白根山を目指すも吹雪。遭難の予感がして弥陀ヶ池で折りかえす。

2018年12月18日(火) 登山口は微風、零度。弥陀ヶ池は吹雪、マイナス8度

今年も冬の寒さにはだいぶ慣れたとはいえ、まだ山での寒さは経験していない。
自宅は霧降高原の麓、標高820メートルにあるからそれなりに寒く、この季節の朝晩の気温はマイナス4度くらい(でも数年前よりも高い)。
山だと標高に比例して気温も下がるし風が強いから、人が住むエリアに比べると桁違いに寒い。
管理人はマイナス17度を2回、マイナス15度を1回、経験している。いずれも2月の刈込湖でである。寒いという感覚すらなくなるほどの厳しさである。
保温性に優れた冬用の手袋をしていても手の感覚がなくなるし顔が硬直して上手く喋ることができない。鼻水は流れ落ちる寸前に凍ってパラパラと落下する。まぶたが重いなと思ったらそれは涙が凍っていたのだ。それでも雪の上でお客さんと食事をするのだが、はたしてお客さんはどんな気持ちで管理人に付き合ってくれているのだろう?

1シーズンに30日ほど、お客さん相手にスノーシューツアーをしているから、回数を重ねるうちに寒さに慣れる。辛いのはシーズン始めである。
ツアー(スノーシューの)をスタートしたもののガイドたる管理人が寒さに震えていたのではお客さんの手前、みっともない。
そのためにも、事前に耐寒訓練をかさねてツアーに備えるのである。

今年も間もなく終わろうとしている。
年が明けるとスノーシューツアーがスタートする(だからこうして雪を待ち望んでいるわけだが)。
その前に山の寒さに慣れておきたい。
第1弾として白根山を選んだ。
登山ルートのスタンダード、菅沼登山口へのアクセスが今月25日に断たれるため、その前に登っておこうと思う。

行程表(計画)
菅沼登山口(8:00)~弥陀が池(10:10)~山頂(11:15/12:00)~五色沼(12:55)~弥陀が池(13:10)~菅沼登山口(14:40)

行程表(実際)
菅沼登山口(8:11)~弥陀が池(10:15/10:30)~菅沼登山口(11:53)
・歩行距離:7.2キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:3時間42分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:705メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

「晴れのち曇り」という天気予報を信じて日の出に期待した。
いろは坂の上り、明智平ロープウエイ駅のちょっと先にいいポイントがある。
6時半に着いたので車内で待機すること20分。東(当たり前ですが)の空が朱色に染まってきた。間もなく陽が昇る。


出た~(^^;)
今日はいいことありそう。
写真を数十枚撮った後、立ち去った。寒かった。


いろは坂を上りきると国道は中禅寺湖畔に出る。
二荒山神社の大鳥居をくぐると「社山=しゃざん」のビューポイントがある。
日の出からまだ15分しか経っていないがまもなく朝日に染まるはず。


次にバス停の「赤沼」で停まって戦場ヶ原の積雪を確認。
雪はまったくない。
これはここ数年の傾向で、週間予報を見ても年内の積雪は見込めそうにない。


戦場ヶ原へ行く遊歩道はうっすらと積雪があるが、これではスノーシューは使えない。


湯元温泉への入口。
金精道路(分岐の右)は間もなく冬期通行止めになる。
生活道路ではないのと交通量が少ないからというのが理由だと思う。
今年は25日(火)に決まっている。
管理人、今週末の3連休は出かけることができないので、この先へ行けるのは今日が最後になる。
余談だがいつも思うのは、金精道路が一年を通して通行できれば冬の行動範囲はもっと広がるのになぁ、ということ。


金精トンネルの手前まで来ると雪がちらついていた。戦場ヶ原に比べると雪も多い。
なにしろトンネルの中が群馬県との境だからね。


金精山トンネルを抜けて群馬県に入ると景色は一変する。
日本海側の気象の影響を受ける群馬県山沿いは羨ましいほど雪に恵まれている。
ただし、日本海側の気象の影響は県境までで、栃木県には雪はやってこない。2千メートル級の山が連なる県境を大雪をもたらす低気圧は越えることができないのだ。
1シーズンに数回、日光連山を覆うような大型の低気圧がやってきて栃木県側に雪を降らせるが、その回数は年々少なくなっているように思える。


