知名度はそれなりに高い。開催日数は1月から3月までの間で約40日と、需要が多い。

IMG_8938忘れもしない2月5日、宇都宮からとても元気のいい女性がスノーシューツアーに参加した。
きっかけは、管理人が初めて訪れた古賀志山の印象をブログ記事にしたのを読み、興味を持ってくれたらしい。
日光駅からフィールドへの車中、話をしていたら古賀志山のことにやたらと詳しい。じつはOさん、その時点で古賀志山を50回も登っている、マニアックな山女子だったのだ。
ツアー中、スノーシューのことよりも古賀志山の話題で盛り上がったのを今でも鮮明に覚えている。
Oさんはこの後もスノーシューツアーに続けて参加、わずか2ヶ月の間に管理人がガイドを務めるスノーシューツアーの全コース踏破という偉業(^^)を成し遂げてしまった。

ツアー中にOさんから聞く古賀志山に関する情報は魅力的なものばかりであった。管理人が初めて訪れたときに見て足がすくんだ岩場など、古賀志山山域の至る所にあるそうだ。
それらの岩の上に登って眺める景色は雄大で日光連山が一望できるなど、Oさんから聞く話は管理人の怖いもの見たさ心理をくすぐるに十分すぎるほどであった。
その上、まるで管理人を挑発するかのように古賀志山の写真を送りつけてくる(^^)に至り、管理人の気持ちはすでにスノーシューにあらず、古賀志山へと飛んでいた。

よしっ、スノーシューツアーが終わる3月の最初の山行は古賀志山にしよう。そしていずれは、足がすくんだあの岩場にチャレンジしよう。そう決心し、それから足繁く通うになったのはOさんの影響によるところが大きい。


古賀志山を目指す人々
最寄り駅から3キロ、最寄りのバス停からも3キロ歩いてようやく登山口に達するという、交通不便な位置にある古賀志山へ行くにはマイカーが必須である。
しかし、首都圏からマイカーで来るにしても標高が低く知名度もない古賀志山は通り過ぎ、より知名度がある日光に行ってしまう人の方が多いはずだ。
古賀志山は特別な目的(※)をもってやって来る少数の人の他は、多くが地元の人に利用されている、地元密着型の山だ。日光では祭事のとき以外、地元の人で占められるという山はない。

20150531_110114管理人が10回登頂したとはいえ、生活の一部として古賀志山に登っている地元の人に比べれば、なにも知らない赤ん坊に等しい。
したがって地元の人には敬意を表し、行き会ったら挨拶をするのはもちろんのこと、今日の目的地を伝えて行き方や危険箇所を教えていただくようにしている。
なにしろ、雨の日を除いてほぼ毎日、登っている人がいるくらいなのだ。熟知している。

管理人が古賀志山を歩くときは大きなザックにヘルメット、足にはスパッツ、手にはコンパスと地図を持つといった重装備なのでその姿が目立つらしく、話が弾んで長い時間、立ち話をすることもある。皆さん、じつに気さくで親切で話し好きだ(写真はOさんからいただいたもので写っているのはOさんが懇意にしている地元の人たち)。

IMG_4238上に書いた特別な目的とは、クライミングである。全体が岩陵で構成されている古賀志山山域は垂直の壁があちこちにある。その壁を使ってフリークライミングを楽しむ愛好家が多い(写真は瀧神社脇の壁)。


古賀志山のルート
国土地理院の地図には正規のルートとして赤川ダムをスタートして赤川ダムに戻ってくる周回ルートと、古賀志山山頂から御嶽山を経由して南を走る古賀志林道に抜ける道しか描かれていない。
ところが、正規のルートを歩いてみると枝分かれした道があちこちにあり、それらの方が圧倒的に多いことがわかる。いわゆるバリエーションルートで、一説によると100以上あると言われている。
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管理人がこれまで歩いた経験でも尾根という尾根すべてがルートになっているし、そこからさらに枝分かれしたルートがあって地図を読むのに苦労する。
どの山にも当てはまることだがルートの多さは道迷いを引き起こすし、岩場は滑落の危険がぐっと高まる。

