久々の日光鳴虫山。今日は岩屋観音から鳴虫山を経由して猪像のつもりだったが、あれれっなんか変だぞ。

2015年1月21日(水)

次のスノーシューツアーまで間が空いてしまったので体力維持のために久しぶりに鳴虫山に登ってみた。
ルートは恒例となった(^^)、地図にないいわゆるバリエーションルートだ。
鳴虫山に最後に登ったのは昨年の12月3日で、そのときは餅洗滝から合峰へ出て、山頂を経て岩屋観音回りとしたが、今回は先に岩屋観音に立ち寄って鳴虫山山頂に出、合峰から松立山を経由して最後に愛宕の猪像を見て下山する、そんな考えでいた。

鳴虫山は1100メートルと、日光の山では低山中の低山であるが5月になると山全体がツツジに包まれてその時期こそもっとも華やかでなおかつ、ハイカーで賑わう。それが日光駅から近いお手頃な山というガイドブックなどでの評価になっている。

管理人は人出を避けるためにツツジ咲く時期にこの山に登ることはしないが、登山口からの標高差が500メートル以上ある上に、バリエーションルートが充実(?)しているので時期をずらして楽しんでいる。
バリエーションルートは地図にないだけに荒れていたりアップダウンが厳しかったり、道迷いの危険があったりで緊張が絶えない。それだけに面白くもあったりする。
今回は積雪も頭に入れておかなくてはならないので重装備で臨んだ。前夜は晩酌を控え目にして装備の点検とパッキングに2時間もかけた。


IMG_8408御幸町の1本裏の通りにある登山口の標識を右に見て進み、志度淵川に沿って西へ進んだ工事中の堰堤を登山口とする。
ちなみに一般ルートの登山口は道標にしたがって志度淵川を渡ったところにある。

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工事中の巨大な堰堤。
目指すは中央に見える小山。あの小山が鳴虫山に通じているなんてそれまで知らなかった。
さて、尾根に取りつくことにしよう。

IMG_8327雪は当然ながら覚悟しなくてはならないのでアイゼンとピッケルを持参。
滅多に使うことのない65Lの大型ザックにあれもこれもと詰め込んだおかげで、総重量は15キロにもなり歩行にも影響が出るがやむを得ない。
亀歩きを自認している管理人の歩行速度はこれでさらに遅くなることでしょう。

IMG_8330志度淵川から見える小山に取りついたら初めに杉林の尾根を登っていく。
地図にないから利用者もなく、道は荒れている。
風で折れたと見られる枝が無数に落ちていてそれが足に引っかかり、とても歩きにくい。

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ようやくまともな尾根道となった。
鳴虫山は市街地に近いすなわち、植林や伐採の好適地でもあり、杉や檜の林が多い。

人工林の尾根には部分的にこのような整備された作業用の道が見られる。が、この道は地図には描かれていない。

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日光連山が一望できる景勝地に出た。
鳴虫山全域で眺めのいい場所は少なく、ここなど麓から近いし、いい方でしょう。

IMG_8343再びこんな道に出たが藪ではない。
目的地に達するためにもこのくらいのことは我慢。

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最初の目的地である岩屋観音への分岐尾根に出た。この尾根は中ソネというらしい。
ここで、このルート初めての修験道の跡が見られる。写真中央に見える石柱がそれである。
それにしても赤と黄色のプレートがじゃまだなぁ。この歴史ある石柱のすぐ脇に立てることもないのに。

IMG_8347石柱には正面から見ると「左かんおん堂 女講中」と彫られている。
というのが、本からの受け売りであるがその本は池田正夫著「全踏査 日光修験・三峰五禅頂の道」で、今回の管理人の目的は修験道を歩くことにあったのです。

IMG_8348石柱の右側には「右なきむし山」とある。とこれも本からの知識。現在は地図にもある鳴虫山。
ふ~む、鳴虫山は修行のために300年近くも前から登られていたんですね。

