古賀志山は花盛り。が、ヒカゲツツジを観るのは危険と隣り合わせ。

2023年4月13日(木) 晴

管理人が日光の山を登り始めて面白くなった頃、せっかく身近に山があるのだからと2千メートル峰のすべてを登り尽くそうというのを目標にした。
そして実際、多くの2千メートル峰を経験したのだが、経験を積んでいくうちに、それまでピークハントだった管理人の登山のスタイルは、必ずしも管理人が求めるものではないのだということがわかってきた。

汗をかきかき山頂に立ったときの喜びは誰にも共通することだと思うが、山頂に立つまでの間に素晴らしい展望に恵まれたり、多くの花と出会えたなら、その登山は喜びを2倍にも3倍にもしてくれる最高のものになるだろう。
そんな思いに気持ちが変わっていったのは、管理人が福島県の山を経験してからだ。
2016年に檜枝岐にある帝釈山に登ったのが管理人の県外初登山だった。

帝釈山の山頂は栃木県(日光市)と福島県の境界線上にあるが、日光の2千メートル峰に挑戦していた管理人は残り少なくなった未踏の山として登ってみようと思ったのである(登山口が福島県にあって栃木県にはないことから事実上、福島県の山とされている)。

登山口となる県道350号線(栗山舘岩線)猿倉口から登り始めると田代湿原に着く。
これに管理人は驚き、その美しさに心を奪われた。
山の中に沢や滝があるのはわかっていてもそこは広い湿原なのだ。
沢や滝は標高の低い方へと流れて行くが湿原はそこに水が溜まっている、すなわち平面なのである。
山の中に広い平面があることがその山の広大さ、傾斜が緩やかであることを示していて、目からうろこが剥がれ落ちていく感覚にとらわれたのである。
急峻な日光の山とはまったく違うことを実に新鮮に感じたのである。

それからの管理人は堰を切ったように福島県の山に傾倒していったわけだが、それに伴い日光の山に足が向かなくなって今日に至っている。
いずれまた、日光の山の良さを思い出して戻ってくるかもわからないが、福島県に登りたい山はたくさんあるし、まったく未知の日本アルプスにも目を向けたい。
年齢からいって管理人が山に登れる期間はそれほど長くないというのが客観的な見方であり、管理人自身、それを受け入れている。
であれば日光の山に固執せず、もっと広範囲に目を向けて、登って楽しい山を目指すべきだ、と強く思う。

福島県の山には2020年8月を最後に行くのを遠慮していたが、今月1日に車中泊旅行のついでに裏磐梯の五色沼を歩いた。
楽に歩けていい景色を観ることができ、満足できるものだった。
今年はそろそろ福島県の山に戻ろう、五色沼を歩きながらそう思った。

一方で、管理人には古賀志山というかけがえのない山があり、今年になって太平山山域(栃木市)をそれに加えた。
両者、楽に登れるといっては語弊があるが、日光の2千メートル峰に比べれば苦しさや辛さとは無縁。
歩き始めから山頂に達するまで、花があるのがいい。
展望が開ける場所が随所にあって気持ちが解放される。
足下に見える人家からは生活の匂いが立ち上って来るようで、優しさと懐かしさが感じられる。
大切にすべき山なのである。

メモ(GPSはiPhoneSEを使用した)
・歩行距離:11キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:5時間15分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:1010メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

古賀志山を最後に訪れたのは昨年の11月だから5ヶ月ぶり。
この光景を見るのも久しぶりだがいつもの光景とは少し違って見えた。
赤川ダムの湖底の一部が不自然に盛り上がっている。
昨年11月から始まった取水塔の塗装工事の際、ここを工事車両が出入りするために土を盛り上げて専用道路を設けたのだが、工事が終わったにもかかわらず道路がそのままになっているのだ。
ときが来て、赤川ダムが満水になればやがて水の力で盛り土は崩れるのだろうが今はいかにも不自然だ。


森林公園のシンボル、大きな枝垂れ桜はすっかり花を落とし、今はこの八重桜が見ごろを迎えていた。
ちなみに、前の画像で右端のピンクになっているのがこの八重桜。


芝山橋に向かう車道脇に、見た目美しいスミレの一群があった。
ヴィオラ・ソロリア プリセアナ(アメリカスミレサイシン)という外来園芸種である。
野鳥が種を運んできたのか登山者の靴に付いていた種が落ちたのか、それとも誰かが自宅に植えてあった株を移植したのかは不明。
いずれにしても山の中に入っていかないことを願う。
外来種はとにかく強いからねぇ。


道はここで古賀志山の登山口方向と細野ダム方向とに分岐する。
今日は二枚岩への近道を行くので右、細野林道へ進んだ。


細野ダムの脇を通過。


林道脇でよく見るエイザンスミレ。
咲いたばかりと見えて花の形がまだハッキリしない。


マルバスミレ
これもまだ咲いたばかり。


細野林道を北へ向かって歩いて来ると二枚岩への登山道が見つかるのでここを入っていく。


ヤマツツジとトウゴクミツバツツジがいい感じに咲いている。
いや、これらが咲いているということは、ヒカゲツツジには遅いということか?


