パノラマ風景に圧倒された「西大巓」。管理人、山形県の山へ。

西大巓からの磐梯山

2019年11月7日(木) 晴れ/山頂は強風

昨年7月、安達太良山(福島県)の北、山形県との県境に近い浄土平を起点に、湿原に始まり湿原で終わるという、とても贅沢なトレッキングを楽しんだ。
往路は米沢市(山形県)に属する東大巓(ひがしだいてん)まで行き、そこから南へ下って谷地平湿原を経て浄土平に戻る23キロのロングトレッキングだったが、ルート上にたしか8つと記憶しているが湿原があり、多くの花を見ることができた。
東大巓から先、登山道はまだ続いていたが日帰りだと東大巓までが限界と判断し、機会を改めて中大巓、西大巓と歩いて裏磐梯へ降りたいと思っていた。

今年の夏は悪天続きで再訪の機会がなかなか訪れず、長時間の山行には不向きなこんな時節になってようやく安定した天候(ただし、平地の予報では)が続くようになった。
管理人が経営するペンションは紅葉目当ての宿泊客が絶え、今週が登山に充てるいい機会となった。
あと1週遅くなれば雪の心配をしなくてはならないし、マイナス気温下での車中泊は年老いた身体に堪える。

今週のこの機会を逃すまい。

計画は出発前夜、飲みながら入念におこなった。
しらふだと柔軟かつ大胆な発想ができないから、飲んで頭を柔らかくした状態でおこなうのがいい。
その結果、得られたのが、6日は裏磐梯グランデコスキー場から歩き始めて途中、中大巓辺りで白布温泉(山形県)に降りて旅館または民宿に1泊し次の日、登山道に戻って中大巓から先を歩くというものだ。
それならば東大巓まで行くことができる。

問題は帰路、東大巓から車を置いたグランデコスキー場まで一気に歩き通せるかどうかだ。
昭文社「山と高原地図」によれば、白布温泉から中大巓を経て東大巓まで5時間、東大巓からグランデコスキー場へは同じく5時間かかる。
午後になると気温がぐっと下がるこの時期、冷えた身体は無理が効かなくなる。
計10時間に及ぶ行程をこの時期におこなうのは所詮、無理だと判断した。
帰路にもう1泊する必要性がある。

白布温泉に安価な民宿があることをネットで知った。
6日と7日、2泊すれば余裕がでる。
だが、予約をするのになかなか踏ん切りがつかない。
天気のことが気になって仕方がないのだ。
管理人が参考にしている天気予報、「てんきとくらす」は全国の主要な山の登山指数なるものを発表している。それによると、予定している西大巓、西吾妻山は6日以後、ずっと登山指数「C」、すなわち登山に不向きとなっているからだ。

管理人、基本的に小雨程度でも登山はしない。
雨中の登山は危険が増すし、それよりも記録のためにおこなっている写真撮影が困難になるのが致命的だ。
朝まで待って、朝の天気次第でどうするか決めることにした。
金曜日には自宅に戻って土曜日の仕事に備えなければならない。
猶予は6日と7日の2日だけだ。
そのどちらかあるいは両日が雨だと目的を達することができないが、まぁそれも自然のことゆえ納得せざるを得ない。

以上が前夜、車内でおこなった一人作戦会議であった。
飲んでも飲まなくても思考の浅さに変わりがないことを我ながら感じた(笑)

行程表
デコ平登山口(8:35)~デコ平湿原一周~百貫清水(9:28)~布滝(9:55)~西大巓(12:20)~西吾妻小屋(13:05/13:28)~西大巓(14:00)~グランデコスキー場(15:35)~デコ平湿原(15:48)~デコ平登山口(16:06)
・歩行距離:15.7キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:7時間31分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1399メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

道の駅・裏磐梯11月6日(水)
宿泊地とした道の駅・裏磐梯の朝を雨で迎えた。麓でこれだけの降りなら山中はもっと強い降りになっていることだろう。
登山はしないことにして宿の予約もやめにした。

