ニッコウキスゲ大群落の雄国沼へ。雄国山、厩岳山、猫魔ヶ岳24キロ縦走。

2019年6月26日(水) 晴れ

福島県の山の魅力についてはこれまでにもブログでずいぶん紹介してきたので重複は避けたいところだが、今回の雄国沼のニッコウキスゲの大群落といい、低山ながらも素晴らしい眺めが得られる雄国山に厩岳山、猫魔ヶ岳など、魅力的な山を経験してしまうとやはりこれを記録としてブログに残しておかない訳にはいかない。

「日光を歩こう」というタイトルのブログなのにナゼ福島県の山ばかり? と読者に訝られそうだが、22年の登山経験のうち、2/3以上は日光の山ばかりだった管理人である。
それに比べれば福島県の山はまだ始めたばかりで、日光の山を登り始めた頃のような新鮮さと感動が入り混じり、二度目の絶頂期を今、存分に楽しんでいるといっても差し支えない。

管理人が山を楽しめる時間は年齢からいって読者ほど長くはないというのが客観的な考えかただ。
日光で宿泊業を営む者として、「日光の自然」の素晴らしさを広く紹介する立場にある管理人だが、開業20年を過ぎてからはその縛りを解き、残された時間を自分自身のために未知のフィールドの探索に充てたいという気持ちに変わった。
その対象が隣県の福島県であり、その懐の深さと雄大な景色の魅力に引き込まれていったというわけである。

もしかすると、このまま福島県の山に登り続け日光の山に戻ることはないのかもわからない。
日光の山で一日を費やすのであればもう一日プラスして福島県に行きたい。
今はそんな気持ちに支配されている管理人なのである。

行程表
ラビスパ(5:50)~雄国山(7:47/8:03)~休憩舎(8:29/8:35)~雄国沼湿原入口(8:57/9:25)~金沢峠(9:32)~厩岳山分岐(10:37)~厩岳山(10:53/11:13)~猫石(11:51)~猫魔ヶ岳(12:18/12:40)~猫石(12:59)~雄国沼東岸~休憩舎(14:16/14:25)~雄子沢登山口(15:38)・・・路線バス(15:57)・・・ラビスパ
※ラビスパは国道459号線の北塩原村(裏磐梯)にある日帰り温泉施設で、雄国山への2つの登山口を持つ。
※厩岳山=「うまやさん」と読む。山頂には「厩嶽山」という山名板があるがブログでは地理院地図の表記に準じることにする。なお、歴史春秋社「会津百名山」やヤマケイ分県登山ガイドでは「まやたけさん」となっていて、どれが正しいのか迷うところだ。

メモ
・歩行距離:23.8キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:9時間53分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1435メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

スタートはここ、ラビスパ裏磐梯という日帰り温泉施設。
ここに裏磐梯を発って喜多方へ向かうバス停がある。
後ほど詳しく書くが、ここにバス停があることでピストン山行を避ける計画を組むことができた。
下山はここから離れた雄子沢登山口にして路線バスでここまで戻る予定。戻ったらこの温泉で汗を流すつもり。
画像は350台駐められる駐車場の最奥、施設の裏手から撮った。


駐車場が登山口になっているのはこの上なく便利。
ラビスパの敷地は広大で、雄国山への登山口が2箇所ある。
東口、西口と名付けられているがこれは西口。
実は昨日、下見に訪れたとき西口はすぐに見つかったが東口がわからなかった。必然的に西口から歩き始めることにした。


ダイコンソウ


樹林帯の中の細い道だが閉塞感があるわけではなく、歩きやすい。
傾斜も厳しくはない。


ここで東口からの登山道と合流。
昨日は見つからなかったが、東口はどこかにきっとあるのだろう。
帰りはここから降りて東口に、という方法もあるが、それだと雄国沼からここまで同じ道を歩くことになり、面白くない。東口の探索は別の機会にしよう。


フタリシズカ
花序が1本のヒトリシズカというのもあるが、花序が3本あってもサンニンシズカとは言わずフタリシズカ。


カエデの実
熟すとプロペラ効果で遠くに飛んで子孫を増やす。


鈴なりに花をつけているナルコユリ。
背丈は1メートルもあるからオオナルコユリかもしれない。
茎にぶら下がっているのは一見、実のように見えるが、、、


下から覗き込むとちゃんと咲いています(笑)


