初歩きは吹雪の赤薙山あきらめ丸山へ。が、丸山でも吹雪に泣いた。

2018年1月3日(水)

ほぼ2ヶ月ぶりの山歩きとなった。
とはいえ、これまでの延長の夏山歩きではなく、この時期であれば雪山ということになる。
そして標高2千メートルを超える山が多い日光でこの時期に登れる山は限られる。

我が母なる山、女峰山に最後に登ったのは9月末、紅葉の時期だった。2017年は4回登り、5回目を12月初めあたりに計画していたのだが11月に建物改装という予定が入ってしまい、業者との打ち合わせや工事の立ち会いが毎日のようにあってとうとう年末まで遠出ができなくなった。

建物改装、具体的には老朽化した浴室の改装なのだが新築とは違って設計図も工程表もなく職人の手作業になるため、正確な納期は未定。なにも問題がなければ年内には完了するであろうという実に大ざっぱな工程である。

山には行きたし現場は気になるしという悶々とした日々を送りながら、ついに完成の目処がついた。引き渡しは年も押し迫った12月30日と決まった。ほっと胸をなで下ろしたのは言うまでもない。あぁ、これで自由の身になれる、と(画像は改装が終わった浴室。まったく別の浴室に生まれ変わった)。改装が終わった浴室。まったく別の浴室となった。


おりしもこの冬の降雪は順調である。
昨年、一昨年と雪のない年末年始だったがペンションから眺める日光連山、特に女峰山と赤薙山は銀色に輝いている。年が明けたら雪の上を歩いてみたい、そう思っていたところ昨年3月にスノーシューツアーに参加してくれたFさんから、山に登りたいというリクエストが届いた。
Fさん、健脚である。ハーフからフルマラソンまでこなす女性アスリートであることを昨年、知った。そんなFさんにお薦めの山は赤薙山(2010m)である。
ちなみにFさんは美大を出て働く傍ら独学で経理を勉強し現在、都内の会計事務所で働く税理士さんなのである。昨年、初めて会ったときはその経歴を聞いて驚いたものだ。
秀才?
いや、話をしていてわかるのはとても真面目だし気遣いのできる女性だということ。目標に向かって着実に歩む大変な努力家に見えた。好感がもてる。

さて、赤薙山は冬でも比較的安全に登れる2千メートル峰として、管理人はよく登っている。雪庇ができるヤセ尾根があるが雪庇から距離を測って歩けば問題ない。
問題があるとすればこの雪だ。まだぜんぜん締まっていないのだ。ツボ足ではもちろんのこと、スノーシューでさえラッセルを強いられそうだ。
まっ、途中まで行って無理そうならすぐ脇の丸山登山という手もあるのでFさんには満足していただけるだろう。


さあこれから赤薙山へ。赤薙山と女峰山の登山口にあたる天空回廊はご覧の通り、さらさらの新雪にすっぽり覆われている。
ここの標高は1350メートルで戦場ヶ原とほぼ同じ。女峰山とは稜線続きなので気象の影響を強くうける。以前ここがパウダースノーで人気のスキーだったことが今日の雪質でよくわかる。


厚い雪で段差が隠れ斜面と化した天空回廊。段差が見えないほどたっぷり積もり、斜面と化した天空回廊。
Fさんも管理人も登山靴であることはもちろんだが脚力をロスしないよう、靴にチェーンスパイクを装着している。それに標高の上昇で積雪量は増すだろうからとスノーシューをザックにくくりつけている。


圧雪された上に30センチの新雪。天空回廊の中段、700段目から先はスキー場でいえば斜度約25度の上級者コースである。
積雪量を計った上で可能であればスノーシューに履き替えてゲレンデを歩く方が快適だし安全である。
手袋をはめた手で雪を掘ると30センチの新雪があり、その下は固く圧雪された雪の層になっていた。ここまで積もればスノーシューで歩いても雪の下に埋もれている植物を痛めることはない。


