日光・女峰山。下見のつもりなのでどこで引き返してもよかったのだが、なにしろ7年ぶりなので懐かしくて山頂まで。

2015年05月06日(水) キスゲ平~赤薙山~女峰山往復
天候:快晴、気温:20度

ごく親しいお客さんとの山行を今月末に控えて、女峰山の残雪が気になっている。
管理人がまだ元気はつらつとしていた2007年、女峰山へ登るにはもっとも厳しいといわれる東照宮裏の行者堂から歩き始めて5時間半かかって登頂、赤薙山を経由してキスゲ平に下りるという18キロ、10時間の山行をおこなったことがある。
IMG_2635標高2483メートルの女峰山は5月末まで雪が残る。2007年に登ったのも5月末であったが麓ではすでにヤマツツジが盛りを迎えているというのに山頂から北に延びる稜線上には30センチほどの残雪があり、滑るように下りてきた記憶がある。
その翌年7月、お客さんと裏男体から登ったのを最後に相次ぐケガにより登山から遠ざかっていたのだが、ようやく体調が良くなったので昨年から週一ペースで山行を再開した。
体力は当時に比べようもないほど落ちているため写真を撮りながら、地図を読みながら、当時は目もくれなかった低山歩きを楽しむようになった。
ちなみに2千メートル超えの山は赤薙山を除けば、2012年の白檜岳が最後だ。

今月末の女峰山行は常連のWさんが単独で登る予定だったところへ体調が良くなった管理人が参加表明したのに加えて、4月に鳴虫山に同行したIさんからも希望があったので、WさんとIさんの都合が合えば3人で登ろうということになった。
もしも都合が合わなかったら、、、その場合、管理人はWさんとIさんと別々の日に登ることになるわけだ。現在、食後でさえ体重は55キロを切っているので業務上の過労死という言葉が脳裏をかすめるが、それは管理人にとって名誉なことなのかもしれないw

予定している女峰山行は今月4週目か5週目のいずれか。今年は例年よりも雪が多いためあと2週あるいは3週後に溶けるかどうかを心配していたところへ、悲しいニュースが飛び込んできた。
3日にひとりで入山した茨城県の男性が行方不明になっていて安否の確認がとれていないとのことだ。ルートは管理人が予定しているのと同じ、キスゲ平から歩き始めて赤薙山を経由して女峰山に達するというものだ。
地方版のそれも片隅に載っただけなので詳しいことはわからないが本人から知人宛に、赤薙山を通過したとの電話連絡があったと記事にはあったから、事故は赤薙山から女峰山へ続く長い稜線上のどこかで発生したことは明らかだ。ここは厳しいやせ尾根や岩場があるので、もしも尾根上に残雪があったとするなら滑落の危険は見逃せない。
どのような装備で歩いたのかも当然だがわからない。残雪で足を滑らせて滑落したかあるいは、残雪でルートが隠れているために道迷いしたかのいずれかであろう。安否が気遣われる(※)。

管理人が5月に登った8年前も残雪はあった。が、樹林帯であるため谷底に滑落する心配はなかった。3日の事故が滑落であったとすれば管理人が登った8年前よりもさらに多量の残雪があるということだ。5月初旬であれば充分、考えられることだ。
あと2週間ないし3週間で雪解けがどれほど進むのか、これからの気温の上昇と密接に関わるのだが机上での予測は困難だ。といって、行ってみなければわからないというのはあまりにも無謀すぎる。

そんなわけなので下見は必須と考えた。
危険箇所はどこかをこの目で見て確かめ、その上で装備を含めてどのような注意が必要かを検討しよう。場合によっては日程を変更することも考えなくてはならない。WさんもIさんも山行経験は豊富だ。Wさんは昨年、下見で女峰山の手前1.5キロまで行っているし、Iさんは最悪の事態を想定し入念な準備をするタイプであり、ふたりとも慎重派だ。
とはいうものの、山ではなにが起こるかわからない。それをもっとも心配するところだ。

連休最後の6日は良い天気になるとの予報だ。連休明けは仕事が立て込んでいるので行くとすればこの日を逃したらない。それよりも、WさんとIさんが予定を組むためにも連絡は早いに越したことはない。

※地元紙のWEBサイトを見たら遭難した男性は5日午後3時頃、県の防災ヘリによって2日ぶりに発見され病院に運ばれたとのことだ。ルートから400メートル外れた場所で発見されたということなので、道迷いではないかと想像する。ちなみにケガはしていないとのこと。とにかく無事で良かった。


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予報通り良い天気になった。
スタートはここから。まずはキスゲ平園地の天空回廊で小丸山へ向かう。

IMG_2484階段を登るのに登山靴では重すぎる。長丁場なので疲れを少しでも軽減するために、階段を登るのはランニングシューズに限る。
登山靴はレジ袋に入れて手に持つので総重量は変わらないが、足の疲れはだいぶ違ってくる。

IMG_2481階段トップの標高1582メートルを目指して脇目もふれずただひたすら階段を登る。
ここは季節になると高山植物が咲き誇るがまだ時期が早い。それが幸いだ(^^)
花が咲けば写真を撮るのに夢中になり、歩くには効率が悪いw