ギンリョウソウ、別名ユウレイタケ(冗談ではなく)。


この巨大な葉っぱはミズバショウですね。


花を観察しながらのんびり歩いているうちに三等三角点のある雄国山(1271m)に到着。日光でいえば中禅寺湖と同じ標高だが遮るものがないだけに高度感が得られる。
ちなみにスタート地点の標高が800メートルなので470メートルの上りだったが、この間、距離が5キロ強あるので傾斜はとても緩やかでキツさはまったく感じなかった。


山頂の展望台に立って見渡すとこれから行く雄国沼がよく見える。
沼のほとりに木道があるそうだがきっとあの平坦な薄緑色の部分だろう。


西に喜多方市街地が見える。


南東には磐梯山。
雄国山は標高は低いながら360度の展望があるいい山だ。


展望をもっと楽しんでいたいところだが今日は22キロという長丁場なので雄国沼に向かって急ぐことにした。


雄国沼はどこからでもよく見える。
ここは猫魔ヶ岳(画像左奥)の噴火でできたカルデラ湖であることをガイドブックを読み、予備知識としていた。


ハナニガナ


ウラジロヨウラク


ズダヤクシュ


視界が突然、開けて大きなログハウスと出合うとそれは雄国沼休憩舎。


無人だが管理と利用者のマナーがいいのであろう、きれいの一言。
50人くらい入れる大きな建物だが山小屋とは構造が違い宿泊を目的とする利用はできないみたいだ。チップ制のトイレが備え付けられている。
なお、冒頭に書いた歴史春秋社・平成14年発行第4刷「会津百名山」にはこれとは違う建物の写真が掲載されているから、建て替えられたのであろう。


チップ制のトイレは清掃が行き届き、清潔感がある。
福島県の山に登り始めて日は浅いが、山の中にもトイレがあることを知った。そして、管理が行き届いてきれいなこと。管理は行政であったり民間であったりするが登山者を快く迎え入れようという気持ちを感じる。
国立公園だからトイレがあり、そして正しく管理されているのか、それとも国立公園だから構造物を置かないのか、その基準がどこにあるのか管理人にはわからないが、前者と後者の決定的な違いは自然公園の利用者数の違いではないかと思う。
福島県の山(尾瀬国立公園と磐梯・朝日国立公園)は管理人の経験では、平日にもかかわらず県内外からの登山者が多い。自然公園は自然保護を大切にしなくてはならない一方で、多くの人に利用してもらうことに意味がある。
福島県の山(栃木県外の山は福島県しか知らないが)は好循環となっているいい例なのであろう。

だいぶ時間を食ってしまった。
そんな私見を述べている場合ではない!
今日はこれから雄国沼のニッコウキスゲを見てその後、厩岳山と猫魔ヶ岳に登らなくてはならない。先を急がなくちゃ。


タニウツギ


ダイコンソウ


クルマムグラ


雄国沼の入口に到着。
ここから木道が始まる。
といっても木道は沼を一周するように敷設されているわけではない。沼の西側に位置する湿原を20分かけて見て回れるようになっている。


木道を歩き始めるとすぐ、ニッコウキスゲの群落が目に飛び込んでくる。
木道はこの先、沼に向かって方向を変えるが、湿原は正面に見える山並みまで続き、そこまでニッコウキスゲがはっきりと目視できる。


山の麓に向かってニッコウキスゲが群生している。


黄色一色かに見えたがレンゲツツジも。


コバイケイソウ


ニッコウキスゲは1株に3~4個の蕾をつけ、花は一日咲いて枯れる。したがって蕾が3個ある株なら3日は楽しませてくれるわけだ。


まさに黄色の絨毯という形容通り、密度が濃い。


沼にもっとも近い木道から安達太良山が望める。


15センチはあろうかと思うほど大きなヒオウギアヤメ。
こんなに大きいアヤメは初めて見た。


もう一周、という誘惑に駆られたが先が長いことを考え、今回は一周だけにとどめ、次の目的地である厩岳山に向かうことにした。
雄国山からの登山道との合流を西へ上がっていくと普段はマイカーが通行できる車道に出る。金沢峠である。
画像右に見える構造物は展望台。


展望台に上がって先ほど歩いた湿原を見下ろす。
僅かな距離(たしか800メートル)だったにもかかわらずニッコウキスゲの大群落に圧倒されたいい散策になった。


昨年、雄国沼の下見にここを訪れた。
車はジムニーだったが濃霧の中、すれ違いもできないほど細くクネクネした山道を心細い思いをして上がって来たのがここだった。
あまりにも濃い霧のため雄国沼がどこにあるのかさえわからなかった記憶がある。


