残雪の高原山4座完登。それは9時間に及ぶ死闘で疲れはてる。

2016年3月29日(火) 晴れのち曇り 気温:6度
7:30/大鳥居~8:40/大沼分岐~9:00/弁天沼~11:05/釈迦ヶ岳~11:55/中岳~12:30/西平岳~13:50/釈迦ヶ岳~15:00/鶏頂山~15:45/弁天沼~16:00/大沼分岐~16:45/大鳥居

当初の計画(休憩は含まず)
8:30/大鳥居~9:20/大沼分岐~9:40/弁天沼~11:10/釈迦ヶ岳~11:30/中岳~12:00/西平岳~12:50/釈迦ヶ岳~13:50/鶏頂山~14:10/弁天沼~14:30/大沼分岐~15:20/大鳥居

冬、霧降高原・丸山から見る高原山に憧れていた。
スノーシューツアーで八平ヶ原に出ると北西に、周りの山を圧倒するように、いくつかの峰のひとかたまりが見える。地図で調べると鶏頂山と釈迦ヶ岳、中岳、西平岳のようだ。
地図にはそれら山々の脇に大きな字で高原山と描かれている。そのことから察して高原山とはそれがひとつの山として存在するのではなく鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称であるらしいことがわかった。さらに調べると、それらの山はいずれも日光市と日光市に隣接する塩谷町、那須塩原市、矢板市にまたがっているようだ。
境界線上にある山頂は境界のどちらかの県あるいは市町村に半分属しているわけだから、鶏頂山も釈迦ヶ岳も中岳も西平岳も日光山域の山といってよく、それがより親近感をいだかせてくれる。あっ、鶏頂山は完全に日光市内だったw

八平ヶ原に出て高原山を眺めるたびに、いつかあの山に登ってみたいと思っていた。標高は4座とも1700メートル台なのでたいしたことはない。八平ヶ原から登る丸山は1689メートルなので丸山に登るつもりで少し頑張れば管理人でも登れるだろう。それに丸山にはいつも雪深い真冬に登っているし。
とはいえ、未体験の山に登るのに真冬は冒険過ぎて危険だ。雪が締まって安全性が高まってからにしたい。

18年もの間、冬はスノーシューで日光の山をあちこち歩き回っているのだが今年はあまりにもあっけない雪解けでスノーシューで歩ける山がなくなってしまった。だから雪に飢えている。せめて4月半ばくらいまで雪の上を歩きたいと思っている。
それが山王帽子山、外山、白根山、赤薙山、月山へと足を向けさせた。次はどこにしようかと考えたのが高原山だ。
丸山より北、というよりも福島県に近い高原山なら雪が残っていると確信している。といって膝まで潜るほどの積雪だとお手上げだが、、、

ものは試しで行ってみるか。でも、高原山は鶏頂山と釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称なのでどうせなら、4座すべてに登って、高原山に登ったということにしたいものだ。
推定距離10キロ、約7時間という計画で歩き始めた。


06:57
鬼怒川温泉郷を抜けて日塩もみじラインを走ると道路右側に赤い鳥居が見えてくる。さらに先へ進むと脇道に大きな石の鳥居が見えるが、このふたつの鳥居が日光市側から高原山に登る登山口になる。
時間も傾斜も変わらないので、どちらの鳥居から登るのがいいのかということになると難しいが、高原山初めての今日は石の鳥居から登ることにした。
このルートだと枯木沼という湿地帯を通過するようになっていて、見どころがひとつ多くなることが地図からわかる。

車のまま大鳥居をくぐると昔の鶏頂山スキー場で行き止まる。建物は残っているが見るも無惨な姿を晒している。

スキー場としての営業はやめているが広大な駐車場は鶏頂山登山者のために開放されている。

07:25
駐車場の入口部分が登山口になっている。

歩き始めてすぐに目にするのはレストハウスやレンタルスキー置き場、トイレや資材置き場などだが、すべて荒れ果てている。
それらの脇にゲレンデとして使われていたらしい草地があるので先へ進んでいく。