天候は荒れ模様。
薄日が差したと思うとすぐ雪がちらつき始め、強風が吹くといった繰り返しである。


キスゲ平上部だいぶ標高を稼いだ。
このあたりでおおよそ1550メートル。
塩谷や塩原の山並み、月山とか高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)が視界に入ってきた。


北東に高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)おぁ、青空だ。
予報では曇りのち晴れとなっていたのでこれから天気は急速に回復しそうな予感がする。


気温が低いためか天空回廊の終段に差しかかってようやく身体が温まったというFさん。体脂肪をたっぷり蓄え歩くとすぐに熱くなる管理人と比べて持久力系のFさんはエンジンの掛かりが遅いという。


小丸山から見る赤薙山は吹雪階段が終わってシカ柵の外へ出たところが標高1601メートルの小丸山。
正面に見える尾根を上がっていくと最初のピークが赤薙山、そしてその5つ先のピークが女峰山、右へ分岐すると丸山である。
ここから見る赤薙山は薄ぼんやりと霞んでいる。雪が舞っているのだ。それだけではない。吹雪いているであろうことがここに吹きつける強い風からわかる。
時刻は現在9時52分。今日のコンディションだとここから2時間半はかかるだろうから体力が奪われること必至である。
持久力に長けるFさんは大丈夫だとしてもこの2ヶ月もの間、山歩きはおろかウォーキングさえしていない管理人に大いに不安がある。端的に言えばFさんをガイドして無事に行って帰ってこれる自信がない。
Fさん:「もしもし、警察ですか? 私を連れてきたガイドが疲労で動けなくなってしまいました。私は大丈夫なんですがガイドがダメそうなので助けに来てください」、などという事態になりかねない。
Fさんは育ちの良さなのであろう、とても心が優しいし気遣いのできる女性である。
管理人の心中を察して自ら目的地の変更を申し出てくれた。「赤薙山は吹雪いていて私には無理そう。丸山でも十分、満足です」、と。


丸山をバックに吹雪の赤薙山をあきらめ、小丸山から近い丸山へと目的地を変更することにした。山頂はなんとなく青空っぽい。が、雲も厚い。どうなるかは行ってみないとわからないようだ。


丸山山頂は間近今日は天気が猫の目のようによく変わる。
丸山山頂を目前にしてさっきの青空はなくなり灰色の空気に包まれた。風が再び強くなってきた。


登~頂~!!
2月に比べると雪の量は少ないが、すべて新雪ということもあってここまでラッセルの連続であった。それだけに登頂の喜びは大きい。
1月初めでこれだけの積雪は文句なし!


ツェルトの中でランチ風は衰えることなく吹き続けている。
体感はマイナス10度ほど。凍えるような寒さだ。
スノーシューツアーのときに必ず携行しているツェルトをかぶってランチにした。薄いナイロン生地一枚だけだが風を直接、身体で受けないだけでも快適さがずいぶん違う。


帰りは旧登山道で下山丸山山頂でそこそこ時間を費やした後、下山となったが、往復同じルートを歩くことはしない。天空回廊の出現によって使われなくなった旧登山道を下る。
ただしここは天空回廊と同じような傾斜がありなおかつ、深い樹林になっていて歩きづらい。それにルートを間違うと自然と深い沢に入り込んでしまい脱出が困難になる。地形を熟知していない人にはお勧めできないルートである。


八平ヶ原への分岐登山口まであと15分の位置にある八平ヶ原への分岐。
ここまで来ると傾斜は緩くなる。


今から12年前の2006年1月4日にスノーシューツアーで刈込湖へ行ったことがある。
暮れに大雪が降ったおかげで正月明けのフィールドは新雪がたっぷり積もり、それはもう大変な思いをしたことがある。
特に傾斜が急になる小峠手前の斜面は太ももまで雪があり、このラッセルで力を使い果たしてしまい目的地に着いたときは疲労困憊して意識朦朧の状態であった。
冬の日光は気温は極寒とも言えるほど下がるが群馬県や福島県に比べると雪の量は少ない。それだけに1月早々から深い雪に行く手を阻まれるというのは管理人の20年の経験でも珍しい。
この雪が吉となれば嬉しい。