横根高原(鹿沼市)探索。広大な自然林はツツジの宝庫らしい。

2017年4月24日(月)

今月20日のブログに日光市と境界線を接した横根高原(鹿沼市)に、東京ドーム23ヶ分に相当する面積に太陽光発電が設置されると書いた→こちら
管理人は長い間、日光の山を歩いているが横根高原のことなど地図でその存在を知っている程度で、行ったこともなければ歩いたこともないというほど、意識の外であった。知人からの説明で初めて、ことの重大さに気づいた次第だ。

太陽光や風力、川の流れなど自然エネルギーを利用した発電には大いに賛成するが、問題はその規模の大きさであろうと思う。
建物の屋根を利用したり休耕地の一部を利用するなど自然を壊さず、景観を損なわないで電気を生み出すというのが自然エネルギー発電の前提であろう。
東京ドーム23ヶ分に相当する自然林を切り拓いてまで発電する必然性が管理人には理解できない。

太陽光をパネルに当てるには、草木が1本も生えないよう設置後の維持管理が欠かせない。そのためには強力な除草剤を大量に散布するのは必至である。おそらく地中に埋め込んだ自動散布機から除草剤が撒かれるのであろう。それとも無人ヘリから空中散布されるのだろうか。
いずれにしても除草剤は地下に浸透するからパネルを設置した場所だけにとどまらず、広い範囲に影響をもたらせるはずだ。横根高原全体の死地化が問題となる。

横根高原を予定地とする太陽光発電はその規模から、自然環境を守ることと相反するものであり、管理人は反対の立場をとっている。
反対の気持ちを強くもって活動するにはまず現場を知らなくてはいけない、そんな思いから去る16日にドライブがてら全体を把握したが今日は現地の探索を目的に歩いてみることにした。


横根高原の入口、粕尾峠。この林を切り拓いて17万枚もの太陽光発電パネルが設置される予定がある。
ここがミズナラ他、林を守る役割を果たす広葉樹林にもかかわらずだ。


井戸湿原と横根高原ハイキングの拠点となる前日光ハイランドロッジは県営牧場内にあり、開放感たっぷり。
遠くに皇海山(茶色の構造物の先の三角形の山)がよく見える。


まず最初の目的地、井戸湿原へ向かう。
どこを見ても柵が張り巡らされているがこれらは放牧している牛が逃げ出さないようにするためのもの。


牧柵に沿った整備された道を歩く。


うひょ~、振り返ると日光連山が一望だ。


コース上にはこのような案内板がいくつかあるが、どれも非常にわかりにくい。
理由は一般的な地図と違って「北」が定まっていないからだ。
ここのは地図の上が東になっていることがわかりにくい理由となっている。


案内板には書かれていない分岐。
ここは井戸湿原に行ってみることに。


お~、シロヤシオだ。
この辺の標高は1300メートル前後なので開花は5月半ばかな?


行く手をシカ避けネットがふさぐ。
湿原に成育する植物をシカの害から防ぐためのもので、進むには扉に相当する部分を手で開ける。


井戸湿原の入口に佇む四阿(あずまや)。
昔はここに湿原荘という建物があったらしい。


ここを降りたところが井戸湿原。


規模は小さいながら情緒漂う井戸湿原。
木道が走る南北に100メートルほど、東西に500メートルほどの広さをもつ中層湿原で昭和45年に天然記念物に指定されたそうだ。


木道を渡りきると分岐があって直進すると「象の鼻」、左は「五段の滝」となっている。
この道標によると象の鼻はあたかも井戸湿原の南に位置しているかのように思ってしまうが、実際には右へ大きく回り込み、井戸湿原よりもハイランドロッジに近い位置にあることが地理院地図でわかる。
その象の鼻は帰りに寄ることにして五段の滝へ行ってみることにした。


これはバイケイソウかな?
オオバギボウシと間違えて食べ、重篤な食中毒を引き起こす毒草である。


尾根(右の斜面)のすぐ下についている道を東へと進む。


ここが五段の滝なのだが肝心の滝が見つからない。


強いていえばこれがそうか?
堆積した岩を伝って水が流れ落ちている。


さて次は岩海(がんかい)が見られる場所を探しに、道標にある「入粟野・日瓢鉱山」方面に進んでみることにした。
しかし、進むほどに沢から遠ざかるばかりで岩海らしき景観と出合わない。このまま進むと林道に出てしまいかねないので諦めて戻ることにした。岩海探しは次回の課題としておく。


アカヤシオ。
ゴールデンウイークあたりに開花かな?