雄国沼のウリであるニッコウキスゲが咲く時期になると、マイカー渋滞とオーバーユースの対策のために一般車は通行できなくなり、麓の駐車場を発着するシャトルバスが唯一の交通手段となる→交通規制


さてこれから厩岳山と猫魔ヶ岳に登る計画なのだが地理院地図に描かれている登山道が見つからない。
バスが発着する金沢峠から南へ延びるこの車道と並行して登山道があるはずなのだがね、、、
まっ、この先で交わることになっているので登山道を探す手間を省いてこのまま進むことにしよう。
正面やや左に見えるこんもりした山が厩岳山だと思う。


ヤマツツジ


ハナニガナ


車道を1500メートルほど行くと分岐し、車道は西(右)へカーブしながら麓へ向かう。分岐を南下(直進)する道(地図上の軽車道)もあり、それが厩岳山へと続いている(画像)。地理院地図に描かれている登山道はまだ出てこない。
このすこし先で登山者と出会ったので地図にある登山道のことを尋ねてみたが、この道で正しいはずだとの答えが返ってきた。その登山者曰く、いつもこの道を歩いているとのことだ。
地元の登山者ですら知らないということは、地図にある道は廃道になって久しいのかもわからない。
余談だが、分岐の叉に斜面を上って行く道があったので地図で調べてみると古城ヶ峰に続いているようだ。


マイヅルソウ


厩岳山と猫石経由で猫魔ヶ岳に行く道の分岐を標識にしたがって進む。


先ほどの標識にある所要時間を1分オーバーの16分で着いた。
山名板は「厩嶽山」となっていて地理院地図の表記とは異なっているが、訳あってのことなのだろう。
再度、山名の読み方だが「うまやさん」、「まやたけさん」、「まやだけさん」、「みやたけさん」、「うまやだけさん」、「みやまさん」、「やまやさん」などといろいろあるらしい。
いずれ正しい読み方を探ってみよう。


低山ながらも眺めはいい。
磐梯山に雄国沼、喜多方市街が見通せる。
あまりの暑さにここでシャツを脱ぎ、大きな岩の上に広げて乾かす。
その間に昨日、会津若松市内のスーパーで買ったパンを頬張る。


20分ほどの休憩の後、猫魔ヶ岳へ向かうことにしたが、ここは分岐からピストンすべき山頂なのに下山方向を示す矢印が書かれた標識がある。
もしかすると一方通行なのかなと考えたが思いとどまり、コンパスで方角を確かめるとこの矢印は山頂の南に位置する磐梯町側の登山口へ導くものであった。よく確かめずに下ったらとんでもないことになっていた。
「下山」ではなく「磐梯町へ」と書いておけば間違いはないのだが。


分岐まで戻り、次は猫魔ヶ岳に向かう。
往きに見たのだがここにヒトの拳2ケ大の糞が落ちていた。その大きさから熊であることに間違いはない。熊よけの鈴を携行しない管理人は代わりにホイッスルを鳴らして熊よけとした。


ユキザサ


ここは猫魔ヶ岳を経由して八方台登山口へ下山する道と猫石を経由して雄国沼に行く道の分岐。
行き先は猫魔ヶ岳だがその前に、「猫石」という奇妙な名前の魔力に抗えず先に立ち寄ることにした。ここからわずか10メートルしか離れてないしね。


「猫石」
見る角度によって大きな猫の上にこれも大きな岩が載っているように見えるらしい、が管理人にはそのようには、、、


ここからの展望も素晴らしく南に猪苗代湖が、、、


雄国沼も、、、
いや~、うっとりするような実に素晴らしい眺め!!


猫石から分岐の戻って先へ進むと視界が開け眼の前に三角点が飛び込んできた。
一等三角点である。
だが山頂はここではなかった。


三角点を通り過ぎると視界はさらに開け、今度は磐梯山が目の前に。
山頂は岩が積み重なって東西に細長く、八方台(磐梯山の西にある登山口)に下山する道がついている。


桧原湖とその奥に見えるのは西吾妻山だろうか?


