スノーシュー(を担いだ)ツアー最終日は社山へ。

2019年2月24日(日) 快晴

暖冬少雪の予報通り、スノーシューの季節になっても日光のフィールドには雪がなく、これならなんとかできる、と判断して開幕したのは例年よりも1ヶ月遅い今月10日だった。
それも2週間後の今日24日には幕を閉じなくてはならないという実に情けない結果となった。

降雪日数、降雪量ともに少ないのはここ数年の傾向で、世界的な異常気象が日光にも忍び寄っているのは間違いない。
日光は寒さだけは北海道や北日本に負けないが、特別、雪が多いというわけではない。日本海側の寒気や低気圧が群馬県を乗り越えることで初めて雪が積もる。
したがって寒気や低気圧の勢力が弱いと、雪は群馬県どまりで、日光を覆うには至らない。

管理人がスノーシューのガイドを務めるようになって今シーズンで21年目だが、これほど酷い雪不足というのを経験したことがない。
1月におけるツアーの実施回数を見ると、ピークだった2015年を境に2016年以後、減少している。2015年までは1月は雪が降る日数、降雪量ともに多かったのだ。
それが1月になっても降らなかったり、せっかく積もったのに雨や高温で溶けてしまったりといった、これまでにない気象に変化し、今年で4年になる。
1月25日のブログに掲載したデータ(1月の開催日数)を再掲してみよう。
  2019年 0回
  2018年 3回
  2017年 6回
  2016年 4回
  2015年 15回
  2014年 7回
  2013年 9回
  2012年 10回

地球規模での異常気象の一端ともいえるのだろうが心配なのは今後、これが普通になってしまわないだろうかということ。
雨の降らない梅雨、夕立のない夏、雨の冬。
こんなおかしな気候が普通になったらスノーシューができないという個人的な事情だけでなく、人の生活や農業、産業にまで計り知れない影響が現れること必至だ。
こんな異常気象から一刻も早く、元の正常な気候に戻ってほしいと切に願っている。

さて、嘆き悲しみ憂いている場合ではない。
当初、今月2日と3日でツアーを組んだものの、雪がなくて日延べしてもらったお客さんがいる。2013年から通ってくれている常連さんである。その実施日が昨日と今日だ。
雪は少ないながらも、2月中旬になればスノーシューには十分な量の雪になるとの想定で日程をずらしたのだが、それさえも読みが甘かった。相変わらず降らないのだ。

昨日23日はこれまで下見で見て回った中でもっとも雪の量が多かった(例年よりははるかに少ない)刈込湖にしたが、2日続けてとなると場所に困る。
相談の結果、スノーシューができないのであればチェーンスパイクによる登山でもいいということになった。
場所は光徳の北に位置して冬でも安全に登れる山王帽子山を第一候補にしたのだが、、、、

二荒山神社の大鳥居付近から眺める「社山(しゃざん)」。
いろは坂を上りきって中禅寺湖と出合うと必ず目にする光景である。
昨日は一見のお客さんと常連さんを刈込湖に案内したが、通りすがりに見た社山の美しさに目を奪われた。
直線的で、ほれぼれするほどいい形をしている。
そうか、明日は山王帽子山ではなく、社山に登るという選択肢もありだな、とそのとき思った。
社山は標高2千メートルに満たないが標高差は560メートル、20度以上の傾斜が連続する、侮れない山である。
雪の量はここからではわからないが戦場ヶ原よりも南に位置しているし、今年の状況から察して多くはないはずだ。お客さんの安全を考えれば雪が少ないのは好材料になる。
それに山頂に着くまで展望のない山王帽子山に比べると、絶えず男体山と中禅寺湖を眺めながら歩くことができる。
冬の日光を10数回、経験している常連さんとはいえ満足度は高いだろう。
常連さんに提案したら山王帽子山をやめて社山にすることが一瞬で決まった。
それはそうだよな、このような景色を見てしまったら(笑)