ここまで来ると今でもスキーができそうな、明かなゲレンデとなる。

07:59
地図にある枯木沼。
湿地帯の中を木道が走り、池もある。

春にも訪れてみたいようないい感じの湿地帯だ。

これから先はずっと雪道になるはずだからここでチェーンスパイクを装着した。
はたしてチェーンスパイクでどこまで行けるのだろうか。もちろん、アイゼンも持参しているが。

08:37
大沼入口と刻まれた石柱があって右への矢印に進むと地図にある大沼へ行けるようだ。
ただし、雪に覆われていて道は確認できなかった。

おそらく人工林だと思うが広大な桧林の中を歩く。
ここが日光から近ければ絶好のスノーシューフィールドとして使えそうだ。

08:55
弁天沼という礼所に着いた。鶏頂山の登山口にもっとも近い。
由来を表す文字が刻まれた石碑や祠、釣鐘、木の鳥居があり聖地に入り込んだかのような気がする。

ここにはそぐわない案内板があったので手持ちの地図と見比べて、方向を定めた。
今日は先に釈迦ヶ岳に登るので案内板でいう左方向へ歩いて行くことにする。

なんと広大な白樺の林。
スノーシューに絶好のロケーションではないか。来冬はここまで足を伸ばしてみようかな。
それにしてもなんとなく、地図に描かれた道の上を歩いてはいないような(笑)

かなり古いが踏跡が見つかったので辿ってみることにした。

09:39
傾斜がややきつくなると目の前に大きな山が見えてきた。コンパスで方角を確かめると鶏頂山であった。
ちなみに、ここが鶏頂山と釈迦ヶ岳との分岐となり、右へ折れると鶏頂山、左へ折れると釈迦ヶ岳へ行く。

鶏頂山へはここから見えるあの稜線上を歩いて山頂に達するようだ。
4座目として最後に登る予定だ。

足下を覗き込むと数百メートルはあろうかと思える谷になっている。斜面は絶えず、ゴロゴロガラガラと音を立てて石が落ちている。
ここから見ると左へ弧を描いてその先端が鶏頂山。その反対回りに弧を描いて釈迦ヶ岳と中岳、西平岳が位置していることから、この谷底はもしかすると噴火口ではないのだろうか。

分岐を左に折れて今日、1座目の釈迦ヶ岳へと向かう。

あれが中岳と西平岳のようだ。かなり遠い。

10:03
御岳山の山名板があるが稜線上にあるためピークのような感じがしない。
ちなみに標高は1680メートルくらいだ。

10:06
鶏頂山、釈迦ヶ岳と書かれた道標の前を通過。
ここに稜線から別れて北に向かう道がある。ハンターマウンテンスキー場のゴンドラ駅がある明神岳へと道は向かっている。

釈迦ヶ岳への登りはかなり厳しい。危険箇所もあった。

どうやら山頂らしい。

11:04
高原山神社と書かれた社がある。屋根の下は石の祠だ。
祠の右手奥に高さ2メートルはあろうかというお釈迦様が睡蓮らしき台座に座っている。台座の下の大きな石には釈迦如来と刻まれている。

山頂は広くまた、展望が良い。
山名板には標高1794.9メートルとある。一等三角点のある立派な山だ。
遠くに見える白い山は会津の山だろうか。

真西からわずか北に鶏頂山が見える。先ほどよりもずいぶん遠くなってしまった。

南からやや西寄りに、これから向かう中岳とその奥に西平岳が見えるがこれも遠い。

記念に一枚。
気温はここで10度くらい。暑くて汗をかいている。

ではこれから中岳に向かうことにしよう。
釈迦ヶ岳から120メートルほど下ってそれから50メートル登り返す。しかし、一気に100メートル下ってそれから50メートル上るというのは実はとても辛い労働になる。

ここまでチェーンスパイクで歩いてきたがこれから先はアップダウンが待ち構えているので、安全のためにアイゼンに履き替えることにした。

下りはまったく問題なかったが鞍部から登りかけるとこんなところが道になっている。

危険箇所にはロープが張ってあるが道の上にはまだ雪がたっぷり乗っていて、状況がわからない。慎重を期して歩くが時折、岩の隙間を踏み抜いてしまうことがあった。

11:53
高原山神社の祠がある。
ここが中岳らしいが山名板は見つからなかった。

中岳から63メートル下って1665メートルの鞍部から登りに転じる。
鞍部からだと47メートルの登りだ。
中岳と西平岳との標高差はわずか16メートルに過ぎないが、その16メートルは63メートル下って47メートル上ることで為しえる。