二日間かけて行くつもりだった東大巓への道は閉ざされたがやむを得ない。
明日、天候が回復したら1日目に予定していた西吾妻小屋まで行って折り返そう。


車の背もたれを倒し、足を投げ出して座っているうちに腰が痛むようになったので読書を切り上げて会津喜多方までドライブしようという気になった。
といってもなんの下調べもせず、カーナビ任せなので町中をウロウロしただけで終わりにして、次は泊まるつもりでいた白布温泉の下見に長い距離を走った。
その後、白布温泉から西吾妻スカイバレーを桧原湖へ向かい途中、レンゲ沼と中瀬沼に立ち寄って散策、そして道の駅・猪苗代を終着とした。
白布温泉への移動中に雨は完全に上がって雲間に青空がのぞくようになった。
明日も「てんくら・C」に変わりないが、雨が降らなければ行動するつもりだ。


デコ平登山口一日待った甲斐があった。
よく晴れた。
昨日予定していた1日目の行程が今日になったことで、2日目の予定はご破算になったが、一日だけでも登山ができることを良しとしよう。

計画段階では朝6時に歩き始めるつもりだったが、車中で朝を迎えるのはこの時期、辛い。
身支度を整えて道の駅を出発したのは7時を回っていた。
福島に入った日(5日)に下見にここまで来たが、徐行を強いられる悪路に時間がかかるのを知り、ならば一層早く出発しなければならなかったのにこんな時間になってしまった。
まっ、今日一日で東大巓を往復することはできないことはわかっているので13時を目処、おおよそ西吾妻小屋あたりで折り返し、ここに戻ってくるつもりだ。

そういえば、なんかおかしいなと思ったら、一昨日はあった仮設トイレが撤去されていることに気づいた。今年の登山シーズンは終わりであることを告げているようだ。


寒さ対策としてタイツを履き、上半身は長袖Tと長袖のジップシャツ、その上にフリースを着込んで歩き始めた。
いつもならザックにポールをくくりつけたまま歩くのだが、今日は2本を手にしている。
初めて歩くルートだし、昭文社「山と高原地図」にはブナの自然林と描かれている。
ブナは秋になると三角錐形の実がなり、いろいろな動物の貴重な餌となる。
クマにとっても越冬するための貴重な食料だ。
もしも出遭ったときの防御のために、いつでも使えるようにポールは手にしている。

カラマツの葉が積もって黄色に染まった道はふかふかして気持ちよく、このままのコンディションが山頂まで続いてほしいと願う。


ここで道は分岐する。
左が進行方向だが湿原を一周してみたいので右に行ってみよう。


湿原内は木道が敷設されて歩きやすいが、木道は部分的に上下に傾斜がつけられていて、それが濡れているのでスリップに気をつけながら慎重に歩いた。


湿原を一周して元の分岐に戻り先へ進む。


ほ~、磐梯山だ。


ドライフラワーと化したヤマハハコ。


これはノリウツギ。
このままの状態で冬を越し、春に新芽を出す。
雪原の上に落ちている枯れた花はたいてい、このノリウツギ。


いや~、すごいなこのブナ。
枝ぶりが立派!
幹の根元は周囲3メートルはある。


昭文社「山と高原地図」にある百貫清水に到着。
地底から緩やかに水が湧き出ている。


水の吹き出し部分は砂地になっていて砂が絶えず舞い上がっている。
ちなみに昭文社「山と高原地図」には水場記号が描かれているが足場が悪いので吹き出し口へは手が届きそうにない。


地面はカラマツの落ち葉からブナとミズナラの落ち葉に変わり、これもまた気持ちよく歩ける。
ブナもミズナラも実はクマの大好物である。
が、今のところその気配は感じられない。
管理人、クマ鈴を持たない。
不用心と言われるかも知れないが、クマ鈴が常時鳴っているとそれで安心してしまい、周囲への注意が疎かになりそうな気がしてならない。
そこで見通しの効かない笹薮や深い樹林帯にさしかかったら、クマ鈴の代わりにザックにくくりつけたホイッスルを吹いてクマに知らしめるようにしている。
が、その効果はあるのかどうか、よくわからない。
そのためにもポールを手にして備えているわけだ。


地図にある「布滝」まで600メートル。
名前から察すると豪快な印象はないが果たしてどんな姿形の滝なんだろう?


