イワタニのファンヒーター「風暖=かぜだん」を試す。


車中泊の旅、第2回

これまでの車中泊車のメインだったセレナは宿泊客の送迎車を兼ねているため、最大のネックは快適化のための改造が出来なかったことだ。
山に行く直前に荷物を積み込み、帰宅したら荷物とゴミを下ろして車内を清掃するというのが常のことで、これがかなり面倒な仕事だった。
一応、就寝の際は完全にフラットになるよう工夫を凝らしたものの、その気になって窓から車内を覗き込めば、口を大きく開けヨダレをたらして眠る管理人の姿が目に入ったことであろう(笑)。

そんな不自由、ノーガードな車中泊生活から脱却し、車中泊をより快適にしようと考えて軽貨物車エブリイを入手、改造に着手して間もなく一年になる。
改造に当たって心がけたのは次の通りである。
・快適な睡眠が得られること。
・車内で調理と食事が不自由なくできること。
・車内で歯磨きや着替えが不自由なくできること。
・雨で外に出られなくても車内で苦痛を感じずに過ごせること。
・ベッドに寝転がって読書できること。
・荷物を積みっぱなしにできること。
すなわち、水を含めて食料さえあれば車内ですべてが完結できる(場合によってはトイレも)ことを目指したつもりである。

ひと通りの改造を終えて実践に使ってみたのが今年9月13日から17日にかけて3泊4日の上高地散策と北陸ドライブであった。
時節柄、暑さは遠のきまた、寒くはなく、上に羅列した車中泊車としての基本は十分に達していることを身をもって体験した。
ただし、これからの季節に車内で快適に、なに不自由なく過ごすには不可欠な条件がある。
それは「暖房」である。

車中泊は登山に要する時間の2倍という、長い時間を車内で過ごさなくてはならないわけであり、そのための寒さ対策はとても重要である。

そこで初冬、地域によっては本格的な冬を迎えて、管理人が施す寒さ対策が有効かどうかを実践で試すべく季節を変えまた、9月よりも一日長い4泊5日の車中泊ドライブに出かけることにした。

以下、防寒対策と日程ごとのドライブ記録および、車中泊した道の駅、立ち寄った道の駅を紹介したい。


2021年11月27日(土) 走行距離:271KM
日光~(121号線)~芦ノ牧温泉~左下り観音~(磐越道)~JR弥彦駅近くの道の駅・国上

日光から国道121号線を北上し芦ノ牧温泉で県道23号線に入って会津美里町の「左下り観音=さくだりかんのん」を目指した。
道の駅に立ち寄るたびに観光パンフレットを手に入れては登山のついでに風情ある寺社や名跡に立ち寄るようにしているが、初日は巨大な岩盤を切り開いて建てられたという三層構造の観音堂を訪ねるのが目的だった。

三十三観音巡り・21番札所「左下り観音」

カーナビに従って県道23号線を走ると迷うことなく「左下り観音」に到着した。
参道の入口に数台駐まれる駐車場があって、そこから歩き始めようとすると、参道の行き止まりにも駐車場があることがわかり、再び車に乗り込み走らせた。
参道は登山道に等しいほどの急傾斜で、エブリイを4駆に切り替えエンジンをグオングオン言わせながら上がっていった。

参道行き止まりの駐車場から徒歩5分のところに目指す観音堂はあった。
観光名所ではないらしく、訪れたのは管理人ひとりだけだった。
木材剥き出しの建物は時代を感じさせる重厚さがある。
三層目の本堂には入ることができ、眺めがいい。
修験道と関わりがあることが説明板で知った。


説明板がこの他にもあるがこちらの方が詳しく書かれている。
が、別の説明板と内容が微妙に違っていて混乱するがまぁいいか。歴史の勉強に来たのではないからね。


翌朝の道の駅・国上

左下り観音からは磐越道・新鶴スマートICから乗って一気に燕市にある道の駅「国上=くがみ」を目指して車をかっ飛ばした(制限速度+10キロ未満で)。
今回の旅の最終目的地を能登半島の見附島にしたのでできるだけ今日中に日本海近くに達したかったのである。事前の調べでは日本海に近くまた、温泉が併設されている道の駅としてここが最適だと思ったのだ。
磐越道のインターで下りてガソリンを補給した際にもらったレシートには「巻インターSS(※)」と表記されていたのでそこで磐越道を下りたはずだ。