ナナカマドがあるから紅葉も見事だろうと思う。


別の道から井戸湿原を見下ろす。


ノリウツギ


見晴台という草地に出た。
関東平野が一望できるとある。


前方は木々に遮られ、道標にあるような眺めはない。すぐに退散して元の道に戻ることに。


お次は象の鼻を目指そう。



仏岩という名の大きな岩。
修験僧がつけた名だそうだ。
岩の基部に小さな祠がある。


象の鼻展望台からの眺めは雄大で、ほぼ180度開けている。
展望台にある山座同定板に倣ってパノラマで撮った写真に山名を入れてみた。
ちなみに象の鼻というのはここにある岩の名前で、象の鼻の形に似ていることから名がついたそうだ。


今日は時間がたっぷりあるのでマルタイの「山の棒ラーメン」で久しぶりに本格的なランチでも(笑)
一般的な袋麺だと形状が四角なので丸鍋に収まらないが、マルタイのはスパゲティと同じように棒状なのでそこそこ深さがあれば調理できる。
マルタイの棒ラーメンはコシがあって麺がやや粘るのが特徴。
一昨年だったか、販売不振で経営危機に直面しているというニュースがあったが、こんなに旨くそして一風変わったラーメンが食べられなくなるのはもったいない。皆さん、積極的に食べてくださいな。


象の鼻をあとに今来た道を少し戻ってから分岐を別の道に入るとここへ出た。
先ほど通った分岐路だ。右は井戸湿原、左はハイランド。これから横根山に行くので道を横切って林の中へ向かう。


ヤマツツジだが至る所で目にした。


横根山への道は歩きやすい。


あそこが山頂らしいな。


標高1373メートル、二等三角点がある。
山頂は狭く、眺めはいいとはいえない。


「方寒山」とあるのが駐車場の方角。


ここもツツジの宝庫。


下山はここで終わって朝、横断した牧道と出合う。ここまで来れば駐車場は近い。
で、今日は探索が目的なので行き帰り、できるだけ違う道を歩きたい。
ここには朝通った丸太で組んだ新しい階段と古い階段が並行している。どうせ駐車場で交わるはずだから帰りは古い階段を歩いてみよう。


マユミの木


ズミもある。


この道はほとんど使われていないらしい。
丸太の階段は土が流されて空洞になり、朽ちるに任せている。


おっと、牧柵に出てしまった。
よく見ると道は柵に沿って右に続いている。その行く先が方寒山だ。
ロッジと駐車場は目の前に見えるのだが、そこへ行く道がない。


藪の中を柵に沿って左へ回り込んでようやく駐車場に到着。
横根高原の探索はこれで終わりにして、帰りに日光修験の跡が残る巴の宿に寄ってみよう。



番外
横根高原の北に室町時代、日光を舞台に四季を通して盛んに修験がおこなわれその跡が残っている。
巴の宿は厳冬期にひと月にわたって修験がおこなわれた場所でだが、今は車のアクセスもよく、その跡をだれもが容易に見ることができる。
日光修験、巴の宿について詳しいことは随想社・池田正夫著「日光修験 三峰五禅頂の道」でどうぞ。

巴の宿は県道58号線の古峯ヶ原高原入口辺り(標高1144)に車を置き、古峯ヶ原湿原に沿って南下したところにある。


現在は古峯神社の禊(みそぎ)所として使われている、と案内板の説明にある。
鳥居の奥が広場になっていることから、そこに建物があって修行僧の寝食の場にしていたのではないだろうか。


広場の隅。御神木と思われる大木の脇に石の祠があった。


流れの畔に立つ獅子に抱かれた観音様。
この場合は獅子に食われそうな観音様というのでは夢がない。獅子に守られていると解釈するべきなんでしょうね。