湯元から刈込湖・切込湖へ。イトキンポウゲは盛りは過ぎたが健在だった。

2016年8月5日(金) 晴れのち雷雨

湯元駐車場(9:23)~湯元源泉(9:28)~刈込湖(10:27)~切込湖(10:52)~涸沼(11:18)~山王峠(12:04)~光徳温泉(12:36)~湯元駐車場(14:15)

8月に入ってすっきりした青空が広がり朝から気温が上がる日が多くなってきた。そして午後はお決まりのごとく雷を伴った夕立となる。これが夏特有の山の天候なので驚くことはないのだが、いざその中に自分の身を置くことを考えると落雷は怖い。
したがってこの時期の山は日の出と同時に歩き始めて午後早々に戻ってしまうか、短時間で歩けるコースを設定するのが賢明だ。

先月29日は自宅を6時前に出発して歩き始め、14時過ぎに駐車場に戻った。これが夏山のスタンダードである。
今日もそうすべきだったのに実は昨日、買ったばかりのザックを前に、メーカーが違えばザックの構造も違うので、何をどのポケットに移せばそのザック本来の使いやすさが得られるのかについて迷いに迷った挙げ句、何もせずに寝てしまったのだ。

そんなわけで今まで使っていたザックから荷物を移したのは朝になってからという準備の悪さだ。そんなこんなで支度は今朝、慌てて済ませたので出発が遅くなってしまった。

行き先は健康維持になるのならばどこでもよかった。10キロくらい歩ければ満足。
ただこの暑さなので古賀志山は避けたい。
なにしろ我が家よりも標高が低いうえに南に位置しているので暑いに決まっている。
となればやはり行き先は標高の高い奥日光しかない。
とはいっても明日からの本業を控えて疲れて帰るようなハードな山行は避けたい。
暑いのはいやだ、疲れるのはいやだとわがままばかり言っているが盛夏の山歩きは暑さによる発汗で、疲れが普段の3割り増しになるからほどほどにしたいものだ。

そうだ、刈込湖あたりはどうだろうか。
この時間からでも十分、間に合うし、起点となる湯元温泉との標高差は300メートルもないから、汗がとまらず脱水症になることもないであろう。
盛りは過ぎているが刈込湖のイトキンポウゲが見られるかもしれないという期待もある。

荷物はとりあえずそのまんま新しいザックに放り込んだ。なんの工夫もないw
家に帰ったら山行データを整理しながら新しいザックの使い勝手なども振り返ってみよう。


9:28
刈込湖への起点となる湯元源泉。
小屋の中に温泉の湧き出し口があって、パイプラインで湯元と中禅寺湖の各旅館へ温泉を供給している。
地面からも湧き出していて手を入れては歓声を上げている観光客がいる。草津の湯畑ほどの規模ではないし華やかさもないが、田舎の温泉地の素朴さに癒される。
今日は市営の駐車場をスタートして同じ場所に戻ってくるという、約15キロの手頃なハイキングにした。


源泉をスタートしてこの笹の間を上がると国道120号線に出るので、それから本コースに入る。


国道120号線通称、金精道路。首都圏に近い国道なのに一年のうちの1/3は雪に閉ざされ通行止めになる山岳道路だ。雪崩も多い。
湯元と群馬県の沼田を結んでいるが生活道路ではないため冬は除雪をしない。


9:38
国道脇にある本コースの入口。
大きな案内板を右にみながら傾斜を登っていく。
冬は案内板のコースの他に雪が積もって初めて歩ける、ドビン沢コースというのが出現し、夏道よりも面白い。


案内板にある夏道。傾斜は緩く歩き易い。
冬は斜面からの雪崩があるのであまり勧められない。


間もなく休憩に適した小峠だが傾斜はややきつくなる。
小峠に到着したら休憩しようと考えていたところ数十人もの小学生の団体で埋まっていた。記録として峠を示す道標を撮ろうとしても立つスペースがない。やむなくそのまま通過。


10時ちょうど、小峠を通過。
小峠はソバナが多い。


10:15
平坦路が終わると刈込湖へ向かって急降下する。
たしか階段が12箇所だったかな、樹林帯の中に敷設されている。


階段の傾斜はまちまちで冬は雪で埋まりすべり台として遊べる。


最後の階段まで来ると刈込湖が見下ろせる。


10:27
刈込湖に到着。
雨不足の影響か、水位は低いようだ。


お目当てのイトキンポウゲはまだ少し残っていた。
花は直径1センチにも満たない大きさで、花弁はキンポウゲ科特有の光沢がある。
茎は地面を横に這い、葉は糸のように細いことからその名が与えられている。くすんだ緑色のが葉っぱ(上に見える葉の集まりは雑草)。
全国でも生育地域が限られているようで環境省のホームページによると「絶滅危惧ⅠB類」に指定されている。
日光では他に西ノ湖で見られる。