ここで今までの歩きやすい道からいきなり急な下りに転じた。
ウンザリするほど長い下りである。
標高差で100メートル下ってようやく布滝、と地図で読める。


下りきったところに布滝はあった。
岩だらけの斜面を流れ落ちる滝はいくつもに分かれ、数本の沢が並行して流れているように見える。


布滝から西大巓に向かうにはここで進路を北東に変える必要があるが、落ち葉が堆積したこの道が見つからなかった。
ロープがかかっていることでこれがその道であることを知る。


そしてこの道は30度もある急斜面で、しばらく格闘が続いた。


念のため進んでいる方角を確認。


東へ向かっているようなので西大巓への道で間違いないらしい。


ゴゼンタチバナの群落。


布滝までの明瞭な道と違って不明瞭な心細い道を進む。


歩けるような部分はこれしかないからこれで正しいのであろう、きっと。


小さな沢を渡る。


下草を踏みつけながらどんどん進んで行く。


苔むした岩を縫うようにして進む。
傾斜は急だ。


倒木のある不明瞭な道を進む。
早く抜け出したいものだ。


アラレようやく道らしい道を歩けるようになったと思いきや、いつ降ったものなのかザラメ状の雪が積っている。
手に取ると雪ではなく「あられ」であった。


コメツガに溜まったあられが凍りついたらしい。


西大巓前方が開けてこのルートで初めて、視界が開けた。
どうやら西大巓に達したらしい。


西大巓三角点が見える。
西大巓に間違いない。
苦節3時間50分、1982メートルの西大巓にたどり着いた。
スタート地点の標高が1270メートルなので710メートルも上がったことになる。


展望360度展望360度の素晴らしい眺め!!
南に磐梯山(ズームで)。


安達太良山やや東に安達太良山(同)


西吾妻山のっぺりした丘陵は百名山の西吾妻山。


さて、これから西吾妻山の手前にある西吾妻小屋まで足を伸ばすことにしよう。
ここから見ると登山道は尾根の南の斜面につけられていて、一旦下って登り返すようだ。


登り返し鞍部まで降りてこれから登り返し。


湿原登りきるとそこには湿原が広がっていた。
この時期、当然ながら花はなにもない。


西吾妻小屋赤いかまぼこ状の屋根が見えた。
あれが避難小屋でしょう。
それにしてもいい場所にあるものだ。


西吾妻小屋今日はここを目標にしてきた。
この先、10分で西吾妻山山頂だが、木立の中の山頂で展望はないらしいのでパスすることにした。


西吾妻小屋小屋の清掃に使うのか、建物裏に雨水を溜めたのであろう水が入ったバケツがあった。
厚さ1センチほどの氷が張っていた。


西吾妻小屋入り口を入るとすぐ左にトイレがある。
男女別に個室になっていて扉も閉まる。
扉を開けると臭気を感じるが閉めれば大丈夫だった。


西吾妻小屋居間はコンパネ敷になっていて古いながらも手入れが行き届いている。


西吾妻小屋2階の居間。
積雪時は1階入口の扉が雪で閉ざされてしまうらしく、2階にも出入り口があった。


西吾妻小屋ほう、この小屋は山形県に位置するんだねぇ。
昨年、同じ稜線を東大巓まで歩いたときもそこが山形県であることを示す道標をいくつか見た。
福島県の山を登りに来たつもりがいつの間にか越境して山形県側を歩いていることに新鮮な感じをうけたものだ。


居間に腰を掛けて昼メシとし、帰りを急ぐことにした。
日没が早いので16時には駐車場に着きたい。


磐梯山西大巓と西吾妻小屋を結ぶルートのどこからでも磐梯山がよく見えた。
安達太良山とともに福島県のシンボルとも言える磐梯山。実にカッコいい。
左奥に猪苗代湖、左手前に小野川湖が見える。


