この冬、二度目の雲竜瀑は滝壺まで行ってみた。林道のショートカットも。

2019年1月22日(火) 晴れ

ちょうど1週間前、管理人は初めて冬の雲竜渓谷に踏み入り、凍った雲竜瀑をクビが痛くなるほどのけぞって見上げた。
実は管理人、いつの頃からか頸椎にヘルニアができていて、首を後に傾けると神経が圧迫されて左上半身に痛みが走るようになった。医者からはそういう動作は避けるようにと強く言われているのだがこのときばかりは仕方がなかった。そういう姿勢をとらなければ落差180メートルの雲竜瀑は視野に入らないのだよ。

まっ、そんなことはどうでもいいとして、2週続けて通ったのには理由がある。
雲竜瀑へ行くには林道入口のゲートを出発して雲竜瀑入口の階段まで、雲竜渓谷に沿ったアスファルトの林道を6キロも歩かなくてはならない。これが雲竜瀑見学でもっとも大きな力仕事といえる。
階段を下りて雲竜渓谷に入れば30分もかからずに雲竜瀑直下に着くから、林道歩きがどれほど大きな割合を占めているかがわかるというものだ。
それを実際の距離で示すと、
・ゲート~階段:約6キロメートル(林道歩き)
・階段~雲竜瀑:約1キロメートル(渓谷歩き)
といった具合だ。
病院の待合室で1時間も待ってようやく自分の番が回ってきたものの診察は5分で終わってしまったという笑い話があるが、それと似てない?

年とって体力の落ちた管理人など林道を歩き終えるとぐったりし、渓谷はふらつきながら歩く始末だ。そんな事情があるものだから林道歩きにおける体力の消耗をできるだけ抑え、余裕をもって渓谷歩きを楽しみたいと思っているのだ。
地理院地図(最後に掲載)を見るとわかるが、林道は工事用の車を通すことを目的に造られている。したがって傾斜が急な斜面の場合だと車でも上って行けるようにくねくねとつづら折りの設計となる。その分、距離は長くなるが車であればそんなことは問題ではない。
だが、人が歩くにはつづら折りの道は厳しい。
傾斜と距離の長さは人を苦しめる。

つづら折りを回避して距離を短くしたい、これは登山者の心理として共通しているはずだ。
管理人も、
   どんな危険を冒してでも距離を短縮したい。
   どれほど疲れるかわからないが距離を短縮したい。
こうなるともはや、体力を温存するためにつづら折りを回避するという当初の目的などどうでもよくなって、「つづら折りを回避する」ことが目的になってしまうといった主客転倒の図といえる。登山者一般の心理とはずいぶん違うかもわからない、管理人の場合。

さて、そのつづら折りは2箇所ある。
ひとつはゲートを入ると間もなく始まり、稲荷川(日向ダム)展望台までの2.5キロ。もうひとつは林道が渓谷を流れる沢にもっとも近づく「洞門岩」道標から階段までの1.7キロである。つづら折りだけで4.2キロと、林道全体の7割を占める。
そのどちらか、あるいは両方を回避できれば楽になるに違いない! 管理人はそう考えた。
さあ、つづら折りの林道はショートカットできるのかそして、体力は本当に温存できるのでしょうか?

それにしてもだ。
滝は雪の有無にかかわらず、気温が下がれば凍るというのがありがたい。
管理人のこの時期の仕事はスノーシューのガイドなので雪がなくてはお手上げというものだ。
今年は今日に至るまでフィールドに雪がまったくないという異常な事態である。十分、積もってスノーシューができるようになるまで、せいぜい他の楽しみを探し出すしかない今日この頃なのである。

参考
先週(15日)の雲竜瀑→こちら

メモ
・歩行距離:19.2キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:7時間34分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1765メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

砂防堰堤群入口平日の早朝ということもあってゲート前の駐車スペースは十分、空いてるはずなのだが、ゲート1.2キロ手前のここに車を駐めて歩くことにした。
いや待て、今日は長い林道をショートカットして体力を温存する目的なのに、ゲートのずっと手前から歩き始めようという、本人にも解せない行動をとる管理人。なにを考えているんだか(笑)


ゲートを抜けるここを抜けると稲荷川の右岸に出られる。


稲荷川右岸には遊歩道が敷設されていて大正時代に造られた旧い堰堤群が見られる。
見るのにそれほど長い時間がかかるわけではなくこれを見るためにだけ来るのも時間の無駄だし、何かのついでにと思った次第。


旧い堰堤群雲竜渓谷の下流にあたる稲荷川は昔、「暴れ川」と呼ばれ、なんども洪水を起こしては下流に大きな被害をもたらせた。
そのため大正時代から堰堤が造られるようになり現在、新旧あわせて10数基の堰堤がかかっている。
河川を管理する国交省は右岸の道を遊歩道として整備して開放し、ツーデーウォークやトレランのコースとしても利用されている。


