3県境の山、黒岩山の下見でひょいと鬼怒沼へ。近ければ毎週でも行きたい魅力があるのだが。

2016年9月9日(金) 天候:変化激しい、気温:19度

女夫淵(6:35)<3.49>八丁ノ湯(8:00/8:02)<0.60>加仁湯(8:10/8:13)<0.65>日光澤温泉(8 : 23/8 : 30)<0.54>丸沼分岐(8:48/8:50)<0.68>オロオソロシ展望台(9:11/9 : 20)<1.88>鬼怒沼南端(10:34)<0.73>鬼怒沼北端(11:26)<0.73>鬼怒沼南端(11:55)<1.88>オロオソロシ展望台(12 : 58/13 : 16)<0.68>丸沼分岐(13 : 33/13:35)<1.30>オロオソロシ滝近くで折り返し(13:59/14:15)<1.30>丸沼分岐(14 : 38)<0.54>日光澤温泉(14:50/15:00)<0.65>加仁湯(15:11)<0.60>八丁ノ湯(15 : 17/15 : 27)<3.49>女夫淵(16 : 30)
( )内は時刻、< >内は推定区間距離

先月25日に続いて今日も鬼怒沼に行った。
鬼怒沼は27年前、家族で行ったときの情景が妙に頭から離れず、いつかは再訪しなければならないと考え、25日に実行した。

160909-096鬼怒沼は管理人が住む同じ日光市にあるのだが起点となる女夫淵まで遠く、さらには女夫淵から10キロもあるから行くにはそれなりの覚悟、たとえば6時に歩き始めるのなら4時に自宅を出発しなくてはならないし、陽の短い季節など6時に歩き始めたとしても下山は日没になるから行くとすれば時期を選ばなくてはならない。脚力も山道を往復20キロ歩くのに耐えられるようにしておかなくてはならない。
その点、女峰山はいいなぁ、自宅を5時半に出ても6時には歩き始められるし古賀志山にいたってはお客さんを送り出してから登り始めても十分、歩く時間がある。

まぁ、そんなわけでどうしても女峰山や古賀志山のような近場の山に足が向いてしまうのだけれど、冒頭に書いたように今年になって無性に鬼怒沼に行きたくなった。鬼怒沼に行かずして管理人の人生を終わりにしたくない(^^)。それを実行したのが先月25日のことだった。

25日に行ったときは事前に綿密な計画を組んだ。距離は長いし時間がかかるからだ。
計画には鬼怒沼だけで終わらず近くの鬼怒沼山と物見山を含んだので距離は21.64キロ、時間は休憩を含んで12時間43分と計算された(実際には11時間14分で女夫淵に戻ることができた)→詳しいことは山行記録で。

計画段階で地図を見ていて気づいたのは、鬼怒沼山へは鬼怒沼からさらに栃木県と群馬県境を北へ向かって歩いて行くのだが鬼怒沼山の先も県境はさらに続き、やがて福島県とも交わる。そこは栃木県と群馬県と福島県、3県が交わる地点である。
そこには標高2163メートルの黒岩山がある。
お~、3つの県にまたがる山かぁ、それは面白そうだなぁ(正確には福島県側に200メートル足りないがそこんとこは良しとしよう)。
しかも県境の栃木県側は我が日光市なのだよ。これはぜひ登っておかなくてはなるまい。

しかし問題は、鬼怒沼まで片道12キロも歩かなくてはならないのに、黒岩山は鬼怒沼の北端からさらに5.8キロも先にあることだ。女夫淵から片道だけで17.8キロ、日帰りで歩くには管理人の能力を超える距離だ。
しかし、なんとか日帰りでできないものか、命をかけてまでとはいかないまでも、女夫淵に辿り着いたらそのまんま車の中に倒れ込むほど疲れ果ててもいいからやってみたい、そんなことを考えている。

だが、無計画、下見なしのぶっつけ本番で臨むほど管理人は若くないし体力もない。遭難で世間を騒がせることになってはお客さん相手のツアーを本業の一部としている管理人にとって今後の仕事に差し支える。
そこで、3つのパターンを考えてみた。

1)出発当日、日光澤温泉に泊まって翌日、黒岩山に登り、下山後、もう一度日光澤温泉に泊まる。
2)出発当日、日光澤温泉に泊まって翌日、黒岩山に登り、下山後、女夫淵まで行ってそのまま帰宅する
3)完全な日帰り

3つのパターンとも距離は同じだが、行程の途中に宿泊を挟むことで疲れはまったく違ってくる。危険性が低減でき、成功率は高まる。
最終的な狙いは完全な日帰りだがそれを成すには場所が場所だけに、1→2とおこなった上で3というのが妥当なところだろう。
いずれにしても綿密な計画を組み、なんどか下見を重ねた上で実踏するしか年老いた管理人に日帰りの可能性はない。

