標高2010メートルの日光赤薙山にチェーンスパイクで登ってみた。

2015年2月4日(水)
2千メートルを超える日光の山でもっとも低いのが2010メートルの赤薙山である。
日光連山の起点となる男体山の北東に位置し男体山からはもっとも遠く、エリアで区分けするなら奥日光ではなく、霧降に属する。

山頂はコメツガやツツジが生い茂っているため展望が悪く、山頂に立って展望が開けたときに感じる、「やった~」という気分になれないのが残念。
でも、割と楽に登れる2千メートル超の山であるしキスゲ平から焼石金剛までの稜線からの展望はいい。
登山口からの標高差にしたって670メートルもあるから、これは丸沼からゴンドラで2千メートルまで行き、そこから白根山に登るよりも100メートルほど、高い。
などと管理人が一生懸命、この山を宣伝してあげてもガイドブックには女峰山への通過点くらいのことしか書かれていないし、やはり山頂からの展望がないのが致命的なのか、夏でも登る人が少ないのは致し方ないであろう。

道具はモンベルのチェーンスパイクを使った。
モンベルによれば用途は「冬の低山や夏の雪渓歩行」となっているが、管理人はこれを無雪期にも活用している。登山靴だけだと滑ってしまう急斜面の上り下りや、落ち葉が堆積して滑るような道に威力を発揮し、ずいぶん助けられている。
今回は用途から外れるが、低山とはいえない2千メートルの雪山で使ってみようというわけである。これまで赤薙山に登って理解しているのは、焼石金剛から樹林帯に入るまでの“あの尾根”だけ注意すれば大丈夫、ということである。
さあ、結果はどうなることでしょう。

そして本日の同行者はWさん。2006年から管理人が主催するスノーシューツアーに参加しているので今年で10年のキャリア。日光の自然に魅せられ、年に10回は来ているのではないだろうか。ソロでもあちこち歩いている強者である。ときには管理人がガイドされることもw

以下の記事も参考にご覧ください。
2016年2日21月 山王帽子山
2016年4月06日 女峰山
2017年1月10日 赤薙山


IMG_866109:05
今日はいつもの登山道ではなく、雪が硬く締まったキスゲ平(元スキー場のゲレンデ)を登って小丸山まで行く。
雪が深いとチェーンスパイクを装着してもしなくても機動力が削がれるため、スノーシューも持参。冬は大体、こんな装備で山を歩いている。
ちなみにスノーシューはモンベルが販売しているATLAS社製の山岳用です。


IMG_8663これがチェーンスパイク。
シリコンゴムの8カ所にステンレス製のチェーン(鎖)が取り付けられ、そのチェーンの先に5枚のアルミ製の板がついている。
板の角は90度に折り曲げられていて、それがスパイク(爪)だ。スパイクは10ヶある。長さは10ミリと短いのと柔軟性に富んでいるので雪のない地面でも違和感なく歩ける。
登山靴で潜らないほど硬く締まった雪の上なら、急な傾斜を除いてチェーンスパイクで滑ることなく歩ける。ただしアイスバーンではアイゼンにかなわない(当然だが)。
とまぁ、いいことづくめのように書いたが管理人のようにオールシーズン使う場合、気をつけなくてはならないことがある。雪があったりなかったりするような状況の時に使う場合だ。
露出した木の根や笹の茎、倒木の枝の上を通過する際にそれらがチェーンに挟まってしまうことがあり、それに気づかずにいると本体が靴から外れてしまうのだ。チェーンがかかっている本体のゴムが裂けてしまったこともある。
まぁ、雪の上を歩く限りそんなことはないのだが、雪の降り始めや残雪期で地面が露出しているところや濡れた枯れ葉が厚く堆積している斜面で使いたいと考えている人へは老婆心としてお伝えしておく。


IMG_8665小丸山まで続く1445段の階段、「天空回廊」の脇をひたすら登って小丸山まで行くのが第1目標。次は赤薙山直下の焼石金剛、そして最後は赤薙山という目標設定である。
階段北側の地図にある登山道を使って小丸山まで行くという方法もあるが、今日は赤薙山までの時間を短縮するためにもこのゲレンデを歩くことにした。
ちなみに木の階段や木道はチェーンスパイクで歩いてはいけない。


IMG_8666ここはまだ標高1400メートルなのに振り返ると80キロ先の筑波山が見える。


IMG_866709:32
階段の700段目にある避難小屋。標高は1455メートル。
この避難小屋は開放構造になっていて山小屋と異なり泊まれるわけではない。夏場になると突然の雷雨が多いことから事故を避けるための小屋、と思った方がいい。


IMG_8669避難小屋がある場所はスキー場(ここは5年前までスキー場でした)でいえば中級者コース。
それを過ぎると急勾配の上級者コースに変わる。
管理人はすでに汗を流しているのでここでジャケットを脱いで2枚構成になった。
画像でわかるとおり斜面は圧雪状態になっていてスノーシューだと歩きにくく、アイゼンを使うほどではなく、といって靴のままだと滑る、そんな雪の状態がチェーンスパイクの本領発揮という場面である。