これから一旦、西大巓まで戻り、それから進路を南に転じてグランデコスキー場に向かう。


安達太良山安達太良山。


飯豊連峰さっきは気が付かなかったが飯豊連峰まで見える。
もうすっかり雪化粧してる。


石ゴロの道西大巓まで戻って次にグランデコスキー場に向かう。
そうすることで往復、別の道を歩ける。
ところがだね、始めから終わりまで大小の石がゴロゴロした道でとても歩きにくいのだ。
往きはフカフカの道だったり沢筋だったり道なき道だったりと変化に富んでいたが、この道ときたら画像の状態がスキー場まで続いた。


グランデコスキー場展望が開けるとそこはスキー場の最上部だった。


ゴンドラ終着点ゴンドラ終着点にあるレストハウス。
駐車場はこの前の道を西へ進み、デコ平湿原を抜けたところにある。


間もなくデコ平湿原


デコ平湿原本日2度目のデコ平湿原を歩く。


陽の傾いたカラマツ林陽の傾いたカラマツ林の中を歩いて、、、


無事に駐車場に到着無事に駐車場に到着。
ほぼ予定通りの時間だった。


ラビスパ裏磐梯自宅へ戻るには遅い時間なので今夜も車中泊して明日、のんびり帰ることにした。
車中泊の前に温泉で疲れを癒やすことにした。
桧原湖畔の道の駅・裏磐梯から喜多方方面に約3キロ行ったところにあり、雄国山の登山道にもなっている場所だ。
今年6月にも利用したが熱からずぬるからず、疲れを取るのにぴったりな湯温である。
大きな施設なのに安価(550円)で利用できるのは魅力だが、入浴客が少ないので将来が心配(と余計なことを・笑)


当初の予定では1日目に西吾妻小屋の先、中大巓まで行って白布温泉に下山して1泊し、2日目は中大巓から東大巓をピストンして駐車場に戻る(あるいは白布温泉にもう1泊)という計画だった。
それが1日目が雨だったため西吾妻小屋と東大巓の間が未踏になったが、これは来年の課題として取り組むことにした。


東側は浄土平をスタート(またはゴール)地点、西側はグランデコスキー場をゴール(またはスタート)地点にして、一度の山行(ただし途中、避難小屋泊)で歩きたいと思っているが、最大の問題は下山後に東側と西側を結ぶ交通手段が見当たらないことである。
そこで日帰りを繰り返して東西を1本の軌跡で結ぶ方法を採らざるを得ないわけで、効率は悪い。
とはいえ、30キロに及ぶ縦走を可能ならしめるのは大きな魅力であり体力と気力が衰えないうちにやり遂げたい。
と気負ってはいるものの最近、酒量は増えてるわ、建物内の段差で躓くわ、筋肉痛は長引くわ、といいことのない日々が日常になっている。
来年の課題にするなどとブログで公言して大丈夫なんだろうかと心配になっている管理人なのである。


オマケの画像(11月8日・金)
土曜日の仕事の備えがあるため翌日は自宅への移動日に充てた。
裏磐梯から日光へは5時間ほどかかるが、時間が中途半端なので観光を済ませて帰ることにした。
裏磐梯の近隣の観光地としてラーメン店と蔵が多いことで有名な喜多方が意外に近い。
日光に移住して初めて迎えた冬、家族旅行で喜多方に行って朝ラー(早朝からやっているラーメン店で)を食べ、蔵の街を見学したことがあった。
どこにどんな店があったかなど、25年も前の事ゆえ忘れてしまったが、裏磐梯から近いことがわかったので訪れることにした。

蔵の街

「おたづき(小田付)蔵通り」はその名の通り旧い蔵が多く存在し、現在でも店舗として活用されている。
街はとても静かだ。


旧甲斐家蔵住宅

「ふれあい通り」にある旧甲斐家蔵住宅。
昔は味噌と醤油の製造販売所の建物だったらしい。現在、喜多方市の管理になっていて見学できる。

坂内食堂

ここだ、25年前にラーメンを食べた店は!
「坂内食堂」という老舗のラーメン店。
朝7時から食べられる。