初ピッケルのOさんと赤薙山、丸山を登る。絶景に大満足の山ガールとオジサンであった。

2016年3月17日(木) 天候:快晴

9日の夜半から断続的に降った雪は霧降高原の麓で25センチに達し、冬に逆戻りしたかのような光景を見せたが千メートルを超える山ではどうなんだろう。40~50センチになっているのだろうか。

2月のスノーシューツアーは1月に降った雪が残っていたからできたようなもので、3月になって雪解けが急速に進み、標高が低いところでは地肌が見えるようになってしまった。一度、地肌が見えてしまうと太陽からの熱の吸収を受けて地表面の熱は高く、雪が積もってもすぐに解ける。
でも根雪が残っている山であれば、恵みの雪になったはずだ。スノーシューは望めないとしてもアイゼンあるいはチェーンスパイクで遊べる、そんな期待を抱いている。
実際、昨日はチェーンスパイクでおとぎの森コースを抜けて山王帽子山に登ったのだが、スノーシューの方がよかったかな、という場面になんどか遭遇した。

今日、目指すのは日光連山の中でもっとも標高が低い赤薙山、2010メートルだ。
赤薙山自体は女峰山への通過点に過ぎないマイナーな山で、ここを目的に訪れる人はあまりいない。
しかし、冬は安全な雪山登山が体験できる山として、管理人が好んで登る山である。ただし、「安全」といってもそれなりの装備でなおかつ、深い雪の上を歩ける体力と経験を備えていることが前提だ。足を滑らすと300メートル下の谷へノンストップで落ちるという怖い場所もあるし、、、

今日、管理人がガイドしたのは昨年スノーシューツアーに初めて参加して、雪の上を歩く独特な感触と雄大な景色に魅せられて昨シーズンだけで6回も参加したOさん。このブログにも度々登場するので“Oさん”で検索してみると、そのプロフィールがわかると思う。

それはさておいて、赤薙山に登ることになったのは安全な雪山だからという理由の他に、Oさんにとって憧れの、女峰山への登竜門になっているからだ。
さきほど、赤薙山は女峰山への通過点と書いたが、距離が長くアップダウンの厳しい女峰山に登るためにはどうしても赤薙山を経験しておかなくてはならない。女峰山は赤薙山からさらに長い長い稜線を歩いて5座目の、歩き始めて7.4キロの位置だ。赤薙山は歩き始めて2.7キロに位置なので女峰山までの半分に満たないが、標高で言えば670メートルも登る。女峰山までまだ4.7キロもあるが標高差は470メートルなので頑張ればなんとかなる、とここは精神論で逃げてしまうが、女峰山に照準を合わせて体力を調整し、その体力を十二分に引き出すために気力をその日、一日に集中するように徐々に高めていくのだ。

大酒を飲むのは3日前までにしておき、それから当日まで食事に気をつけストレッチをおこない、自宅の階段を上り下りしながら山を登っているイメージトレーニングをおこない、思考をプラスに持っていく。もちろん、携行する装備はリストに基づいて整えておくのは言うまでもないが、パッキングは経験上、前日の夜に行う方が気力が高まる。
まっ、その人の自由というもんだけどw

あっ、ずいぶん横道に逸れてしまったけれど、女峰山は難易度が高いのでいきなり挑戦するのではなく、感触を確かめるためにも赤薙山は登っておくことを管理人はお勧めしている。その意味で今回、Oさんが赤薙山を希望したのは正しいと考えている。
エベレストに登るのに標高5千メートル辺りにベースキャンプを設けて数日間、滞在して高度順応に努める行動を2483メートルの女峰山をエベレストに例えれば、赤薙山はベースキャンプに最適、、、そんなわけないか(^^)


09:24
よくぞここまで晴れてくれた。
関東平野は雲海におおわれているが赤薙山の登山口となる霧降高原の上空は真っ青だ。

ここは今週、20センチの積雪が2回あったと聞いた。天空回廊は一度は解けてしまったが今週の雪で再び、厚い雪に覆われた。
靴のままでは滑って危険なのでチェーンスパイクを装着する。

小丸山へと続く天空回廊は1445段。
階段だけで標高を240メートルも上るから、バテないように焦らずゆっくり登っていく。
雪が深くなっている場所があることを想定し、スノーシューも持参した。1キロ強、重くなるが仕方がない。

まず目指すのが正面に見える小丸山。天空回廊の最終段だ。

天空回廊は700段目から手すりつきに変わる。
700段から上は傾斜がきつくなるため危険防止のためだ。雪が分厚く積もっているので足に力が入らず、手すりにつかまって身体を引き上げていく。かなりの重労働。

なんとか最終段まで上り終え、振り向くと先ほどの筑波山はもちろんのこと高原山や那須連峰、会津駒が見渡せる。絶景なり!!