振り返ると外山振り返ると「外山=とやま」の向こうの太陽がまぶしい。


第6砂防堰堤堂々たる風格の大正11年竣工の第6砂防堰堤。
有形文化財に登録されている。


左からくる道と合流旧い堰堤群が終わるとここで左からくる道と合流する。
左は林道のゲートである。
地理院地図によるとこの道は軽車道として描かれていて、日向ダムへと続いている。堰堤の工事に使われた工事用の林道なのであろう。
日向ダムが完成したのは1982年(昭和57年)だから37年前のこと。道の荒れ具合が心配だが右岸のつづら折りを回避するためにも行ってみよう。


第10砂防堰堤道はここで行き止まりとなり巨大な橋がかかっていた。
いや、橋ではない、これも堰堤なのだ。
しかし堰堤には珍しく対岸に渡れるようになっている。
すぐ脇にある礎を見ると、平成20年に完成した第10砂防堰堤となっていた。


対岸に渡るとそこにも道があり、右(東)へ行くと稲荷川の左岸沿いに萩垣面(はんがきめん)に出られる。
日向ダムへ行くには左への道を辿る。


パイプで組まれた土砂留めお~、これも大きな堰堤だ。
コンクリートの擁壁に挟まれた水の通路に鉄のパイプで組まれた土砂留めが置かれている。
稲荷川には大正時代に造られた石積みの堰堤や昭和になって造られたコンクリート製の堰堤、近年になって造られた上を歩ける堰堤、そして鉄パイプの堰堤といった、構造の異なる数種類の堰堤がかかっていて興味をそそられる。


日向ダム道はここで尽き、目の前に巨大な堰堤が現れた。
これが日向ダムである。


デカイ、とてもデカイ!
まるで黒四ダムだ(笑)
さて、これで一番目のつづら折りは回避できたことになる。
問題はどうやってこの堰堤に上がるかだ。


右斜面が上れそうなので進んだところトラロープがかかっていて、間違いなく利用されているルートであることがわかった。


日向ダム堰堤ロープは古いが堰堤の真下までつながっていた。
最後のロープは斜面を横切るようについている。足を滑らさないよう注意して進むとそこが堰堤の上であった。
これからしばらくの間、堰堤上の河原を歩く。


河原を遡上日向ダムの河原を遡上していくと林道から河原へ下りる誘導路と合流する。
先週、管理人は林道からこの河原へ下りたのでその分、ショートカットできたことになる。


堰堤で行き詰まった氷柱は早くもこの河原で出現した。
氷柱を眺めながら河原を北上すると堰堤(A点)で行き詰まる。
その堰堤を右に見える宗教団体の建物の脇を抜けるようにして巻くと、再び河原に乗ることができる(この画像)。
先週はさらに上流へ進んだところで両側は切り立った岩(B点)となって行く手を阻まれた。そこは洞門岩道標の真下なのだ。ただし、切り立った岩を上ることはできない。
これ以上、先に進むのは無理と判断し、B点から誘導路(前の画像)まで河原を1.5キロ戻って林道に乗ったのだが、今日はB点の下流にある堰堤(A点)から林道に乗る方法を考えた。その方が誘導路に戻るよりも断然、近いのだ。


右岸の斜面を上る堰堤(A点)まで戻り、右岸の斜面を上ればいいと地図で読める。


この斜面のことね。


斜面にはリボンがほう、リボンがある。
ここもルートとして利用されているんだ。


林道に並行してトラバース堰堤脇の急斜面を上がると斜面は一旦、平になり、そこから緩やかな傾斜に変わる(この画像)。この斜面を上れば林道のはずだが、へそ曲がりの管理人は林道を歩く距離を少しでも縮めたいと考え、ここを林道に並行してトラバースした。


林道に合流斜面を這い上がりここで林道と合流。
前の画像の地点を上がるよりも雲竜瀑に40メートルほど近づいて林道に合流した、というなんの意味もない仕事をしたわけだ(笑)。


本当はここに出たかったのだが、そのためには林道下の斜面をずっとトラバースするという、労多くして功少なしを地でいくことになる。


ショートカット探しさて、次のつづら折りショートカットだ。
林道は前の画像の道標で分岐している。
直進が雲竜瀑へのノーマルルートで分岐しているのは堰堤の工事現場への誘導路である。
冬は工事を中断するので現場に近づけるのはこの時期しかない。
この辺りに先週行き詰まった堰堤を巻く道があるはずなのだ。


先週もここまで来た。
この石積みの堰堤を巻くことができれば最後の堰堤(階段がある場所)の下に出られる。その堰堤をなんらかの手段で巻けば渓谷入口の階段の上に出られる、と地図は読める。
この辺に短いながらそれほど急ではない尾根が張り出していて、30メートルほど登ったところで尾根から下りて渡渉し、別の尾根に乗れば目的が達せられる(あくまでも地図では)。
先週もここまで来たものの尾根は見つからず、林道に戻るしかなかった。
その反省から、普段見ることなどしない登山情報サイト「ヤマレコ」を利用して調べ、再挑戦となったのだが、今日もやはり取り付き点を見つけることができない結果に終わった。
その原因を考察し、最後にまとめておいた。