その日の宿泊地とする道の駅に温泉が併設されているのはとても魅力的だ。
しかし、温泉施設というのは足湯のことであった。
そんな馬鹿な、詐欺ではないか、とガイドブックを恨んだがそれは管理人の早とちりだった。
陽が落ちて薄暗い中着いたため、温泉の建物の存在に気がつかなかったのだ。
温泉は駐車場から傾斜を上がり少し離れた場所にあることが翌朝の散歩でわかった。
夜は21時まで営業していて到着時には十分入れる時間帯であった。
残念なことをしたが、それを差し引いてもここは十分快適であった。
※あらためて地図で巻インターを調べたがその名称のインターは存在しない。そこでGPSのログを地図上に投影してみると下車したのは「巻潟東インター」であった。


道の駅に到着する前、晩飯を調達するため磐越道・巻潟東インターを出てガソリンを給油した際に近くのスーパーの場所を尋ねた。とても親切に教えてくれた。
どこのスーパーにもあるにぎり寿司とママカリ、レタスサラダを買った。
にぎり寿司のネタは新鮮で厚みがあり、さすが近くに漁港を控えた地元のスーパー(ウオロク)だけはあると思えた。
晩酌のアルコールは同じスーパーで仕入れた箱入りの焼酎。
卓上ガスコンロで湯を沸かし、焼酎にポッカレモンをたっぷり注いだお湯割りが食欲を増した。


福島県に雪をもたらせた今日27日の夜は冷え込みそうだ。
暖房は必須である。
オートキャンパーや車中泊者にとって、テント内や車内での暖房についてそれぞれ試行錯誤している様子がYouTubeなどを観ているとよくわかる。
管理人は迷わずこれ(画像の)にした。
カセットガスを燃料とするイワタニの「風暖=かぜだん」である。
カセットガスを使った小型ストーブはいくつもあって選択に迷うところだが、「風暖」がユニークなところは電気を使っていないのに温風が出ることだ。
それによって熱の対流が起きるから車内全体が温まる。
この方式は他のガスストーブにはないくらい効率が良い。
風が出るメカニズムは同社のホームページに詳しく載っているのでここでは説明しないが、簡単に説明するとガス火の熱で発電した電力でファンを回す仕組みになっている。とにかく暖かい。
管理人は常に「弱」で使っているがそれでも狭い軽貨物の空間を温めるには十分すぎる熱量で、点火して5分もすると車内は25度に達し、さらに上昇を続ける。熱すぎて消火しなくてはならないほどだ。
それと、これもメカニズムがよくわからないのだが、一酸化炭素の放出が微量なのだ。
湯を沸かすのに使っている卓上ガスコンロだと換気扇を回しておかないとすぐ一酸化炭素チェッカーのアラームが鳴ってしまうのに、このストーブは平気なのだ。
どうした原理なのか不思議である。

「風暖」の仕様の一部
発生出力:弱で1290kcal(1.5KW)
燃焼時間:弱で138分(消火→点火を繰り返せばもっと長く使えるはず。)

深夜2時ごろだろうか、人の声がするので目を覚ました。
頭がハッキリするに連れ、それは複数人の若者の声であった。
そういえば、到着するまでの間、田園地帯を走ったのだが、住宅も数多くあった。週末の深夜ということもあって近くに住む20代前半の若者がここを待ち合わせ場所として参集し、これから集団(その規模までは知り得ないが)で走りに行くところなのであろう。

こういう状況での対応は難しい。
迷惑を被っているのは管理人なのだが騒いでいる若者はこの地に生まれ育ち、道の駅が出来る前はこの場所(おそらく空き地だったであろう)を利用してきた人たちなのである。
彼らにとって管理人はよそ者、県外者であり歓迎されざる者なのであろう。
この場所を優先的に利用できるのは彼らなのかも知れない。


翌朝見つけた温泉施設。

駐車場から坂道を上がった場所に温泉施設はあった。
朝風呂でもと思ったが10時オープンなので到底無理。
次回のお楽しみとしておこう。