古稀を迎えての第1登はやはり女峰山でなくちゃ(17回目)。

2018年8月10日(金) 晴れ→雨 行程表  

管理人が登山を始めたのは遅く、50歳に手が届くころのことである。
東京でのサラリーマン生活から一転し、日光という自然に恵まれた土地に転居してペンションを開業したのが45歳のときだから、登山はそれから数年という月日を経て始めたわけだ。
それまでまったく意識外にあった周りの景色が目につき始め、昭文社の「山と高原地図」を買って(これが手にした最初の地図)調べると、ペンションの窓から見える雪を被って白い山々は丸山や赤薙山、女峰山であった。日光連山と呼ばれる山並みの一部である。赤薙山と女峰山は2千メートルを超えていることも地図で知った。
綺麗だ、と柄にもなくそれまで口にすることなどなかった言葉が自然と出たのは開業以来、多忙で景色などじっくり眺める気持ちの余裕がなかったためだ。
とにかく忙しく、よく働いた。7月から8月にかけて30日、40日という日数、休みなく働いた。バブル景気は終わったというものの、人々はまだレジャーを貪欲に楽しむよき時代だったのだ。

デジカメの画像として残っている最古のアウトドア体験は、1999年7月に戦場ヶ原の泉門池に行ったときのものである。ガスストーブを使って昼ご飯を作っている画像がPCに残っている。
山道具はそれなりに揃っていることが画像から読み取れるので、これよりも前に別の場所を歩いていたのは間違いない。
記録には残っていないがこの前年すなわち、1998年にはスノーシューツアーを開催した記憶(初めてのツアーでハラハラした)が鮮明に残っている。スノーシューそれもお客さんを集めてのツアーは山歩きの経験なしではできないから、それよりも前、1997年あるいは1996年には山を歩いていたことになる(記憶は記録の正確さに劣るから、やはり記録は大切)。

さて、それから長い年月が経過した。
管理人、この7月で齢70になった。
山を歩き始めたころは仕事の合間をみて歩いたものだが今では逆転し、仕事を抑えて山歩きを楽しむというスタイルに変わった。理由はいろいろあるが45歳で脱サラし、それから20年以上も頑張って、仕事に疲れたんでしょうね。今では唯一の息抜きが登山ということになりました。
サラリーマンでいえば定年後も第二の職場で頑張っているようなものだ。もう仕事よりも趣味に没頭してもいいじゃないか(問題はそのための資金繰りだが)。

70歳最初の息抜きは地元の女峰山と決めていた。
毎週一度は山に登っているので70歳になったからといって体力がいきなり衰えるわけではない。しかし70歳の第1登として女峰山は必須であった。
日光に移住して山歩きを始め、ハイキング主体から山頂を目指すようになった最初の山が赤薙山、その次が女峰山だった。これが管理人が山の楽しさを味わう決定打となったのである。
厳しいが変化に富んだルート、2千メートルを超える場所から湧き出る水、山頂に立って見渡す360度の展望はハイキングでは味わえない達成感と山の醍醐味を教えてくれた。いってみれば管理人をして山歩きの楽しさに開眼させ、育て上げてくれた母なる山が女峰山なのである。疎かにしたら罰があたるというものだ。

片道8キロという距離(霧降ルートの場合)は日光の他の山の往復に相当する長さだし、累積標高差は1800メートルにもなるから、気が向いたときに気軽にホイホイと登れる山ではない。体力、気力ともに充実していなければ登れないことはこれまでの経験で知っている。その厳しさに震えるほどの快感を得る管理人なのである。
この山に登れるうちは他の山は大丈夫。管理人、自分にそう言い聞かせている。
でもいつかは必ず、登れなくなる日が訪れる。
目下の課題はその日を1ヶ月さらに1ヶ月と先に延ばすことだ。
そのためにも筋力の低下を阻止するトレーニングは欠かせない。女峰山に登り続けるためにはどんな努力も惜しまない、そう決めている管理人なのである。


