ツアー参加者が滑落。そのときガイドはなにもできず、呆然と眺めているしかなかった。

2015年2月08日(日) 霧降高原・丸山(男性5名)

メンバーは申込者のSさん4人グループと単独参加のNさんの5人。4人グループは皆、アウトドア経験豊富と聞いていたがHさんは登りでかなり苦労していた。体重90キロオーバーと聞き、苦労の原因はそれしかない。スノーシューが支えることのできる限界なのだ。
57キロの管理人と90キロのHさんが同じスノーシューを使えばHさんの方がより深く雪に潜る。その深さからスノーシューを持ち上げるには脚に大きな負担がかかり、疲労する。

下りはいつも、急傾斜でなおかつ雪が深い林間を歩くことにしているが、登りですでに体力を消耗しきってしまったHさんには膝まで潜る林間のコースは無理と考えて、他のメンバーと別れて管理人とHさんのふたりはスノーシュー が潜る心配のない元スキー場のゲレンデを下ることにした。昨年3月には80歳のNさんを同じ方法で無事に下ろしているし、脚力の弱い女性もその方が安全なのだ。
事故はその際に起こった。疲労で歩くのさえままならないHさんは足がもつれて転倒し、そのままの姿勢でゲレンデを50メートルほど滑り落ちたのだ。
元スキー場のゲレンデだから障害物はないし、傾斜が緩くなればどこかで必ず止まるので怪我はしない。しかし、ほんの数秒の出来事とはいえその間、Hさんには恐怖を体験させてしまった。
管理人は為す術もなく滑り落ちていくHさんを眺めているしかなかった。なにもできなかったこと、それはガイドとして非常に虚しいことであった。今後もHさん同様、自分で支えることができない体重の持ち主が参加した場合にどのように対応すべきか、大いに悩む。
申し込みがあったときに体力、脚力に加えてこれまでのアウトドアの経験を聞き出すようにしているのだが、“アウトドア経験豊富“という自主申告よりも本当のところはどうなのか、ガイドとしてはそれがもっとも知りたいところなのだ。


IMG_9052いつもの八平ヶ原から眺める高原山は厚い雲に被われてまるで梅雨時の景色そのものである。
ここまで緩やかなアップダウンが続いたが体力を消耗するようなコースではない。
ただ、Hさんだけが荒い息をしている。

IMG_9054単独参加のNさんを先頭に、丸山北斜面登山口へと向かう。
登山口から山頂までが厳しい斜面だ。

IMG_9059丸山北斜面には着生植物のサルオガセが多い。風にゆらゆらとなびく姿は夜であればさぞ薄気味の悪いものであろう。

IMG_9062寒さと強風の中で体力が消耗したが無事に山頂に立てたがHさんは消耗しきって余力がない様子だった。
ここまでSさんはHさんにつきっきりでサポートしてくれた。

IMG_9064空腹も極限に達したがこの寒さと風の中での食事は無理と判断し、ツェルトを設営した。
1枚地ではあるがそれだけで風を遮られるし人の体温で中は暖かくなる。
今シーズンの丸山では強風で昼食を断念したことが二度あるが今日は山男の意地というものであろう。

 

IMG_9075小丸山に着いたが辺り一面、深い霧に包まれ視界不良。
この先すぐ、天空回廊のあるゲレンデと林間との分岐になる。

IMG_9076ここから先、林間はNさんとSさんにリーダーをお願いして、管理人とHさんは安全な元スキー場のゲレンデを下ることにした。
本来、ガイドとしての役割は参加メンバー全員といっしょに行動しなくてはならないところだが、Hさんの身の安全を考えた非常措置だ。
結果は裏目に出てHさんが滑落。体重があるだけにその重力によってなかなか止まらず、呆然とする管理人。管理人が付き添っていながらHさんを滑落させてしまい、悔いが残る結果となった。