で、初めに石柱が示す左方向の「かんおん堂」へ行く。岩屋観音のことである。

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左へ進むとこんもりとした尾根の張り出しがあってその尾根の下に大きな洞窟がある。上の写真の石柱を左に折れて50メートル先を右、大きな木を見つけてください。その下です。
地面から一段下がっているのでわかりにくいけれど地図読みの練習と思って丹念に探せば見つかる。

IMG_8357自然のものなのか誰かが彫ったものなのか、人が立てるほどの高さの洞窟になっていて観音様が祀られている。
信心深くない管理人でも洞窟内に入る際には思わず両手を合わせてしまうほど厳かである。

洞窟の中にある三体の石柱のひとつは「承應四乙未年二月十八日」と彫られている(本によると)。江戸末期だそうだ。

IMG_8359岩屋観音をあとに中ソネを鳴虫山へと急ぐ。なにしろここでまだ全行程の1/6なのだ。
積雪が見られるが3センチほどなので、いまのところは靴のままで歩ける。

IMG_8360ノーマルルートと交わるP1058を目指すが急登に次ぐ急登。危険箇所こそないが厳しい。

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滑るのでここでアイゼンを着けることにした。
ただし、積雪が中途半端なのでアイゼンの爪が地面に直接あたって歩きにくい。木の根にも引っかかることがあり、そうなると前につんのめってしまうので注意が必要。
そのため、ここから先5・6回、脱着を繰り返した。
まだ雪が浅いのでアイゼンよりもチェーンスパイクのほうがよかったかなぁ。

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ここがP1058。
ロープの向こう側が御幸町登山口と山頂を結ぶノーマルルート。
このロープはノーマルルートからこちらへ入り込まないようにという、立ち入り防止のためのロープである。バリエーションルートはここで一旦、終わりとなる。

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P1058から鳴虫山へは20分で着いた。山頂には誰もいないが、ツツジの季節になると多くのハイカーで賑わい山頂は人、人、人で花が咲いたようになる。
この日は空は鉛色、木々は緑がなく地面は白で荒涼としている。

IMG_8368山頂から北の眺め。
日光連山が見えているものの雲行きが怪しい。雨雲とも雪雲ともつかず、これからの天気が心配になってきた。
雨さえ降らなければありがたい。

IMG_8371誰もいない山頂で独り、マルタイの棒ラーメンを作る。
昔に比べて味が格段によくなった大手メーカーの袋麺におされてワンランク落ちるけれど、高校生の頃、試験勉強の合間に深夜独りで食べた懐かしい時代を思い出します(^^)
マルタイは売れ行き不振で経営危機になっているので、みなさん積極的に食べてくださいね。

難点といえば袋に棒状の麺が2束、2人前入っているので未使用の麺は持ち帰らないといけない(どうでもいいことですが)。

IMG_8372完成に近づいてきた。マルタイの棒ラーメンは腰があるのだがやや粘り気があるため水が規定量だと雑炊みたいになってしまうので、水を少し多めに入れてあげるといいみたいだ。
なお、具は別に買った「味噌汁の具」という乾燥野菜を使っています。

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身体が温まったとはいえ午後になって急激に気温が下がり、マイナス5度。
身体が冷えないうちに早々に先に進むことにして、合峰に到着。
P1058と同じようにロープがかかっていてそこからバリエーションルートに入る。
ロープから先はご自分の裁量に応じてくださいね。

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アップダウンを繰り返しながら化星宿へと向かう。
目印のリボンはあるが傾斜が急なので気をつけましょう。

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13:47
今回ふたつ目の目的地である化星宿に到着。この名のいわれや読み方は本にも書かれていないが、ここに小さな宿があって修験者が真冬に26日間も滞留したそうだ(きせいしゅく、かせいしゅく、けしょうしゅくなどと読むのだろうか)。
写真の祠は金剛堂で享保十四巳酉天十月吉日と彫られているらしい。ちなみに享保十四年とは1729年だから286年ものときを刻んでいるわけだ。