古い写真だが2009年7月15日に西ノ湖で見たイトキンポウゲ。本当に小さい。


木立の中の刈込湖


満開のカニコウモリの群落が見られた。
地味な花だ。筒状の先端が少し開くとそれが満開の状態。
葉がカニの甲羅のような文様でなおかつ、コウモリが羽を広げた形に似ていることから名がついている。


カニコウモリ近撮。
ワタクシ、これでも咲き乱れているのよ、ほほほっ。


11:13
涸沼全景
以前はこの原全体がお花畑だったらしいが小田代ケ原や戦場ヶ原にようにネットで囲われてはいないため、植物はシカによって食い荒らされたそうだ。
管理人が到着したとき、先着していた小学生の団体がいたが休憩が済んだのか先へ進んでいった。


マルバダケブキ


トネアザミ


先着していた小学生たちは山王峠へと向かって行く。
無人になったのでここで昼食とするが、小峠で追い越した小学生の団体がいつ到着するかもしれないので、のんびりとはしていられない。
この時期の日光は小学生の団体の動向を気にしながら行動しなければならないのが難点。


先行した小学生の姿が見えなくなったのとほぼ同時に、後続の団体が到着。ゆっくりしている間もなく、管理人も山王峠へ向かうことにした。


ヤマオダマキ


涸沼から山王峠への斜面は急なので道は斜面を横切るようにジグザグについている。


11:58
この辺りが山王林道の峠。


山王林道と接する辺りからハイキングコースの山王峠まで、木道が敷設されているが距離は短い。


山王峠から光徳までは深い樹林帯の中を下っていく。
遠くで雷が鳴っている。上空は暗く、この辺も雨になるのは間違いないようだ。


12:36
足早に歩き光徳に辿り着いた頃には雨になった。
取り急ぎ、市営駐車場のトイレに駆け込んでザックから折りたたみ傘を取り出しさらに、ザックにカバーをかけた。
雨がひどくなるようならバスで湯元に戻ることにして、バス停で10分ほど待機。夕立とは違って止みそうにはなくといってこれ以上、激しくなることもないようだ。予定通り、5キロの道のりを歩いて湯元に戻ることにした。


光徳牧場の片隅で草を食べる牛たち。
端から端まで見渡せるほどの小さな牧場なのだが実に素朴な光景が広がっている。
小学生の団体は光徳駐車場からバスに乗り今夜の宿泊地へ向かうので、ここは人っ子ひとりいない。今日、初めて訪れる静寂を噛みしめるようにしてゆっくり歩く。


コバギボウシ


13:07
バスの通る車道よりも牧場の脇から光徳沼を経て国道に出る方がいろんな楽しみがある。
光徳沼は土砂が堆積して川床が浅くなっていまい、もはや沼とはいえない。


かつての光徳沼(1999年6月21日撮影)。
逆川(さかさがわ)からの流れはここで一旦、とどまり、沼を潤したあと戦場ヶ原に向かってゆっくりと流れていく。
この姿を再び見ることはないであろう。


バイカモが見られた。


ウツボグサ(ミヤマウツボグサかも)


逆川沿いのコースを国道へ向けて歩いて行く。
雨はかなり激しくなり傘なしではいられないほど。


13:30
国道に出たところで前方に目をやると雲に覆われた五色山がわずかに見える。


湯滝の落ち口付近で国道と分かれて湯ノ湖周遊歩道に入る。
湖畔に沿って歩くと湯元温泉と金精道路との分岐があるのでここを湯元温泉へ。


14:06
歩き始めた湯元に到着。
総距離15キロ。疲れもせずといって物足りなくはない、いい距離だった。



で、ザックのことはどうなったかというと、モンベルの30リットルのを2年ほど使っているが、薄着の季節だとお腹が空いてくると腰ベルトをいくら締めても腰回りにすき間が空いてザックがずり下がってくる。その結果、ザックの荷重を腰で受けとめることができず肩に負担がかかってそれが辛い。
ザックの荷重は基本、腰でしっかり受けとめて肩への負担はできるだけ少なくするほうが長時間、歩いても疲れない。
それだけのためにモンベルからカリマーのザックに替えた。