林道終点の階段堰堤の工事現場から洞門岩道標が立つ林道に戻って林道の終点までやってきた。
ここから先が100パーセント誰もが歩く雲竜瀑へのルートとなっている。


階段を下るまずは急階段を下りる。
多くの人が歩いていてステップがあるし手摺りもあるから慎重に下れば大丈夫。


階段を降りて雲竜瀑へここからなんどか渡渉しながら雲竜瀑に近づいていく。


見事な氷柱群沢の両側は切り立っていて土壌からしみ出た水が凍りつき、見事な氷柱となっている。
今日は気温が上がってプラス6度と温かく「ザザザッ」、「ドドドッ」、「ドスン」などとあちこちで氷柱が溶け落ちる音がしていた。君子危うきに近寄らず。


友知らずの氷柱「友知らず」付近


それぞれ表情豊かな氷柱群


帽子を被ったような氷柱


雲竜瀑直下階段を下りると雲竜瀑直下までは20分と近い。
さて、管理人は今日、つづら折りのショートカットの他にもうひとつ、課題をかかえてやって来た。
三段に渡って流れ落ちる滝の、二段目の滝壺に行ってみることだった。
それには右手前に見える雪の急斜面を上り、最後に急斜面を下る必要がある。


アイゼンを着けたここまでチェーンスパイクで歩いて来たが、二段目への高巻きはさすがにチェーンスパイクでは無理と判断しアイゼンを着けた。


急斜面これはかなり怖そうですな、うん。心してかからなければ、うん。
怖いのは傾斜が急だからなのではなく、足が滑ると遮るものなく雲竜渓谷に落ちることにある。
足下に木でも生えていれば恐怖感は薄れるものだが、この斜面はそうではない。下方に木一本生えていないのだ。


二段目の滝壺もしも管理人の後姿を誰かが見ていたら笑いを堪えるのに苦労したでろうことが容易に想像できる。
それほど自分でも笑いたくなるほどのへっぴり腰で、ようやく二段目の滝壺に降り立ったのだった。この恐怖感は当分の間、忘れることがないだろう、きっと。
肝心の滝の様子だが、圧倒されるほどの大きさだった。
それ以上の表現はできそうにない。


同じような姿勢で三段目に降りてホッとする管理人であった。
スーパーで買ったランチパックと自宅で作ってきたミルクティーで昼飯とする。


そろそろ帰る見飽きることのない雲竜瀑と氷柱群をあとに、そろそろ帰ることにした。


殉職の碑「殉職の碑」前を通過。


展望台で休憩日向ダム展望台でひと休み。


林道ゲート林道ゲート
車はこの時間で4台駐まっていた。
管理人はこの先、あと1.2キロ歩くことに。


駐車地に戻るゲートから20分かかって駐車地に戻る。
帰宅したらふたつ目のつづら折りがショートカットできなかった原因を探るつもりだ。


ゲートを入ってすぐ始まる長いつづら折りは稲荷川の左岸を歩くことで回避できた。
ふたつめのつづら折りは、先週に続いて今日も堰堤を巻く道が見つからず、林道に戻って雲竜瀑を目指すことになった。
なお、地図には往路しか描かなかったが帰りはノーマルルートにした。


地図を使って考察地図では矢印のように辿れば階段に出られるように見えるが、先週も今日も尾根の末端(尾根は山頂から始まり平地で終わる。その終わり部分を管理人は尾根の末端と呼んでいる)が探せなかった。
ヤマレコだと矢印の通りに進んだ記録があるのが不思議なのだが、管理人が見た記録4本はいずれも昨年のものだった。ここになんらかの理由があるのではないかと思う。
画像にあるようにここは新しい堰堤の工事現場となっている。工事をするには沢の流れを遮断して流れを別の場所に移す必要がある。その場所というのが斜面を垂直に切り崩した底の部分なのである。
昨年までなら斜面があってそこから尾根を登れたが、工事によって地形が変わってしまい今年はそれができなくなった、というのが管理人の考察である。
考察が正しいかどうかを堰堤が完成するまでに(完成すると通行できなくなる)もう一度、現場に行って検証したいものだ。

最後に老婆心ながら、当ブログの記事はできるだけ正確に書いているつもりですが、正確さと安全とは別問題です。また、その判断は書いている管理人と読み手によって大きく異なります。
通行禁止(歩行者も)といった注意書きがいくつかありますので、あくまでもご自身の判断で。
また、当ブログだけでなく、幅広く情報を収集した上で計画を組み、安全に歩くことを切に願っています。