10:08
管理人が小丸山と称している標高1601メートル地点。ここから赤薙山への稜線が始まる。
稜線の向こう、最初に見えるピークが赤薙山だ。
赤薙山山頂は樹林帯の中なので展望は良くない。しかし、この稜線からの眺めがサイコーなんである。

小丸山から右(北)にスノーシューツアーでよく利用する丸山が聳えている。でっかい山だ。

さて、稜線歩きの始まりだ。
雪は深い。足はくるぶし場所によっては膝下まで潜る。それによって身体のバランスを崩すことがある。この日、Oさんにはピッケルの使い方を覚えてもらうことにした。
雪が積もった急斜面の上り下りはポール(ストック)など役に立たないからだ。

焼石金剛に近づくと大小の石や岩が目立ってくる。

ケルンに石を積むOさん。

11:00
ここが焼石金剛。
名前の由来は定かではないが昔、沈む夕日に照らされた岩が赤く染まり、それがあたかも焼石のように見えたのではないかと想像している。
と、文献をあさったわけではないから違っているかもわからないが、このような想像というのは自由にしていいものなのだ。

さて、難所のやせ尾根の始まりだ。
今はもう雪が少ないから難所とは言えないが、大量の雪が降るとやせ尾根は三角屋根となり、どこが道なのかわからなくなる。
尾根の南側(写真の左側)には大きな雪庇がつくられて、そこに足を踏み込むと雪とともに300メートル下の谷に一気に落ちる。

あっ、雪庇はまだ残っている。
写真手前の少し段差がある部分だ。そして、斜面には1本の木もなく、見事に谷底へと続いている。見ているだけでも引き込まれそうになる。おぉ、こわっ!

それにしても雲ひとつない青空。いや、飛行機雲があった(^^)
先月21日に予定していたのが悪天候で中止、次に29日に変更したがこれも雨で中止となり今日を迎えた。
この青空と春の陽気はOさんへの大きなプレゼントになった。

ここで赤薙山と女峰山の分岐となる。
この標識は往きにも帰りにも通るから見落としてはならない。
特に下りでこの標識の前を通らないということは違う尾根に乗っている可能性が高く危険だ。

赤薙山直下は樹林帯の中の急傾斜なのでピッケルを覚えるには最適だ。

傾斜が緩くなると間もなく山頂。

11:57
やったー、日光連山の中ではもっとも低いとはいえ、2千メートル峰に登頂。
立派な冬山登山である。
三角点にタッチするOさん。

鳥居の先は崖になっていてそこにはロープが張ってある。そこから男体山と女峰山が望める。

 

春模様の天候になることを想定し、専用のティーバッグと牛乳で本格的なチャイをつくって差し上げた。Oさんへの登頂のプレゼント(のつもり)。

山頂に30分ほど滞在しただろうか、それでも当初予定よりも早かったが下山にかかった。

木の根が露出したいやらしいルートは上りでも下りでも避けられない。
チェーンスパイクを履いているから安全に下れるが、靴のままだと間違いなく滑る。

やせ尾根の始まりから関東平野を眺める。
奥日光だと山頂からでしかこのような展望は得られないが赤薙山は稜線上、ずっとこの展望だ。
病みつきになること間違いなし。

13:20
再び焼石金剛。
時間は13時20分。計画通りだ。
このまま朝来た道を進めば1時間で下山できる。

行く手左斜めに丸山が見える。
天空回廊から見る丸山は大きいがここからだと眼下に小さく見える。
登り慣れた丸山だ。雪はまだ充分ある。
よしっ、あそこへ行こうか、Oさん?

丸山に向かって緩やかな斜面を下っていく。
雪は適度に締まっている。時折、踏み抜いてしまうことがあるが、歩き易い。

問題はこの斜面だ。普段、山を歩いている人であっても30度の斜面を下るにはそれなりに勇気がいる。
下りが苦手というOさんには苦痛以外のなにものでもなかったはずだが、ピッケルにも慣れたのか転倒することなく降りることができた。

焼石金剛から急斜面を降りたら次に丸山への急な登りだ。
あの青空に向かって。

14:26
無事に到着。
一日で赤薙山と丸山、2座登頂だ。しかも、完璧な雪山。よくやった!

振り返って赤薙山を見上げる。
中央のピークが赤薙山であそこからやせ尾根へ降り、次に稜線から外れて急斜面を降りてここまでやってきた。凄いことだ。

丸山山頂を降りる際、1カ所だけ危険なトラバースをする。ほんの数メートルだが怖い人には怖い。
すでにピッケルの扱いに慣れたOさんは、管理人が見ても安心できるほど安定した姿勢でトラバースしながら下っていく。

小丸山からは天空回廊を降りていくが、階段上の雪は解け、チェーンスパイクはすでに外した。

15:43
丸一日、青空とプラス気温という絶好の日和となりOさん念願の赤薙山雪山登山、オマケで丸山登山が終った。お疲れ様でした。
次回はぜひ女峰山に行きましょう。