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左の地図に描かれたラインは管理人が歩いた10回のGPSの記録である。まだ10回しか歩いていないのに正規ルート以外にどれほど多くの道があるか、わかるというものだ。
すべてのルートを歩き尽くすのにいったい、何年かかることやら。ちなみに、管理人はすべてのルートを歩くことを自分に課している。
やや太くなっている線はそこを複数回歩いていることを表している。


ルートの特徴
地形図を眺めると地図に描かれているルートから外れた場所に、岩の記号があちこちに見られる。等高線(等高線の間隔は10メートル)を跨いで岩記号が書かれているのは、それだけ落差のある大きな岩であることを示しているし、岩が数十メートルもの垂直の壁になっているものもある。

IMG_3763正規のルートを歩く限りこれらの岩とは無縁だが、DSCF0248地図にないバリエーションルートを歩く場合、岩を登ったリ下ったりするのは必至と思った方がいい。ロープや鎖が設置してある岩が多いが中にはロープも鎖もなく、岩を前にして躊躇ってしまうほど急峻な岩まであり、それなりの危険を覚悟して歩かなくてはならない。

上の写真は落差5メートルほどだが上部は垂直になっているので両手でロープをしっかり握り、足の置き場を探して登っていく。なお、この岩は簡単な部類に入る。これよりも落差があり急な岩は至る所にある。
下の写真は上から地面までほぼ垂直の難易度の高い壁。鎖を離したら落下すること間違いなしという怖い岩場だ。

古賀志山を広範囲に歩こうとすればこれらの岩場を登ったり降りたりするのは避けられない。滑落事故が多いのも納得できる。


展望
正規のルートを歩いて得られる展望は古賀志山山頂からだと南に広がる鹿沼市街と宇都宮市街、古賀志山山頂と尾根続きの見晴台からは日光連山や高原山、那須の山々である。
2015-06-24 12.10.34古賀志山西方の御嶽山山頂からの眺めも雄大で、日光連山や高原山、那須の山々が見える。これだけ低い山なのに周りに景観を遮るものがなく、その展望の良さが気に入られているのであろう、昼時ともなると平日でも多くの人で賑わう。

それらに加えて、管理人が好んで歩くバリエーションルートからの展望もよく、岩場の恐怖と引き替えに遠くに広がる眺めを楽しんでいる(写真はバリエーションルートからの展望)。


総括
古賀志山は国土地理院の地図に描かれている道以外のルートの方が圧倒的に多いということが、歩いてみて初めてわかった。そしてそのルートを歩いているといきなり大きな岩と出合って面食らう、古賀志山はそんな山である。

3.5キロ四方という狭い範囲なので踏み跡を歩く限り、どこを歩いているのかわからなくなっても致命的なこと、とたえば道迷いから脱出できず山中を何日もさまよったり疲労死したりといったことにはならないと思うが、ルートのあちこちに岩場がありそれらを鎖やロープを伝ってクリアしなければならないため、滑落の危険性は十分すぎるほどある。それがもっとも怖い。
ニュースになるならないは別にして、実際に岩場での滑落事故はかなり多く起こっているようだ。

しかし、地図とコンパスが使える人や岩場を安全に通過できる技術を持つ人であれば、この山は変化に富んでいるし展望も良く、楽しめる。なにしろ、100ものルートがあるのだから、週に一度、一年通ってもまだ未踏破のルートが残るくらいだ。

管理人は2千メートル以上の山も好きだが、地図に道が描かれていない場所も好んでよく歩く。古賀志山は低山とはいえ適度なアップダウンがあるし怖い岩場もある。この道を進むとどこへ行ってしまうのだろうかという不安と期待も抱かせてくれる。展望はいいし、ルートの組合せ次第で距離も10数キロとれる。管理人好みの申し分のない山である。

地元の人は総じて親切である。儀礼的な挨拶から話が進んで、手作りのご馳走をいただいたりすることもある。管理人は古賀志山が地元の人に愛され親しまれている山であることを謙虚に受けとめ、この山そしてこの山を利用する地元の人には敬意を表している。
これまで出会った地元の人にはこの場で感謝申し上げます。年内にあと10回は登るつもりですので、ご指導のほどよろしくお願いいたします。

2015年6月26日(金) 古賀志山10回目の登頂を記念して。

管理人はスノーシューをメインにアウトドアのガイドをしていますが難易度と危険性を踏まえ、古賀志山はガイドの対象から外しています。ご了承ください。