さて、先月25日に鬼怒沼そして鬼怒沼山、物見山を日帰りで往復したところ、計画の21.64キロに対してGPSが記録した距離は23.6キロになった。
計画は地図上のルートをマウスでなぞって得た距離であり、実測値ではないため必ずしも正しいとはいえない。
ただし、所要時間を計算する基の値になるのでマウスクリックの間隔を細かくし、できるだけ正確を期すようにした。
GPSは上空を飛んでいる衛星からの電波を受けて演算するため、管理人はこれを正しい値としている。ただし、下山後でなければ知ることができない。
このGPSの記録値と計画との差が少ないほど実際の距離に近いといえるが、今回の差は往復で1.96(GPS:23.60/計画:21.64)キロだった。計画に対して1割未満なので計画の精度は悪くはなかったようだ。

それとは別にいつも頭を悩ますのがGPSの記録を「カシミール3D」を使って処理した結果の値だ。ひとつは27キロ(e-trex30)、もうひとつは30キロ(HOLUX m-241)という距離になった。
これはカシミール3Dの計算ロジックの問題でありどうすることもできないが30キロという値を見ると、いくらなんでもそれはないなとギョッとする。だって、そんな体力は管理人にないもの。
余談おしまい。

下見は目的地までのルート上の危険箇所を把握するとても重要な作業だ。傾斜の緩急も把握できるから所要時間に反映できる。さらには身体に距離感を覚えさせるのにもいい。
長距離長時間にわたる山行や難易度が高い登山をおこなうためにも下見は必須と考えている。
目的地のどの辺りまで下見をすればいいのかだが、黒岩山を目指す場合、管理人は鬼怒沼山に設定して先月25日に済ませておいた。
その先、黒岩山まで4.5キロはアップダウンが多いが標高差は小さく、下りで身体を休めることができる。鬼怒沼山からの最大標高差は200メートル、累積上り標高は390メートルなので女夫淵から鬼怒沼山までの間ほど、厳しくはない。

先月25日の目的は鬼怒沼に行くことだったが、それを黒岩山の1回目の下見とすれば今日は2回目だ。
前回は鬼怒沼までがずいぶん遠くまた、厳しいと感じた。
距離感と厳しさに身体を慣れさせるのが今日の目的である。


駐車場をスタートし、鬼怒川を渡ると鬼怒沼への登山道が始まる。
いきなり急な階段。


「鬼怒の中将乙姫橋=きぬのちゅうしょうおとひめばし」。
鬼怒川にかかる鉄製の長い橋だが支柱は河川の両側にあるだけ。
支えているのは径3センチほどのワイヤー。要するに巨大な吊り橋なのだ。


鬼怒川にかかる3つ目の橋、「砥の岩橋」。
「とのいわはし」、とでも読むんだろうか?
「砥」は砥石の「と」だから、昔は鬼怒川の岩を加工して砥石を作っていたなんてね?


奥鬼怒四湯のうち、最初に出合うのが「八丁ノ湯」。
隣接する大きなログハウスが現在の宿泊棟らしいが、以前はこの本館がメインだった。いまでも使われているのだろうか。
玄関脇のモミジがすでに色づいている。


モミジの隣のナナカマドは実を真っ赤に染めている。


次は「加仁湯」。
通り過ぎようとしたときに番頭さんらしき男性と出会ったのでご挨拶。
所野(管理人が住む日光市の住所)から来たと話したところ、大変驚いた様子だった。


奥鬼怒四湯の三つ目、鬼怒沼への入口にあたるのがここ、「日光澤温泉」。
木造の実に風情ある建物だ。
ここへ来る前、加仁湯から分かれて「手白沢温泉」が四湯目に数えられるが、分岐から30分もかかるため立ち寄らず、鬼怒沼へと向かう。


玄関の手前に流しっぱなしの水道がある。
沢水を桶に溜め、きれいな上水を蛇口から流しているのだろうと思う。
女夫淵からここまで2時間、持参した飲み水が空っぽになるタイミングなので自由(本当は断らなくてはいけないのだろうが)に使えるのはありがたい。


登山計画書をポストに入れて、、、


鬼怒沼への道を進む。


根名草山への分岐を鬼怒沼へと向かうとすぐ、これも鬼怒川に架かる橋で「荿音橋=おさおとばし」を渡る。
見慣れない漢字だが「荿」とははた織り機の部品のことだそうだ。鬼怒川の流れがはた織り機の動く音に似ていることから付けられたのだろうか。


いよいよ山道の様相を呈してきた。
傾斜が厳しくなるのもこの辺りから。


地図に滝の記号は描かれているものの名前は描かれていないが、すぐ近くに「ノシ滝」という道標があるのでそれとわかる。


群馬県の丸沼へと行く分岐を通り過ぎる。
ヒナタオソロシ滝とあるのが丸沼方面。
鬼怒沼からの帰りに行ってみようと思う。


オロオソロシ滝を遠くに眺める観瀑台。その距離600メートルもあるがちゃんと肉眼で見える。


鬼怒沼へのルートは階段が多い。
それだけ傾斜が急であることを表している。


ここ数度の台風によるものだろうか、倒木が、、、
すき間を通り抜けて進む。


鬼怒沼南端まで残り900メートル。
山道の900メートルを長いと感じるか短いと感じるかはそのときの体調と気分次第。今日は二度目なので身体が慣れたのか、もうすぐのように感じる。