IMG_8672本日同行のWさん。
昨夜は作戦会議と称して管理人の家族も交えて大いに飲んだ。ワインをこよなく愛すWさんのアドバイスのおかげで管理人のペンションの品揃えも豊富になった。
ゲレンデ上部は画像の通り、かなり急だ。
滑ったら階段の一番下までまっしぐらという傾斜なので、スパイクをしっかり効かすためにも着地する際はつま先で雪面を蹴り込むようにして食い込ませることが重要である。


IMG_8673北西の方角に高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)がくっきり。
いつかは登ってみたいものだ。
ちなみに管理人は、これまで日光以外の山は宇都宮市の古賀志山しか登ったことがないのだよ。


IMG_8674階段の終わりに設けられた展望台が見えてきた。
それにしてもなんと素晴らしい天気なんだろう。


IMG_868410:00
歩き始めて50分、小丸山に到着した。
今日のような圧雪された雪面であればチェーンスパイクをしっかり食い込ませることで安定して登ることが出来る。
なだらかな稜線の先に見えるピークが赤薙山。
これから登っていくが、なんてことない山のように見えて怖い箇所がある。


IMG_8688先を行くWさん。
チェーンスパイクのイメージがわくだろうか。


IMG_869510:48
焼石金剛に到着。
歩き始めて1時間38分。小丸山から48分。


IMG_870011:00
いよいよ急登とその先のやせ尾根が始まる。
やせ尾根の南斜面(左側)は中ノ沢で落差は300メートル。尾根を踏み外すと500メートルをノンストップで滑り落ちる。
やせ尾根は北西からの風で雪庇になっているので本来なら、無雪期に歩いておき正規の登山道がどの位置にあるか、確認しておくことを勧めたい(進行右に見える樹木からの距離を知っておくといい)。


IMG_8705無事にやせ尾根を抜けると樹林帯に入るがロープが張ってあるし赤リボンもあるので道に迷う心配はないだろう(たぶん)。
雪が深い年でもロープやリボンが隠れてしまうことはない。


IMG_870711:23
赤薙山山頂と女峰山方面への分岐。
赤薙山山頂のすぐ先で交わるので女峰山へは分岐をどちらに行ってもかまわない。
ただし、女峰山方面に進むと途中、崩落箇所があって足場が悪い。
この時期だと斜面をトラバースすることになるだろう。
写真中央に写っている道標はここでの重要な「みちしるべ」となる。赤薙山もしくは女峰山へ行くには必ずこの道標を通過するからだ。
下りではこの道標を見逃すと別の尾根に入り込んでしまうから注意が必要である。


IMG_8710山頂直下の急斜面を登るがトレースがあったので利用させてもらった。
このような急斜面、管理人は嫌いではない。


IMG_872311:47
赤薙山に到着。
積雪のおかげで鳥居と山名板がやけに低い。


IMG_4367これが無雪期の鳥居。


IMG_8719ここまでチェーンスパイクで問題なく登れた、とあまり大きな声では言えない。
山岳用のアイゼンならまだしも、低山用に設計されている爪の短いチェーンスパイクで雪の2千メートル峰というのは無謀かもわからない。
圧雪された緩斜面ではチェーンスパイク、チェーンスパイクだと潜ってしまう場合はスノーシュー、クラストした斜面であればアイゼン、というように使い分けるのが理想だ。


IMG_8716鳥居をくぐると女峰山(中央)と男体山が見える。
視界が開けているのはこのわずかな部分だけで、他はコメツガに覆われて展望は利かない。


IMG_8728腹もへったのでここでランチといきましょう。
今日は常連さん用のメニューでした。


IMG_873112:26
気温が下がってきた。
天気が悪くならないうちに下山しよう。
アイゼンに比べて爪の短いチェーンスパイクは下り斜面だとけっこう滑る。


IMG_8738往路で通ったやせ尾根。緊張が走る。


IMG_8744やせ尾根を慎重に下るWさん。


IMG_8766丸山の山頂に団体さんが見える。
下山してから知ったのだが某旅行会社主催のツアーでした。
丸山をツアーの対象にするなど、これまで聞いたことがない。


IMG_877113:13
小丸山が見えてきた。
尾根はあそこで終わってその先で天空回廊に続いている。
無雪期でも展望がいいが冬は筑波方面が一望できる絶景地だ。
さて、朝はレストハウスからゲレンデを登って小丸山に着いたが、帰りは地図にある登山道を使おう。その方が断然面白い。
樹林帯の斜面だが雪が深いのでその前にスノーシューを着けることにしよう。


IMG_877513:40
木々がじゃまだが単調なゲレンデを下るよりも楽しめる。
ここまで降りるとあと10分で下山だ。


赤薙山は2千メートル峰だが往復6キロという手頃な距離だ。
この時期の危険箇所は雪庇のできるやせ尾根だけなので、安全に登れる雪山といっていいであろう。
ただし、下りにゲレンデ(小丸山~レストハウス間)を使う場合は気をつけた方がいい。ゲレンデ上部の傾斜は30度もあるから、雪がクラストしている場合は滑って尻餅をついたら止まらず、レストハウスにご来店ということになりかねない。
雪の状態にもよるが滑落停止技術のない人は階段で降りるか、管理人が使った樹林帯を降りることをお勧めしたい。