皇海山の下見で庚申山まで。息絶え絶えとはこのことをいうのであろうw

2015年7月14日(火) 銀山平~一の鳥居~庚申山~お山巡ルート~一の鳥居~銀山平

未踏の山で、どうしても登ってみたい山として錫ヶ岳と皇海山がある。錫ヶ岳は2012年7月に下見で白桧岳まで行き、無理すれば日帰りで往復できるのではないかという感触がつかめた。

次は皇海山の感触を、ということになるのだが管理人がこれまで足が向かなかったのは自宅から駐車場がある銀山平まで、湯元に行くのと同じ距離を走らなくてはならないのと、駐車場から登山口まで林道を延々、4キロも歩かなくてはならないためだ。

山は少しくらい傾斜が厳しいほうが歩き甲斐があって楽しいが、登山靴でアスファルトや砂利の林道を歩くのは山道よりも疲れるのだよ。だからできれば避けたい。そしてこれまで避けてきた。
とはいえ、奥日光の山はおおかた登ってしまったし、古賀志山ばかりだとブログのネタとして新鮮味がなくなるし(^^)、このへんでそろそろ目先を変えてみよう。そう考えてかねてから登ってみたい山のひとつであった皇海山を目指して、下見を目的に庚申山に登ってみることにした。

皇海山は日光市内に位置するが山域は足尾だ。そして庚申山といえば貴重種(絶滅危惧Ⅱ類だそうだ)のコウシンソウが自生する国の天然記念物に指定されている。植物がではなく、地域そのものが天然記念物に指定されている、ということがコウシンソウを調べる過程でわかったのだが恥ずかしながら知らなかった。ふ~ん、そういうのもあるんですねぇ。

コウシンソウは「日光火山群のみに分布する稀少な日本の固有種です。生息環境は標高1,500〜2,300mのほぼ垂直に切り立った岩壁で、」と環境省のウェブサイトにあるから、庚申山は岩山であることが想像できる。
岩山といえば古賀志山が頭に浮かぶが日光にも古賀志山に似た岩山があるとすれば、怖い物好きの管理人にとってそれは嬉しい。

では、さっそく行ってみることにするが予報によると真夏並みの日差しになるそうだ。水分はいつもより多めに持参するが挙げてみると500ミリのスポーツドリンク2本、プラティパスに入れた水道水700ミリ、魔法瓶に入れた氷と水900ミリ、それと甘いものがほしいときのために缶入り珈琲。これだけで容器を含め3キロを越える。
それと悪路に備えてチェーンスパイクとポールも持参し、これらが負荷となりはしないか心配だったが現実のものとなった。


DSCF063806:40
登山口に至る林道なのだが国道から山道を6キロ走って、銀山平に到着。一般車はこの先通行止め。
車を置いてここからさらに登山口まで林道を4キロ歩かなくてはならない。


DSCF0640林道を歩き始めてすぐ、右手にこんな岩が出現。庚申山が岩山であることを認識した。


DSCF0644アスファルトはやがて砂利へと変わり歩きづらくなってきた。
林道のあちこちに落石注意の札がかかっているが、こんな光景を目にすると現実のものとして受けとめざるを得ない。


DSCF0652大きな石がひっくり返され草の根のようなものが露出している。
推測だがクマが餌を求めてやってきたのではないかと思う。


DSCF0655「天狗の投石」という、大小様々な石が堆積している斜面。
どういった現象なんでしょうね、これは。


DSCF066007:43
歩き始めて4キロ、林道の終点が「一の鳥居」。ここからが登山道になるのだがけっこう疲れた。
林道歩きを嫌っているからなおさらだ。


DSCF0667登山道は広い広葉樹林を登るようになっていてすぐ脇に「水ノ面沢=みずのつらさわ」が流れている。


DSCF067608:28
一の鳥居から1.7キロ、「鏡岩」に着いた。
車を置いた銀山平からここまで5.7キロ歩いたが、足が重くて調子が出ない。
この先まだ長いので心配になってきた。


DSCF0678鏡岩にはなにやら言い伝えがあるようで、説明板を一字一句すべて読んでしまった。
ふむふむ、泣かせる話ではないか。


DSCF0680お次は「夫婦蛙岩」だ。
古賀志山にはユーモア溢れる名称があちこちに付けられているがこのルートも負けてはいない。夫婦蛙岩(めおとかえるいわ)とな。
なんとなく蛙に似てはいるが、、、


DSCF0682なるほど、こういうことだったのね(^^)


DSCF0684岩山にふさわしく、次から次へと大きな岩が待ち構えているが今度は「仁王門」だ。
大きな岩がふたつ、向かい合っていてその間を通り抜けて進むのだが、このふたつの岩を仁王様に見立てたのであろうか。


DSCF069509:22
猿田彦神社跡。ここでコースは二手に分かれる。
左は庚申山荘経由で山頂への近道、右はその倍の距離を歩いて山頂に達する「お山巡りのみち」。