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ふ~、ようやく階段のトップに着いた。標高は1582メートル。
所要時間29分は13キロのザックを背負っている割にいい線いってると思う。荷物がなければ20分を切れるはずだ。

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小丸山から赤薙山へ続く稜線を眺める。
中央が標高2010メートルの赤薙山だが女峰山はここから見えない。赤薙山のずっと奥、5つ目のピークだ。

小丸山のベンチで履き替えるここでレジ袋に入れて手にぶら下げてきた登山靴に履き替える。

焼石金剛7:18
焼石金剛前を通過。
この古ぼけた木の標識、管理人の好みである。朽ち果てるまでこのままであってほしい。

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赤薙山手前のやせ尾根。快適だ。
先ほど脱いだランニングシューズはこの辺にデポし、帰りに回収することにする。荷物が400グラム軽くなる。

女峰山への道は残雪多いので赤薙山へ07:42
赤薙山山頂と女峰山への分岐。
どちらへ行っても交わるが女峰山方面への道は残雪が多いのと、崩落箇所があるため赤薙山方面に向う方が楽だし安全だ。

IMG_2513こちらが赤薙山方面へのルート。

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残雪はこの辺りから。

IMG_2695ここでチェーンスパイクを装着。さらに条件が悪くなったらアイゼンに履き替えるつもりだ。

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神社がある赤薙山山頂に到着。
ここで地元の青年と出会い立ち話をするが青年、管理人と同じく女峰山へ向かうとのことだ。

中央は女峰山木々の間から、はるかかなたに女峰山が見える。

先を行く赤薙山で出会った地元の若者8:03
先を行く赤薙山で出会った地元の青年(中央右の赤い点)。
この先、赤薙神社奥社跡があるピーク2203まで厳しいアップダウンが続く。

男体山男体山が見える。

赤薙山-P2203中間地点からP2203奥社跡を眺める8:21
赤薙山とP2203中間地点からP2203(奥社跡)を眺める。

同位置から一里ヶ曽根上と同じ位置から一里ヶ曽根を眺める。中央に見える平らな部分が一里ヶ曽根でその右のピークがP2295、左のピークがP2318。

ヒメイチゲ赤薙山を越えて今日、初めて見る花はヒメイチゲだった。

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ピーク2203の赤薙山神社奥社跡に到着。道標だけで奥社の形跡はない。
ここまでの道のりはかなり厳しい。

奥社からP2209へ奥社跡から進路を北へ変えてピーク2209へ向かう。
数値上の標高差はわずか6メートルなのだが、40メートル下り50メートル上がってようやく6メートル標高を上げたことになる。
下りも上りも斜面全体に残雪があるためルートはわからない。コンパスをセットして歩き始めたがピーク2209への上りで藪に入ってしまい、脱出するのにひと苦労。

 

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藪を抜けてピーク2209。まるで日本庭園のよう。

IMG_2564ピーク2209からピーク2295へのルートは大きなアップダウンもなく快適だ。
このようなルートだけなら登山というよりトレッキングという言葉がふさわしい。

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この稜線にも雪が残っている。

IMG_2569シャクナゲの群落脇を通過。

IMG_2570このように地面と残雪の繰り返しだ。

IMG_2575それにしても空がきれい。

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赤薙山から3つ目のピーク2295の一里ヶ曽根に到着。
女峰山へはあとピーク2つだ。

P2295一里が曽根からP2318一里ヶ曽根の西に位置するピーク2318を眺める。
女峰山へはこのピークを越えて進路を南西に変える。

帰りに探したが流れなし10:46
進行右手に水場があるのだが雪で隠れて発見できず。

IMG_2597シャクナゲの花芽。
湯ノ湖にはアズマシャクナゲの群落があるが、この高さだと白花のハクサンシャクナゲであろう。開花は7月になるはずだ。

IMG_2599ピーク2318へと快適な道を行く。

IMG_2611女峰山が手の届く位置に見えてきた(といっても8倍の望遠でだが)。

IMG_2612デジタルズームを使って32倍で見ると山頂に人がいるのが見える。きっと赤薙山で会った地元の青年であろう。それにしても若いだけあって足が速いものだ。
上空を何かが飛び交っている。管理人、老化で飛蚊症の傾向があるが明らかに物体が動いている。アマツバメだろうか。

危険箇所11:38
危険箇所はまだ多い。幅30センチほどの道を歩くことも。北側は急峻な斜面だ。
もしもここに雪が残っているとすれば恐ろしい。

IMG_262111:46
お次はロープがかかっている岩場だ。
なるべくならロープに頼らず両手両足を使って登りたい。その方が手応えがある。

IMG_2626GPSには女峰山まであと221メートルと表示されている。

IMG_2631最後の登りだ。頑張れ。

IMG_2634見上げると女峰神社と山頂を示す標識が見える。

IMG_264012:09
歩き始めて延々、6時間。ヘロヘロになりながらも登頂できたので喜びは大きい。
7年ぶりの女峰山、3年ぶりの2千メートル超えの山(※)に感無量である。良い天気とほどよい気温そして、無風に助けられた。
※2010メートルの赤薙山を除く