先着の登山者が皆、八方台へと下山して無人になったのでこの雄大な景色を独占。とても贅沢な気分を味わえた。
なお、猫魔ヶ岳には化け猫伝説というのがあって、先ほどの猫石は悪さをする化け猫が弘法大師によって封じ込められた跡だそうだ→こちら


雄国山とその奥にまだ雪をかぶっている飯豊連峰が見える。
今日は雄国山から、金沢峠から、厩岳山から、猫石から、そして猫魔ヶ岳から実に雄大で美しい展望が楽しめた。
これらの山がもっと身近にあれば毎日でも通いたいくらいだ。


猫魔ヶ岳から猫石を通り、雄国沼へ向かう。


ヤグルマソウ


道はほとんど平坦

沢を3本、渡っただろうか。
そのたびに水を口に含んで味を確かめ、手ぬぐいを濡らして汗を拭う。


このルートは雄国沼と接している。


コンクリート製の構造物が現れた。
雄国沼が増水したときに水を逃がすための水門らしい。
溢れた水は雄子沢となって桧原湖に流れ込んでいることが地図からわかる。


水門から木道まで、このような堰堤を歩いていく。


このルート、悪くないぞ。


休憩舎に到着。
朝と同じように多くの登山者で賑わっていた。
実は管理人、金沢峠あたりで左股関節に痛みを感じるようになった。
昔から股関節周りの筋肉の動きが悪く、平坦路が長く続くと痛みだすという持病を抱えていて数年ぶりに発症した。
建物に入りベンチに腰掛けて股関節を休ませることにした。


休憩舎から元来た道を少し戻るとラビスパと雄子沢への道に分岐するのでここを右、雄子沢へ行く。


このルートは平坦路が長くとても快適に歩ける。
といっても股関節の痛みに耐えながら。


カラマツソウ(ハルカラマツかも?)


ギンリョウソウ


ヤグルマソウ


先頭に追いついたり後続に抜かされたり、、、まっそれだけこのルートの利用者は多いというわけだ。


車道が見えてきた。
ここは国道459号線の雄子沢登山口で、すぐ近くに駐車場とバス停があるので便利。


国道を駐車場とバス停に向かって歩く登山者。
下山するとすぐ先に駐車場とバス停が見える。


GPSが記録した距離は23.2キロ。
計画段階では22キロだったからほぼその通りの距離を歩いたことになる。
9時間52分という時間には休憩と写真を撮る時間を含んでいる。
今回、写真は443枚だった。これを1枚あたり10秒で計算すると74分も費やしたことになる。毎度のことだが(笑)。
そして休憩の数が多いのが管理人の登山スタイルなので、読者であれば7時間くらいで下山できるのはないかと思う。


15:57発のバスに十分、間に合った。
バスは裏磐梯と喜多方を結んでいて、車を置いたラビスパに停まる。
本数が少ないのはどこも同じなので1時間待つことを覚悟したが、17分の待ち時間で乗れたのは幸いだった。
ちなみにバスはこの後、16:52発と18:12発があるので登山にもっと時間をかけても大丈夫だった。


マイカー登山の場合、登山口と下山口を別にする、いわゆる周回ルートを計画すると、下山後にマイカーを引き取りに行かなくてはならないという難がある。
今回、雄国沼の他に三座を巡るルートを計画するにあたって情報をまさぐったところ唯一、ヤマレコに、ルートはまったく異なるがバスを利用して登山口と下山口を結んだレポートが見つかった。具体的には裏磐梯から磐梯山に登って雄国沼を経由して雄子沢に下山してバスで裏磐梯に戻るというものである。
バス便があるのは周回ルートの大きな強みになる。
それにヒントを得て、同じ路線の雄子沢とラビスパ間をバスで移動することでピストン山行を回避する計画が組めた。
その結果、全体距離24キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)のうち、ピストンしたのは厩岳山と猫魔ヶ岳、休憩舎のそれぞれ往復に抑えることができた次第だ。
我ながらいいルートを組めたものだ。
弱った頭を駆使(苦使)して計画するのも登山のうちに含まれるんである。


今日、歩いたルートをこうして図にしてみるとアップダウンが多いように見えるが、これは図のマジックというもので、実際には緩やかに上って緩やかに下ったという印象が残る。それは距離の長さによるものだろう。登山というよりもトレッキングのルートとしてお勧めできる。
ビューポイントは雄国山、雄国沼、金沢峠、厩岳山、猫石、猫魔ヶ岳と盛りだくさんで、とても素敵な経験ができた。