笹がじゃまだがここを通り抜けると視界がパッと広がり、そこが鬼怒沼の入口である。


今日も空は一面、雲に覆われている。
前回と同じように到着したときは管理人一人だけ。
こうして写真で見ると景色にメリハリがないというか、遠近感が出ていないというか、パッとしないが実際には感動するほど雄大な景色なのだよ。要は写真の腕が悪いだけ(^^)


モウセンゴケの葉が前回よりもずいぶんと赤くなった。→2週間前


天気が良ければこの方角に白根山などが見えるはずなんだが、、、
先月25日も視界不良でなにも見えず。


少し角度を変えて撮っても景色がパッとしない。


イワショウブが咲き終わって実になっている。
中央の深紅が花後の実で周りのは萼片だと思う。
咲いている状態はこちら


鬼怒沼の良さを引き出す撮影ポイントがなかなか見いだせなかったが、ここは沼に奥行きがあって良い感じだ。
引き上げる頃になってようやく、空が見えるようになった。青い空が少し入るだけでも雰囲気が違って見える。


今日はじっくり時間をかけて鬼怒沼を堪能した。
朝は計画に対して出発が35分遅れた。
遅れはすでに取り戻し、計画通りの時間となったがそろそろ帰らなくては。
オオカメノキの葉が色づいている。


丸沼への分岐まで戻ってヒナタオソロシ滝の観瀑台へ向かう。
この吊り橋、けっこう揺れる。
中間辺りまで行って写真を撮ろうとカメラのモニターを覗いていると揺れは最大となり、その揺れのためにシャッターボタンがなかなか押せない。
う~む、これはなかなかだ。覚悟して渡るべきだった(^^)


道標が朽ち、かしいでいる。管理人には自然で好ましく思える。


道が左に折れる角に木製の小さな観瀑台があり、ヒナタオソロシ滝はここから眺めるようだった。


ヒナタオソロシ滝は観瀑台はるか遠方、100メートルくらい先に流れ落ちている。
カメラのズームを最大にして撮ったがまるで地元の霧降滝のような形だ。


観瀑台の先の道は湯沢峠を経て群馬県の丸沼に続く。
地図を見るとオロオソロシ滝のすぐ脇を通るようになっているので行ってみることにした。


オロオソロシ滝は道の右斜面のずっと下に落ち口が見える程度で、近づけそうにない。
丸沼への道がオロオソロシ滝の上流と交わるところまで行き、折り返すことにした。


再び吊り橋を渡る。
ちなみに観瀑台と吊り橋の間で見たハイカーは鬼怒沼よりも多かったので、ヒナタオソロシ滝を目当てに訪れる人がいるのかもしれない。


日光澤温泉に辿り着いた。
いずれ近いうちにここにお世話になるであろう。
挨拶を兼ねて黒岩山のこと、冬の鬼怒沼のことなど教えていただくつもりで玄関を入った。
いくつかわかったこと。
ここを起点にしても黒岩山を往復するには10~12時間かかること、10月は日没が早くなること、鬼怒沼へは冬でも行けるがラッセルは覚悟することなどであった。対応はこころよかった。

栗?
いや、近づいてよく見ると栃の実でした。
実を包んでいる厚い皮がなければ栗とそっくり。
食用にできるそうだが口に入るまでの工程に大変な手間がかかるらしい。


「きぬのちゅうしょうおとひめばし」を渡る。


車道へと下る階段。


女夫淵駐車場に戻った。
歩き始めるときは6台だったが10数台に増えている。


ヒナタオソロシ滝から鬼怒沼まで、地理院地図の道から大きく外れた箇所が2つあるが、道の崩落によって現在は赤い線のルートになっているようだ。

前回は鬼怒沼山と物見山4.5キロを歩いたが今日はパス。その代わりに丸沼への道を往復で2.7キロ歩いたので差し引き1.8キロ少なかった。

計画は平地を時速3キロに設定(すると大まかには緩やかな上りで同2キロ、急な上りで同1キロくらいにセットされる)して区間距離毎の所要時間を計算(といっても機械が)。往復の所要時間は10時間5分と出た。
実績は8時間33分だったので計画時間は十分に余裕のあるものだった。それを休憩時間に充てたがそれでも休憩を含んだ計画所要時間10時間55分に対して10時間1分と余裕があった。
まっ、これくらいの余裕を持たせておかないと気が急いて仕方がない。

距離が1.8キロ少なかったのと休憩を長く取ったためか疲れは前回に比べてずいぶん軽減されている。
今日のペースを身体が覚えてくれれば黒岩山も夢ではなくなる。
さあ、次は日光澤温泉泊で黒岩山かな?