あちこち寄り道したので菅沼に到着したのは8時を回ってしまった。
天気は晴れどころか曇天。
昨夜チェックした天気予報「てんきとくらす」によると白根山は曇りで標高2千メートル付近の風速の予測が13メートルとなっていた。駐車場に風はないが小雪が舞い、気温は零度だった。
※H/P→行楽地の天気→高原・山→エリア選択→山名で行きたい山の天気がわかる。


雪は5センチほどだがスノーシューが使える積雪ではないしアイスバーンになっているわけではないのでアイゼンはいらない。チェーンスパイクを着けて歩くことにした。
標高が上がり、チェーンスパイクだと滑るようならアイゼンに履き替えよう。


駐車場のすぐ先が実質的な登山道になる。
これから弥陀ヶ池まで展望のない樹林帯が続く。


標高1800メートルを超えるとさすがに雪が多い。
とはいえ、降ったばかりの雪なのでコース上の岩や段差を隠すには至らず、歩きにくい。


標高1950メートル付近に差しかかると南に深い沢が見える。
地理院地図に岩記号が続いている場所である。
ずいぶん前に知人から、弥陀ヶ池への近道だと聞いて残雪時にこの沢を上がっていったことがある。たしかに近道(距離の上では)ではあったがとても怖い思いをした。深いギャップこそないが傾斜は急で、一歩一歩キックしながら足場を作り、ピッケルにすがりながらでないと登れなかった。


標高は2千メートルを超えた。
雪の量が格段に増えた。
県境からわずか1キロしか離れていないのに群馬県には雪がたっぷりあって羨ましい。
地形の違いといえるのだが管理人がスノーシューツアーを始めた20年前はそんなことはなかった。12月の戦場ヶ原は一面の雪原というのも珍しくなかった。


弥陀ヶ池まで900メートルの道標。


山での900メートルというのは長い。
時速2キロの計算で弥陀ヶ池まで30分弱。
時速2キロといえば犬の散歩くらいのブラブラ歩きである。しかし山ではそれが普通で、傾斜がちょっときつければ時速1キロ、急傾斜だと時速0.5キロというのが管理人の経験知である。


弥陀ヶ池に着いた。
すでに凍っているのか池の上には雪が載り雪原と化している。
白根山はこの正面に構えているが霞んでぼんやりしている。
しきりと雪が降っているのであろう。


岸辺の木道を渡ると五色沼を経由して白根山に行くルート(左=東)と、ここから白根山に直登するルートに分岐する。距離は直登の方が短いのでいつもそうしている。
柵に沿って進むにつれ、ここは吹き溜まりなのか雪が深く、足を取られるようになった。それに吹雪いている。
山頂まであと1.1キロにすぎないがこんな具合だと時速0.5キロ、2時間はかかりそうだ。積雪と風の具合ではもっとかかるかもわからない。
12時15分に登頂できたとして、下山ルートの五色沼へは15時少し前。弥陀ヶ池から先で日没になり菅沼着は17時になる。
暗闇の中を歩くのは慣れているが、それよりも体力が保つかどうかを心配した。
ここが限界だと思う。引き返そう。


駐車場が見えてきた。
ここまで同じ道を戻るのは単調だが怪我をしないように注意して下山したのはいうまでもない。


五色沼避難小屋で食べるつもりだったカップ麺は車内でということになった。
山で食べるカップ麺は美味しく感じるが車内だと味気ない。


金精道路が冬期閉鎖になる前の最後の休日である22日(土)、23日(日・祝)、24日(振休)は白根山を目指す登山者できっと賑わうことでしょう。
それまでに雪はさらに深くなりますが大勢の人が歩くことで、管理人が折りかえした弥陀ヶ池から中腹まで踏みしめられて歩きやすくなります。
ただし、山頂直下の岩場は岩に張り付いた雪が凍って滑ります。
どうか気をつけてお楽しみください。