カリマーリッジ40という製品にしたところ、腰回りにフィットして肩が軽くなった。お腹が空いても腰ベルトにまだ締められるだけの余裕があるから、食糧が尽きて飢餓状態になってもザックがずり落ちてくるようなことはなさそう。
まっ、このように、ほんのわずかな違和感だけで別の製品に取っ替えてしまう傾向が管理人にはあって、自室の壁にはザックがずら~っとかかり、押し入れには登山用品がぎっしり詰まり、衣装ケースにはウエアがはみ出すほど溜まる。溜まらないのはお金だけというのは管理人の性癖からして致し方なしといったところか。

カリマーリッジの背負い心地は良いとして、それとは別の観点からモンベルのザックはよくできていると思う。
最近では水分補給するのにハイドレーションシステムといって、ザックの中に水袋を収納し、水袋から取り出した吸水管を顔の横に配置してどのような状況下でもザックを下ろすことなく水分補給を可能にする構造になっている製品が当たり前となっているが、水袋に入れる飲物として水道水にするかスポーツドリンクにするかで事後のメンテナンスが大きく違ってくる。
すなわち、水道水であれば次の山行までなにもしなくても大丈夫だがスポーツドリンクだと山行後、すぐに洗浄しないと雑菌が繁殖して、大変なことになる。
水袋を洗えばいいというだけの話ではない。水袋も吸水管も吸い口もすべて洗剤をつけたブラシで洗って乾燥させないと黴びてしまい、使い物にならなくなってしまう。大変なのだよ、ハイドレーションシステムのメンテナンスは。

スポーツドリンクの有用性を信じて疑わない管理人はそんな面倒なことはしたくないから、ハイドレーションシステムは使わずもっぱら使い捨てのペットボトルあるいは洗浄しやすい広口の飲料ボトル派だ。
問題はザックのサイドポケットに収納したボトルの取り出しと、飲んだあと、元の場所に戻すという動作。これは普通、身体を思いっきりよじらなければ不可能であり、皆さんとても苦労している。

管理人が主催するスノーシューツアーにご夫婦が参加した場合など、お互いに相手のザックからペットボトルを取り出してあげるといったほほえましい光景が見られるのだが、独り参加の場合はそうはいかない。孤軍奮闘する姿がそこに見える。

モンベルの一部の製品は、ザックを背負ったままサイドポケットからのボトルの出し入れを容易にしている。構造は簡単で、要するにボトルをサイドポケットに真上からも、斜め上からも収納できるようになっていて右のポケットなら右手1本で左も同様に出し入れできてとても便利なのだ。
立ち止まってザックを下ろす必要はなく、歩きながらでもボトルを取り出して飲むことができるから、利用者の立場をよく考慮した設計といえる。

水袋を使ったハイドレーションシステムを優先するあまり、サイドポケットの機能が旧態依然のままで進化が停止しているザックを、カリマーリッジの新モデルにも見てしまった管理人である(まっ、そこんとこは工夫しましたが)(※)。

あっ、それから、なぜ水分補給に水道水だけではいけないのかというと、登山という数時間にもおよぶ激しい運動で発汗すると体内のナトリウムやカリウム、カルシウムなどのミネラル成分も同時に排出され、水道水を飲むとミネラル成分の比率の低下を防ごうとして、飲んだ分の水分を排出する作用が働き、水分を体内に取り込めなくなる。つまり、登山中の熱中症はミネラル成分を含まない水道水他の飲物では防げない。
したがって水分と同時に塩分を積極的に採らないと大量の発汗による足の痙攣や集中力の欠落、意識障害につながってしまうのだ、と本からの知識の受け売りをしておく。

だから管理人はハイドレーションシステムの事後のメンテナンスの煩わしさを考えて、スポーツドリンクはペットボトルや広口ボトルで飲むようにして、ボトルの取り出しやすさだけでザックを選んだり、飲みやすさの工夫をしている。
今回の結論として、ザックの背負い心地はカリマーに分があるがボトルの取り出しやすさはモンベルに軍配を上げる。
ただし、背負い心地はその人の体型と体力で決まってしまうので管理人、もっと太く逞しくならなくては。

※2016年11月現在、サイドポケットのボトルは慣れるにしたがってザックを背負ったままで取り出しと収納ができるようになった。