行程表
キスゲ平(6:02)~小丸山(6:33)~焼石金剛(7:01)~赤薙山(7:30/7:35)~奥社(8:19/8:22)~一里ヶ曽根(9:08/9:10)~P2318(9:35)~女峰山(10:14/10:38)~雨具着る~P2318(11:21)~一里ヶ曽根(11:50/11:55)~奥社(12:44/12:50)~赤薙山(13:47)~焼石金剛(14:12)~小丸山(14:33)~キスゲ平(15:55)
※距離:16.5キロ
※時間:9時間53分
※累積:1760メートル
※下山時に雨具を着たり脱いだりを繰り返したため時間をくった。


女峰山の登山口はここ天空回廊いい天気に恵まれた。
古稀を迎えた管理人を祝ってくれているかのような青空が広がっている。今日は思いっきり楽しもう。
女峰山霧降ルートはここ霧降高原キスゲ平から始まる。
さあ、無事に登頂できるのかそれとも途中で追い返されるのか、その正否は女峰の神様の手に委ねられている。
まずは天空回廊と呼ばれる1445段の階段を上がる。
画像右の陰の中にいる人は女峰山に登るという、トレランの練習に来たランナー。


キスゲ平の秋の花たちオヤマリンドウ
キスゲ平園地の植物はすでに秋の花たちに変わっていた。


タムラソウタムラソウ


ツリガネニンジンツリガネニンジン


天空回廊終段の小丸山天空回廊終段の小丸山を見上げる。
ここはかつて冬はスキー場、初夏はニッコウキスゲ観賞の地として使われていた日光市の施設。
2010年にリフトを撤去した跡に小丸山に通じる階段を設け、天空回廊と名付けた。
1445段、標高差にすると240メートルもある登山者泣かせの難所である。しかし、それを楽しみに訪れる強者もいて人気がある。
国土地理院地図には階段の北側(画像に見える階段の右)に登山道が描かれているが、天空回廊ができてからはほとんど使われなくなり藪化している。廃道になる日も近い。


シシウドシシウド


ゴマナゴマナかなぁ?

天空回廊の700段目天空回廊の700段目からはスキー場でいう上級者コースの傾斜に変わり、それなりに厳しい。ここでバテてしまっては女峰山に到達できない。
管理人は100段ごとに立ち止まって息を整えるようにしている。
前を行くのは管理人とほぼ同時にスタートしたトレランランナー。差は開くばかり。


見事な雲海振り返ると関東平野の上空に見事な雲海が広がっているのが見える。


天空回廊の最終段に到着27分かかって天空回廊の最終段に到着。
最初の難関が終わった。


ヤマハハコ


ノハラアザミノハラアザミ


小丸山標高1601メートルの小丸山。
これから正面に見える赤薙山(2010M)を目指す。
ちなみに女峰山へ行くにはここから赤薙山(2010M)→ピーク2070→ピーク2203(奥社跡)→ピーク2209→ピーク2295(一里ヶ曽根)→ピーク2318→ピーク2462(三角点)を超えてようやく到達する。とてつもなく遠いが縦走の醍醐味が味わえる。


リンドウリンドウ


イタドリイタドリ


ガレ場""道はやがてガレ場に差しかかる。
浮き石が多いのでうっかり乗ってしまうとバランスを崩して転倒ということも。


焼石金剛からの眺めガレ場の途中に焼石金剛があり北東に位置する塩原から矢板、塩谷の山並みが見渡せる。


高原山北東に見える形のいい山は高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)。


日光市街地と鳴虫山日光の市街地と鳴虫山(手前の山)、鹿沼や宇都宮の山並みがきれいだ。雲海の上にうっすらと筑波山が見える。


赤薙山に到着歩き始めて最初のピーク、赤薙山に到着。
所要1時間28分とまずまず。


山頂からの展望は1ヶ所のみ山頂からの展望は1ヶ所のみ。鳥居の奥からこれから向かう女峰山をとらえることができる。


荷物は身軽に山歩きは7月22日以来なので脚力低下を想定して身軽に動けるようにしてきた。
荷物は6キロに抑え、靴はローカット。ポールは岩を乗り越えるのにじゃまなので車に置いてきた。
ここまで来る間に、笹についた朝露のせいで靴もパンツもびしょ濡れ。歩いているうちには乾くだろう。