西平岳の山頂が見えてきた。3座目が目の前に迫る。

雪は少ないのにアイゼンはしっかり埋まる。
よく見ると地面は砂礫だ。火山礫らしい。

山頂のわずか下に建つこれも高原山神社。真新しい。

12:32
これが西平岳の山頂のようだが雪が多いので藪のようになっている。
歩き回って山名板を探したが見つからなかった。まっ、でも登頂ということにしよう。

神社まで下ってパンをかじり、いよいよ4座目の鶏頂山を目指すことにした。

でもその前に向こうに見える釈迦ヶ岳に登り返さなくてはならない。
う~、気が重いなw

釈迦ヶ岳直下だがよく手入れがしてあることがわかる。
路幅は2メートルくらいか、笹はきれいに刈り取られている。そして十分踏まれていて笹の侵入を防いでいる。好循環を生んでいる。
25日に登った夫婦山とは対照的だ。

13:46
釈迦ヶ岳に戻ったが時間も迫ってきたので素通りすることに。

明神岳への分岐を通り、、、

弁天沼への分岐に到着。ここも今日、二度目だ。
ここから4座目の鶏頂山へと向かう。
登りはあと120メートル、ここまで来たらやるっきゃない。頑張れ!

標高差は120メートルあるが今日、最後の山だと思うからなのか、苦痛はそれほど感じていない。
というよりは苦痛に麻痺してしまい、なにも感じなくなっているのかもしれない。でも足は惰性でちゃんと動いている(笑)

到着した。
高原山の最後、4座目の鶏頂山に着いた。よくやった。

15:00
無理して余裕のポーズをとる管理人だが、このときすでに足はよろよろになっていた。

南東の方角にさっき歩いた釈迦ヶ岳と中岳、西平岳が見える。あの稜線を往復して鶏頂山に達したのだ。よく歩いた。感無量。
中央左が釈迦ヶ岳でその右が中岳。

中岳とその右が西平岳。
時間は午後3時を大きく過ぎた。日没を迎える前に駐車場に辿り着こう。

鶏頂山からの下りは二通りあることが事前に地図で調べておいた。
別のルートを通ってみたい。

15:41
無事に弁天沼に着いた。
空はまだ青いが時間は3時40分だ。先月までだったらすでに暗くなっている。

元スキー場のカラマツ林を抜けて、、、

枯木沼に着いた。
駐車場まであとわずか。安堵する。

車が見えてきた。
朝と同じく広い駐車場に1台だけだ。

16:48
へたり込むほどではないが、やはり疲れた。
7時半に歩き始めたので9時間以上かかったことになる。
その間、食事は3回。いずれも立ち食いだ。珈琲を飲むつもりでお湯を持参したがそれも使うことがなかった。
当初の計画よりも1時間早く歩き始めたのは正解だった。

GPSが記録した時間は9時間28分。電源をオンにしてから歩き始めるまでに数分経っているから、実際には9時間20分くらいだろうか。その間、休憩は写真を撮るのと立ったままパンをかじるだけだったので実質、9時間くらい歩いたことになる。
これが限界だ。しばらくの間、山から遠ざかりたいと思う。

高原山の面白さを知ったので次の日、昭文社の山と高原地図を購入して調べたところ、日光側の登山口は鶏頂山の西の2カ所だが、塩谷町や矢板市、那須塩原市からも入山でき、そのルートは多数あることがわかった。
当分の間、楽しめそうな山という好印象を持った。


いやぁ、とにかくこれぞ登山の醍醐味とも言えるアップダウンの繰り返し。
登山口と釈迦ヶ岳との標高差は503メートルにすぎないが、アップダウンの上りだけをたした累積標高は1143メートルにもなった。距離は短いながらこれじゃ疲れるわけだわ。