DSCF0699うむ、なかなか面白そうな感じがするが、今日は庚申山の先、鋸山まで足を伸ばしたいと思っているので左へ近道をすることにした。


DSCF070409:32
庚申山荘だ。
ガイドブックの写真で見て知っているが、避難小屋と違ってなかなか立派な建物だ。
銀山平の国民宿舎が管理しているがハイシーズン以外、管理人は常駐していないそうだ。


DSCF0708今日は下見なのでこの山荘の廻りもつぶさに点検してみた。
建物の裏も広い敷地になっていてクリンソウの小群落があった。


DSCF0715おそらく山荘に引き込んでいるとみられる水場。


DSCF0718さて、先へ進もう。
サワギクだ。


DSCF0726ここまで鏡岩、蛙岩、仁王門という大きな岩を見てきたが、今度は岩の下をくぐり抜けたりする。


DSCF0734次は大きくせり出した岩の下を、頭をぶつけないように注意して歩く。


DSCF0741おぉ、階段というべきか梯子というべきか、いよいよ出てきたぞ。


DSCF0751岩壁にへばりつくように咲いていた花。遠目に、もしやコウシンソウかと期待して近づいてみたところ違った。
もっと近づきたい。しかしあと一歩で谷底(^^)


DSCF0754右側は急斜面、左側は深い谷となっていて滑落防止用のロープが取り付けられている。


DSCF0759クルマユリ


DSCF076810:36
「一ノ門」。
岩と岩の空間に乗っかった岩、その下にはすき間を塞ぐように岩が。まるで岩の積み木だね。


DSCF0771一ノ門を出るとすぐ、「お山巡りのみち」と合流する。
これからは一本道で庚申山へと向かう。


DSCF0772「大胎内」という巨岩。
地面とのすき間を産道に見立てたものなのだろうか。


DSCF0785岩場が終わり傾斜も緩くなってきた。間もなく山頂であることを予感させる。


S001079011:15
ほっ、山頂だ!
重装備に加えて予報通りの暑さでかなりバテてしまい、ここまでなんと4時間35分もかかった。
ここで時間をかけて昼メシを食べ、体力を回復させないと帰りが大変だ。
皇海山の下見に来たのでこの先の鋸山までを考えていたのだが、疲れが激しく断念。


DSCF0815山頂は廻りを木々に囲まれ展望はないが、数分先に展望地があると知り荷物をまとめていってみると、そこは目の前に皇海山がそびえ立ち、息をのむような絶景が得られる場所であった。
北に白根山が、北東には男体山が小さく見える。


鋸山・皇海山皇海山(右)と鋸山(左)。
近そうに見えるけど遠いなぁ、皇海山まで3時間はかかりそうだ。
こりゃぁ、日帰りは無理だ!!

山を特定したり写真を撮ったりしながら20分ほど費やしたので、ここで折り返して帰りを急ぐことにした。


DSCF0834ヤグルマソウ


DSCF0836カラマツソウ


DSCF084212:35
「お山巡りのみち」分岐まで戻ってきたのでここで往路とは別の道を歩くことにした。
道標の「猿田彦神社」の方だ。


DSCF0843なになに、初心者のかたはご遠慮くださいとな、オレのことかい?
行って考えることにしよう。


DSCF0852シモツケですね。


DSCF0854葉を赤く染めたミヤママタタビ


DSCF0856初心者ご遠慮くださいといいながら、こんな立派な橋がかかっている。


DSCF0857特定が難しいのですがたぶんアカショウマ


DSCF0864往路でも見かけた花をようやく間近で見ることができた。岩壁のすき間から生えている。足下は深い谷。左手で鎖につかまり右手だけで撮影。
帰宅して調べたところウチョウランであることが判明。


DSCF0871「お山巡りのみち」はハイカーを飽きさせない(^^)
コウシンソウやウチョウランが生育する場所もこのような切り立った岩壁だ。


DSCF0880庚申の岩戸


DSCF0889今度はユキワリソウだ。
そういえば女峰山の下山道でも見たな。あのときはサクラソウと言い間違えた記憶がある。


DSCF0905クルマユリはあちこちで見られた。
それにしてもコウシンソウには間に合わなかったが他の花をたくさん見ることができ、いい日だ。


DSCF091613:13
めがね岩
水の浸食作用によって岩に穴が空いたんだろうなぁ、自然の力というのはすごいもんだ。


DSCF0920お次は鉄製の連結梯子。
連結部分がぐらぐら揺れる。


DSCF0932両側が切り立った尾根。鎖があるから安心して歩けるものの、もしも無かったとすれば、、、


DSCF0934中央に見える薄紫の花はクガイソウ。その下にアカショウマ。
ここも近くに寄ることができない。


DSCF0938ツリガネニンジンに見えるが違うかな?
帰宅して調べたらイワシャジンだった。


DSCF0948傾斜が緩くなったので「お山巡りのみち」も終わりなのかと思いきや、、、


DSCF0949うはっ、今度は梯子の3連発だ。
後ろ向きで降りるべきか前を向いて降りるべきか迷ったが、試しに前を向いて降りてみた。
安全なのはもちろん、後ろ向きで。