アキノキリンソウアキノキリンソウ


平坦な道赤薙山から次のピークへ行くにはアップダウンを繰り返すが、このような歩きやすい場所もある。


スギゴケスギゴケ


オオカメノキオオカメノキ


ミヤマホツツジミヤマホツツジ


崩落箇所崩落箇所に差しかかった。


崩落箇所が治っているおやっ、前回来たときと様子が違うぞ。崩落した部分が埋められている。
ここは慎重に通過しなければならない場所だっただけにありがたい。
それにしても登山口から2時間近くもかかるここまで、崩落を埋めるほどの大量の土砂を誰がどのようにして運んだのだろう?
いずれにしてもありがたいことだ。


奥社跡が見えるここから正面に奥社跡が見える。
霧がピークを覆い隠しているのが気がかり。


キオンキオン


奥社跡に到着奥社跡に到着。
所要2時間17分。5分ほど休みを取る。


奥社跡と次のピークとの標高差はわずか6メートル。
しかしこの6メートルは50メートル下って56メートル上がることで得られる。
画像はその鞍部。
なお、ピーク2209は奥社跡から見て真北からほんの少し東に向いている。
しかし道はピークへ向かわず、この鞍部からやや西へ向かう。ピークへの道はない。
雪で道が隠れて見えない季節は地理院地図にしたがって忠実に歩こうとすると深い藪に突入する。地理院地図はピークに向かって描かれているからである。


ピーク2209の稜線ピーク2209から西へ延びる稜線にのった。
ここからピーク2295の一里ヶ曽根までの1キロ強、シャクナゲが茂る平坦な道がつづく。


シャクナゲの花は終わりシャクナゲの花はすっかり終わってタネになっていた。


ヤハズを通過。ヤハズを通過。


一里ヶ曽根に到着歩き始めて3時間6分でガレ場のピーク、一里ヶ曽根に到着。


急傾斜のガレ場を降りる一里ヶ曽根から先へ進むにはまずこの急傾斜のガレ場を降りる。
石は浮いているので不用意に乗るとズルッといくから注意。


気持ちのいい鞍部テントでも張れそうな広くて気持ちのいい鞍部。


水場への分岐鞍部を過ぎて登りになるとすぐ、水場への分岐に差しかかる。
ちょっと覗いてみよう。


水量は多いひと頃に比べると水量は多い。


ピーク2318を通過ピーク2318を通過


キオンの群落キオンの群落


ウメバチソウとシラネニンジンウメバチソウ(上)とシラネニンジン(下)


岩場ロープがかかる落差3メートルほどの岩場を登る。


最後のピーク女峰山手前、最後のピークとなった。


女峰山神社女峰山神社


通算17回目の女峰山通算17回目の女峰山である。
初めて女峰山に登ったのは2002年だが、この山の面白さの虜になって集中的に登るようになったのは2016年後半から。それから今日で11回(うち1回は500メートル手前で撤退)に達した。
古稀を迎えてこれから先、いやでも体力は衰える。衰えて山歩きができなくなるまで、あと何回、この山に登れるだろうか。
おもしろいのは、今日の所要時間は休憩や撮影を含めて4時間12分だったが、昨年まで5時間を切ることはなかったのだ。
管理人、特に時間にこだわっているわけではないので、あえて休憩を少なくしたり、写真を撮る枚数をけずったりはしていない。
しかし、休憩については、結果的には回数とそのときの時間が少なくなっているのを自覚している。時間を短縮するために無理して少なくしているというわけではなく、多くの休憩を必要としなくなっていることに気づく。このへんのところはあらためて考察したい。
※霧降ルートからの片道の所要時間(積雪期の記録は除外)
・2018年08月10日 4時間12分(今回)
・2018年06月04日 4時間01分
・2018年05月21日 4時間34分
・2017年09月26日 5時間35分
・2017年08月09日 5時間17分
・2016年11月07日 5時間14分
・2016年06月10日 5時間23分