IMG_8389金剛堂の東、一段下がったところに平らな部分があって、当時はここに修験のための宿があったそうで、それが化星宿。ちなみにここでの修行のことを冬峯(とうぶ)とよぶ。
修験者が人力で担ぎ上げた木材で建てた宿であろうことが想像できるが、暖といえばたき火しかない時代だから寒さは相当なものだったでしょう。
その当時の山歩きの装備はどのようなものであったのか興味深くもありまた、当時の修行に思いをはせたい。

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化星宿の先、銭沢不動尊への分岐を左に見ながら進むとやせ尾根になり、滑落の恐怖をいだく。
アイゼンの効果が期待できるところなのだがそれよりも、アイゼンを着けていると左右が干渉した際に爪どうしが引っかかって足がもつれ転倒、という大変なことになる。その方が怖い。

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なんとかやせ尾根を抜けて松立山。
下りは急である。立木につかまって慎重に、ジグザグに下りる。
修験道は下りきったらそのまま尾根を進むようになっているが、そのルートだと金谷ホテルの敷地内に入ってしまうらしいので、鞍部で東に90度、杉林に向けて折れる。

IMG_8399うっそうとした杉林(檜だったかな)を抜けると緩やかな歩きやすい尾根となる。

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やがて送電線の鉄塔に出るが、ここからの眺めがまたすばらしい。市街地が一望できる。

IMG_8406ここまで来れば今回の最後の目的地、愛宕の猪像はもうすぐだ。安心して緊張も解ける。さあ、家に帰って風呂に入り、一杯やろう!

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尾根をかなり下ったはずなのに猪像は見つからない。深い杉林の中にあるはずなのに。と、探し回っているうちにな~んと、こんな場所に出てしまった。
朝、登山口とした志度淵川堰堤が見えるし人家もある。
ゴール目前だと思って気が緩んだのか、尾根を間違えてしまったようだ。
元に戻るのも面倒なので猪像は諦めてこのまま下りて終わることにした。
鳴虫山は道迷いをしやすい山なのである。

150121map前回、昨年の11月13日は猪像から松立山、化星宿、合峰経由で鳴虫山だったが今回はその逆ルートの岩屋観音経由で鳴虫山に登り、合峰からバリエーションルートで猪像へ向かう予定であった。
ところが、猪像を目の前にして別の尾根に入ってしまうというミスをやってしまった(赤い線の上部)。
前回、猪像から登ったときはそんな尾根には気がつかなかったのだが、、、まっ、愛嬌だと思ってください。
赤い線が歩いた軌跡。右回りに見てください。

日光修験出典
随想社・池田正夫著「全踏査・三峯五禅頂の道」

日光山域は今から1200年以上も前、勝道上人というえらい坊さんが開いたといわれています。
その後、弟子たちに受け継がれて室町時代には日光修験の全盛期を迎え、冬の修験(冬峯=とうぶ)、春の修験(華供峯=けくぶ)、夏の修験(夏峯=かぶ)そして、秋の修験(五禅頂=ごぜんじょう)と、四季を通して厳しい修験がおこなわれたそうです。

この本は全盛期の修験の跡を著者である池田正夫氏が忠実に歩き記録した貴重な本であり、参考にさせてもらっています。

データ
天 候:曇り(予報は晴れ)
距 離:約8.7キロ(6時間半)
時 間:09:33志度淵川堰堤スタート→10:49岩屋観音→11:53P1058→12:15鳴虫山(昼食)→13:10合峰→13:47化星宿→14:16銭沢不動尊分岐→14:50松立山→15:52志度淵川堰堤
コース:昨年の秋以後、日光の修験道に興味を持ち鳴虫山に集中的に登っています。使う道は地図にない、いわゆるバリエーションルートです。バリエーションとよばれるだけに一般ルートに比べて荒れていたり急なアップダウンがあって、進むのを躊躇ったりしますが意外な場所ですばらしい展望に出合ったり、歴史を刻んだ石の祠や像と出合うといった新鮮さがあります。
冬に限らず他にハイカーはなくトラブルがあっても救助を要請する術がありません。歩くには常に最悪の場合を想定した装備が必要です。
また、道迷い常習者の管理人にはえらそうなことは言えませんが、地形図とコンパスが使えることに加えて、十分な脚力が求められるルートです。どうかお気をつけて。