DSCF0950ニガナ


DSCF0954シロヤシオ
花はとっくに終わっているがこの木の多さが目立つ。5月はいいだろうなぁ。
シロヤシオの花はこれ


DSCF096014:12
宇都宮大学の山荘だが使われている形跡はないような。


DSCF0980登山口の「一の鳥居」近くまで降りてきた。
飲み水はまだ十分、ザックの中にあるがこのような清流を見るとどうしても飲みたくなる。
美味い。


DSCF0985一の鳥居を出て林道を銀山平へと向かう途中、丸石澤を渡るが深い渓谷になっていて滝がいくつかある。


DSCF098716:15
お~、車が見えた。
それにしても疲れたなぁ。もうこれが限界。
日帰りで皇海山に登る夢は遠のいた気がする。


DSCF0989いつもならそのまま帰って自宅の風呂を使うところ、疲れも激しく運転する気力もありません。天然温泉で疲れを癒すことに。
ここは国民宿舎「かじか荘」、たぶん日光市営だと思う。


map登山口から庚申山まで9キロ、皇海山までまだ6.5キロもある。なかなか手強いぞ、皇海山は。

右下から延びている赤い線はGPSで記録したデータを再現したもの。国土地理院地図のコースとずれが生じているが長い間、地図が更新されていないのでその間に道の崩落などで実際に歩く道と違っているのであろうと思う。


altitude標高差1054メートル、累積標高はその1.7倍の1818メートルというのが庚申山だ。疲れるわけだわ。

☆☆
図2枚はカシミール3Dで作成した。


山行データ
2015年7月14日(火) 天候:晴れ

06:40銀山平~07:43一の鳥居~08:23鏡岩~09:22お山巡り分岐~09:32庚申山荘~10:36一ノ門~10:37お山巡り分岐~11:15庚申山~12:37お山巡り分岐~13:13めがね岩~14:12銀嶺山荘~14:39鏡岩~15:23一の鳥居~16:15銀山平(往復18キロ、休憩を含んで9時間35分)

皇海山を目標に下見で訪れたものの庚申山まででバテてしまい意気消沈している。その先の鋸山まで行っていたら帰りはどうなったかわからない。
理由として挙げられるのは初めて登る山ゆえ重装備になったこと、暑さがこたえたこと、嫌いな林道歩きで疲れたこと、二日続けて3時間しか寝ていないこと、前夜の飲酒であろうか。
もっとも、本番ではなにが起こるか分からないため、この程度の厳しい条件は覚悟の上で臨んだつもりだったのだがww

帰宅してからあれこれ調べるために写真を300枚以上、撮った。花を探して寄り道をしたのでこれらを除外すれば時間は2割ほど短縮できると思う。が、庚申山まででそこそこ疲れるのだからここからさらに皇海山までの6.5キロ、累積標高505メートルをどのようにすれば乗り切れるのか、大きな課題だ。
銀山平から往復30キロ、累積標高2324メートルを日帰りで歩き通せるのかどうか、不安は大きい。あと数回、庚申山に登ってコースに慣れる必要がありそうだ。

この山も古賀志山と同じように全体が岩陵で構成されている。ただし、古賀志山のように垂直に近い壁を鎖やロープを伝ってよじ登る必要はなく、きつい傾斜にはすべて梯子がかかっていて安全に登れる。
コースは地図にある正規の道だ。古賀志山のように地図に描かれていない道というのはないから、迷子になる心配はない。
ただし、路幅が狭かったり岩壁に沿って歩いたり、深く切れ込んだ谷沿いに歩いたりするので細心の注意が必要だ。鉄製の梯子は濡れていれば間違いなく滑るであろう。その梯子、いくつあったのか覚えていないくらいの数であった。

日光は栃木県の1/4の面積を占めるほど広いが、山歩きを目的に人が訪れるエリアは限られている。いわゆる日光連山そして、小田代ケ原と戦場ヶ原である。日光連山は2千メートル級の山ばかりだが道はしっかりしていて歩きやすく、ピークハントに最適だからであろう。
足尾も日光市であるが交通の便が悪く、マイカーがないと不自由だ。日本百名山の皇海山をひかえてはいるが、県外の人が登ろうとすれば麓の国民宿舎か庚申山荘に泊まらなくてはならない。そこまでしなくては登れないのであれば腰が引けてしまうであろうことは想像できる。

管理人はこの日、初めて庚申山に登ったが登り慣れた日光連山とは趣がまったく異なることに驚いた。こんな岩陵ばかりの山が日光にあったとは知らなかった。距離も長いし累積標高も大きくて登り甲斐があるし見所も多い。水がごうごうと流れる広葉樹林があり植物の種類も多い。じつに変化に富んだ面白い山であるというのが第一印象だ。
古賀志山と同じように病みつきになってしまいそうな山だ。