帝釈山は霧で隠れて見えないいつもは女峰山とセットで登っている帝釈山は霧で隠れて見えない。
今日は最終目標を女峰山としたのであそこへは行かない。


膝を保護するためにサポーターお見苦しくて失礼、、、
久しぶりの登山なので膝を保護するためにサポーターを装着してきた。
以前、左膝の靱帯断裂で再建手術をしたが不安定さがいまだに解消されていない。
エレキバンでお馴染みのピップ社の膝サポーターだが、長距離やアップダウンが激しい登山の際に使うことにしている。ただし肌がかぶれる(なにしろ柔肌なもので)のがイヤな材料。


ザックは15リットルという小型のにした身軽に歩けるようザックは15リットルという小型のにした。
小さいがゆえに荷物の取捨を真剣に考えなくてはならない。
事故に備えて救急セット、スズメバチに刺されたときのためにポイズンリムーバー(毒出し)、日没も想定してヘッドランプは欠かせない。
外したのはポール、GARMINのGPS、薄手のダウン、ウインドシェル、手袋、ツェルト、雨傘、スパッツ、充電器、着替えなどだ。なお、ツェルトと雨傘は本来、必須の小物としているのだが今日の予報ならば雨具でしのげると判断して置いてきた。
そうやって今日は水2リットルを含めて6キロに抑えた。


コケモモ
このように真っ赤なうちはまだ食べられない。


ミヤマダイコンソウミヤマダイコンソウ
花はとっくに終わっていた。


ウメバチソウ(梅鉢草)ウメバチソウ(梅鉢草)


雨が強い雨が強くなってきた。
これまでも着たり脱いだりしていたが、これからはずっと着ていなければならないほどの強さだ。


ピーク2318を通過ピーク2318を通過


朱色に染まったナナカマド早くも朱色に染まったナナカマド


一里ヶ曽根ガレ場を上って一里ヶ曽根


シャクナゲの間を歩く濡れそぼったシャクナゲの間を歩く。


奥社跡奥社跡


濡れた軍手を回収朝は見逃したが水を含んでぐっしょり濡れた軍手を回収する。


シロヨメナシロヨメナ


奥社跡から赤薙山への稜線は岩場があるし大きなギャップもある。雨で濡れると滑るから細心の注意を払いながら下山する。


2070ピークが見えてきた赤薙山のひとつ前の2070ピークが見えてきた。


赤薙山は休まず通過赤薙山は休まず通過


笹が深い赤薙山を降りると笹が深くなる。


マルバダケブキマルバダケブキ


焼石金剛を通過焼石金剛を通過


リンドウリンドウ


ネバリノギランネバリノギラン(花は終わっている)


あれ? ヤマハハコかな?


コバノコゴメグサコバノコゴメグサ(木葉小米草)


ヘビイチゴヘビイチゴ


シモツケソウシモツケソウ


小丸山小丸山


天空回廊を下るさて、これから天空回廊を下る。
雨具はまだ身につけている。
今日は園内に咲いている花を観賞するつもりなので700段目で階段から外れて散策路を歩くことにする。


ソバナソバナ


シラネニンジン?シラネニンジン? いや、違うなぁ。


園内の広場でアイスコーヒー園内の広場でひと休み。
氷を詰めた水筒から氷と冷たい水をカップに注いでアイスコーヒーを作り、フルーツグラノーラで作ったシリアルバーで小腹を満たす。


ツリガネニンジンツリガネニンジン


ノハラアザミノハラアザミ


タムラソウよく似ているがこちらはタムラソウ


リョウブリョウブ


ワレモコウワレモコウ


古稀の第1登が無事に終わった記念すべき古稀の第1登は無事に終わった。