歌ヶ浜駐車場から見る日光白根山。
白根山は日光市と群馬県の境界線にあって、日本海側の気象の影響を大きく受けるが、ご多分にもれず今年は雪が少ないように見える。


同じく男体山の眺め。
雪がつきやすい「薙」にも雪はないように見える。


歌ヶ浜に車を置き、湖畔に沿った道を歩いて行くと、「狸窪」に出る。「たぬきくぼ」とは言わない。狸と書いて「むじな」と読ませる。
昔はタヌキもアナグマもハクビシンもいっしょくたくにムジナと呼んでいたらしく、実際にはタヌキ(狸)と認識していてもムジナ、アナグマ(穴熊)と認識していてもムジナと区別なく呼び、その名残ではないかと言われている。
で、ここが1つ目の社山登山口。
ここから半月峠に上り阿世潟峠を経由しても社山へは行ける。
が、今日のルートに設定した阿世潟から上るのと比べると1時間以上、余計にかかる。
無雪期でなおかつ日没が遅い時期でなおかつ健脚家にお勧め。


阿世潟までの湖畔沿いの道は快適そのもので絶えず男体山と中禅寺湖を見ながら歩ける。
山に登らなくても湖畔の散策だけでも楽しめる。


歩き始めて1時間10分で「阿世潟(あせがた)」着。
ここが社山への一般的な登山口となっている。
ここからが傾斜となるためチェーンスパイクを装着。
ちなみに、昔はここをキャンプ場にしていたらしいが現在、その面影はない。


足下を見ながらチェーンスパイクを装着しているといつの間にか雌のシカが現れ、ぐいぐい近づいてきた。
人によって餌付けされてしまったのかもわからない。まったく恐れる様子はなく悠然と枯れ葉を食っている。


緩やかな、しかし所々アイスバーンと化した斜面を気をつけて歩き阿世潟峠に到着。
「峠」とは、ピークとピークの間の鞍部、山道が混じり合う地点などと説明されるが、この画像がまさにそれで、道標のある尾根を左へ行くと半月山、右が社山。尾根を突っ切り南へ向かうと足尾に抜けられる(管理人は未踏)。
昔は日光と足尾を結ぶ交易の道として利用されていたのではないかと思う。


社山への尾根は開放的で美しい。
これなら誰の目にも快適なトレッキングを楽しめるように見える。が、、、


そうはいかない。
傾斜が緩やかなのは初めのうちだけで、すぐに急斜面に転じ息が弾んでくる。
平均斜度は20度前後、きついところは30度くらいある。
救いは尾根の左右に大展望が広がっていること。


尾根の右(北)には男体山と中禅寺湖が一望できる。そして、ここはまだ標高1600メートル付近なのに男体山がまるで同じ高さに見える。
この景色が山頂まで続くのである。


山頂まであと数分。山頂はこのコメツガ林の中にある。
今日の参加者は2012年から続けて来てくれているDさんとSさん。ふたりとも健脚である。
今回もスノーシューで歩くのを楽しみに来てくれたわけだが、冒頭に書いたとおりの状況なので急遽、残雪登山に切り替えた次第だ。

画像でおわかりの通り、雪が深いこともあり得ることを想定(願望)しスノーシューをザックにくくりつけて歩いている。
実際にはスノーシューを履く機会はなく、往復ともチェーンスパイクで歩いた。
雪が溶けたところは泥濘になっていてチェーンスパイクは正解だった。


う~ん、いい笑顔ですね~!


常連さんとのツアーではランチにも工夫(?)を凝らす。


たっぷり休んだ。
山頂の北側はコメツガが茂っていて視界はない。
山頂に来るまでなんども立ち止まって眺めた男体山と中禅寺湖だが、帰り道でも立ち止まっては3人して魅入った。


振り返ると白根山と五色山、前白根山が、、、
その手前を横切る白いベルトと化した尾根が気になってしかたがない。
あそこは歩けるのだろうか?
帰ったら調べてみよう。


左に絶えず男体山と中禅寺湖を見ながら阿世潟峠へ。


峠から湖畔へは緩やかな下りで30分。
天候は朝と変わらず快晴だった。


コースは単純でしかもピストンなので、趣向を変えて地図の代わりにカシミール3Dで作成した俯瞰図を載せておく。
なんかおかしいなと思ったら湖が草原状に描かれていた(笑)

ちなみに、タイトルのカッコ内「を担いで」とは、全開催5日のうち3日間、スノーシューを担いでチェーンスパイクで歩いたという意味を含んでいる。

この冬のスノーシューツアーはこれにてお終いとし、これからは残雪登山そして無雪期登山のツアーに切り替えますので、皆さまのご参加をお待ちしております。

メモ
・歩行距離:13.8キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:6時間30分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:794メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)