帝釈山600メートル西に帝釈山が見える。この稜線も素晴らしいが今日はとても行く気になれない。
頭上でビューン、ビューンという大きな音がする。数十羽のアマツバメが超高速で飛び交っている。羽化した虫を補食しているらしい。

燧ヶ岳北西に燧ヶ岳が見える。そのうしろの山は新潟県の山域であろう。

川俣湖北北西の眼下に見えるのは川俣湖だ。

IMG_2651南東に日光市街地。

IMG_2649東には今、歩いてきた稜線が確認できる。一番右のピークが赤薙山だ。
これから360度の展望を楽しみながら昼飯としよう。

12:40
下山開始。

IMG_2660赤薙山からの稜線上はイワカガミの宝庫だ。
花は7月になってからだがどこででも見ることができる。
その頃の登山は花に注意が向いてしまい仕事が捗らず困る(^^)

IMG_2661登りと違ってチェーンスパイクのグリップはアイゼンに劣る。かかとでステップを作りながらピッケルと併用して慎重に下る。
もっとも、滑ったとしても尾根の脇は地面なのですぐ止まるので心配はないが。

IMG_266513:54
ピーク2295の一里ヶ曽根。
山頂から1時間14分だからまずまずといったところ。が、疲れが足にきている。
下山予定は16時だが1時間はオーバーしそうだ。

IMG_2666往きとはまた違った趣を味わえる。

IMG_2668雪に埋もれながらも花芽をつけているシャクナゲ。植物の生命力の強さを物語っている。

IMG_2673尾根脇、北斜面の積雪はまだ1メートルくらいある。

IMG_2675コケモモも多い。これも開花は7月になってから。

IMG_267815:00
奥社跡

IMG_2682登りはそれほど意識することがなかった岩場を上から覗くと怖いものだ。
腰を落とし重心を安定させて慎重に下りる。

IMG_2685今度は登る。

IMG_2687こんな場所もある。

IMG_269215:46
ここまで下りれば安心だ。

IMG_2698小丸山に続く快適な尾根。
ただし、尾根は細く右側(南側)は谷底まで300メートルもあるので積雪時は怖い場所だ。

IMG_2702焼石金剛から先は大小様々な石だらけで歩きづらい。

IMG_270516:33
小丸山に着いた。
正面のゲートを抜けると天空回廊だ。

IMG_2707階段を下りる前に目の保養(かなりピンぼけ)。それとストレッチを入念におこなう。

IMG_2709さあ、これから1445段の天空回廊を下りる。
靴はランニングシューズに履き替えてある。
疲れも激しいので手すりにしっかりつかまって慎重に下りることにする。

IMG_2713先月26日に来たときは蕾だったオオカメノキが開いている。

IMG_271517:05
着いたぞ。
歩き始めてから11時間というのは昨年10月の火戸尻山以来ではなかろうか。とにかくたっぷり歩いた気がする。

150506birdviewこれで5回目だというのにその名とは裏腹にやはり女峰山は厳しかった。尻に敷かれて屈服した感がある(^^)
日光に住んで山登りをするようになった管理人は他県の山のことは知らないのだが、女峰山は変化に富んだ地形と厳しさにおいて日光を代表する素晴らしい山だと思う。日光に2千メートル超えの山はいくつかあるが女峰山は厳しさゆえに登り甲斐があり、別格である。
14キロという行程は距離だけでいえばたいしたことはないが赤薙山から5座目に位置しその間、いくつもの厳しいアップダウンが続くし、まるで日本庭園の中を歩いているかのような美しい光景もあり、飽きさせない。高山植物が多いのも魅力だ。

往き5時間36分、帰り4時間13分。いずれも休憩時間を除いた実時間である。加齢による体力低下に加えて安全対策に備えた13キロという荷物も堪えた。
帰宅後、夕食前に体重を計ったら53.5キロまで減っていた。山行中、意識してたくさん食べ水も飲んだのにだ。この行程がいかに体力を奪うかが知れる。
今月末の常連さんとのツアーを前に、はたしてこれで大丈夫なのか心配になるがまあ、でも、心配しても仕方がない。それよりもケガからの回復途上の身でこれだけ歩けたことに満足すべきであろう。

山行データ
往復距離:14.1キロメートル
所要時間:9時間49分(休憩を含んだ総時間:11時間2分)
残雪場所:赤薙山直下から断続的にあるが谷底へ滑落するような箇所に残雪はない
危険箇所:赤薙山~女峰山まで岩場や50センチ幅の道などあり。P2203からP2209は残雪でルート見あたらず。
所持品:ピッケル、ヘルメット、10本爪アイゼン、チェーンスパイク、ツェルト、雨具、防寒着、ヘッドランプ、医薬品、地図、コンパス、GPS、無線機、主食3食分、飲料水2.5L(スポドリ2本、真水1L、湯)、行動食多数他

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