おっ、ヒカゲツツジだ。
間に合ったようだ。
だが本来、透き通るような薄い緑の花はやや精彩を欠いてくすんでいる。枯れている花もあった。


見頃はこのトウゴクミツバツツジだった。


二枚岩に着いた。
ヒカゲツツジは11:11の位置からここまで生育しているのだが、花を見たのは11:11の位置だけだった。
やはり遅かったのだ。


アカヤシオは花は落ち、葉が出てきていた。
期待はこれから向かう斑根石山(P559、通称ごーごーきゅー)にかかった。


ヒメイワカガミは日当たりのいい場所だけ蕾を付けていた。
来週には開花するだろう。


フモトスミレ


二枚岩から斑根石山へ行くのにノーマルルートだと中尾根に出て西へ進むが、距離が長くなるため、管理人はいつも岩場のショートカットルートを利用する。
中尾根に合流する前に沢に降りて岩場を登り返すことになるが、楽しめるルートなのである。
その沢にはカタクリが数多く生育している。
だが花はすっかり終わっていて今は葉っぱが残るだけだ。


カタクリのすぐ脇にヒゲネワチガイソウが1株だけあった。
山域全体でも数は少ない。


ニガイチゴ


沢から斑根石山への登り返しは岩の連続。


咲いたばかりのヒカゲツツジを見つけた。
これから先、期待していいのだろうか?


鎖を使わずに岩を登る。
ホールドとスタンスがあるので鎖を使わずとも安全なのである。


アカヤシオは盛りは過ぎたようだが蕾を付けたのもあって、まだ数日は楽しめそうだ。


咲いたばかりと見えて二枚岩のヒカゲツツジに比べると初々しい。


このアカヤシオは見応えがあった。


斑根石山のすぐ手前のヒカゲツツジは見ごろを迎えていた。
ヒカゲツツジはその名の通り日陰に生育する。
ここでいえば日陰すなわち、北面に切れ落ちた崖っぷちに生育している。
二枚岩のヒカゲツツジを観るにはそれほど危険はないが、斑根石山は崖っぷちに行かないと間近に観ることができない。
管理人は今、足の置き場に困るほどの崖っぷちに腰を下ろしてカメラを構えている。
立った状態でカメラの液晶を覗いているとバランスを崩したときが危ない。
他の人にお勧めできるものではない。


ヒカゲツツジもアカヤシオも十分すぎるほど堪能した。
そろそろこの危ない崖っぷちから抜けだそう。
木の幹に手を添えて崖を抜けるとそこにヒメイワカガミの群落がある。
株の多くはまだ蕾も付けていないが3株だけ開花していた。


トウゴクミツバツツジ


斑根石山に到着。
昼食にいい時刻だがこのほんの少し先に日光連山が一望できる場所があるので移動しよう。


斑根石山から日光連山へ目をやったが、ほとんど見えない。
春霞でさえこんなに視界が悪いことはない。
中国から飛来した黄砂の影響に違いない。
この先、日光連山を望める場所がいくつかあるが、すべてがこんな状態だった。


昼食は終わったがお目当てのヒカゲツツジはこの先にはない。
これから先のルートだが管理人は今、古賀志山と手岡峠(ちょうかとうげ)を結ぶ、北主稜線を歩いている。
北上すると馬蹄形ルートの入口となる手岡分岐、手岡峠、北尾根分岐を経て鞍掛山あるいは長倉山を登って赤川ダムに戻ることができる。
北尾根はしばらく歩いていないことに思い至った。
植生が豊かだ。
手岡分岐→手岡峠→北尾根分岐→(北尾根)→長倉山→赤川ダムと歩いてみよう。
スミレが楽しめるだろう。


チゴユリ


ヒメスミレサイシン


ピーク540を通過。
ここからも日光連山が望めるが先ほどと同じく、黄砂で何も見えず。


北主稜線、手岡峠の手前の手岡分岐。
馬蹄形ルートの入口となっている。
ちなみに手岡分岐という名称は実際には存在しない。
管理人が地図上でわかるように名付けたものだ。


手岡峠を通過。


タチツボスミレ
他のタチツボスミレよりも色が濃かったのでニオイタチツボスミレかと思い、鼻を近づけてみたが匂いは感じなかった。


ここにも分岐がある。
北主稜線はここで終わり、北尾根コースと名前を変えて長倉山へ向かう。
左へ入ると鞍掛山に行くが管理人はその道を鞍掛山ルートと呼んでいる。


北尾根は明るく展望がいいので管理人の好みだ。
右のピークが鞍掛山、左はシゲト山。


ドライフラワーとなったコウヤボウキ。
花期は10月だがそれまでこうしている。


チゴユリ


北尾根はここで鞍掛林道と交わるが、林道を横断してさらに続く。
ここから長倉山まで、以前は鬱蒼とした桧林だったが伐採されて明るくなった。
それに伴ってスミレを多く見るようになった(気がする)。


マキノスミレ
小さい花だが色が鮮やかで美しい。
葉は細長く斜傾するのが特徴。
NHKの朝ドラの主人公、牧野富太郎の名を冠したスミレである。


長倉山


タチツボスミレ


北尾根は長倉山のすぐ先で分岐するので今日は気分新たに右へ行ってみた。


遊具があってフィールドアスレチック風。
見覚えがないことから管理人は初めて歩くのだろうか?


朝と同じく赤川ダムの畔を歩いて駐車場へと向かう。


古賀志山山域は4キロ四方、日光でいえば小田代ケ原と戦場ヶ原を合わせたほどの面積で、決して広いとは言えない。
だが、そこにルートが100本以上もあるという希有な山域である。
ルートを組み合わせると20キロにもなるから一日楽しめる。
管理人は今日、地理院地図に名のある山には登っていないがそれでも距離11キロ、累積標高差は1000メートルを超え、ほどよい疲れを感じた。
植生が豊かで多くの花を観ることができるし展望もいい。
自宅から駐車場まで1時間かかるのが難点といえば難点だが、それは贅沢だと他の登山者から叱られるかも知れない。
まっ、良いことずくめの古賀志山だが、今年になってこれに太平山山域(栃木市)が加わって山歩きの楽しさが増した。
地元、日光の山がますます遠のいていく(笑)


オマケの画像ウラシマソウを3株見つけた。
山域全体でも少ないため場所は隠しておく。

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