古賀志山で見る花たち(2021/04/11)

2021年4月11日(日) 晴れ(穏やか)

今日見た花(順不同)
ニリンソウ、トウゴクミツバツツジ、ヤマツツジ、エイザンスミレ、タチツボスミレ、フモトスミレ、アオダモ、モミジイチゴ、ニガイチゴ、マルバコンロンソウ、ヒサカキ、ミツバツチグリ、オニタビラコ、不明な花1点

花は言わずと知れた植物の生殖器官である。
しかも、人間のように衣服で隠すこともなく、動物のように体毛で隠すことなく、剥き出しである。
人はそれを見て美しいと感動したり写真に撮ったり、自宅の庭に植えたりと、臆面もなく植物の生殖器官を見て楽しんでいるが、植物にとっては人にそれらの行為を引き起こすのを本意としているわけではなく、昆虫や鳥、野生動物、風などによってタネや花粉が運ばれてその生育範囲を広げ、代々に渡って衰えなく種を保存することを最大の目的とし、それら人の行為などまったく頓着せずに生きている。
人にどのような角度から見られても写真に撮られても、見たいなら勝手に見てと、人の欲求に泰然と応える大らかさを持ち合わせているのが植物の花なのである。

管理人が花に関心を持つようになって20年近くになる。
花の美しさもさることながら、花を植物の生殖器官として見ると感心はより高まる。
今日の山行の目的とするニリンソウの性質は前回のブログにも書いたとおりだが、一輪目と二輪目が数日ずれて開花する特徴を持ち、それを生殖という観点で考えると、優良な子孫を後世に残していこうという何百年、何千年、何万年にもわたる間に得た植物の生活の知恵が想像できるのである。

さて、そのニリンソウだが、前回は古賀志山北登山道の咲き具合で今日訪れる群落地がどうなっているかを予想したが、まず間違いなく、群落地全体が白い絨毯を敷き詰めたような状態に咲いているであろう。

メモ
・歩行距離:6.9キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:4時間4分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:721メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)

起点は県道70号線から脇に入った林道内倉線である。
古賀志山の起点となる宇都宮市森林公園より日光市側にあり現在、白石川の堰堤工事用の林道として使われている。
2015年の豪雨によってピーク444(現在は鳥屋山)近くの南斜面で大規模な崩落が発生し、その土砂によって白石川が埋まり、土砂はさらに県道を越えて人家にまで達するという大規模な災害となった。
その後、現在もなお、堰堤工事と土留めの工事が行われている。
県道70号線を入ったすぐのところが駐車地になっていて、古賀志山や赤岩山を北面からアクセスするのに便利であることを昨年、知り、よく利用するようになった(工事のじゃまをしないよう多少、遠慮しながらも)。

管理人が駐車地に到着したとき、すでに12台の車が駐まっていた。
日曜日で工事は休んでいるからすべて一般の車だ。
ただし、その多くは山菜採りに訪れた人の車である。
この辺り一帯はコシアブラの宝庫として地元の人によく知られている。
見通しの利かない藪の中からガサゴソと音が聞こえてきてもそれはクマではないから安心していい(古賀志山山域にクマは生息していない)。
管理人は直売所やスーパーで売っている山菜あるいは、知人からいただいた山菜しか食べたことはないが、自ら収穫した天然の山菜は格別な美味さだそうだ。


林道は工事によって拡張されたり他所から土砂を運び込むなどした影響か、いろいろな植物が生育している。
林道脇にミツマタが1本だけあり、花をつけていた。


正面に弁天岩を眺めながら林道の奥へと向かっていく。


アカネスミレ
全体的に有毛(とくに側弁と萼片)なのと距が細長く立ち上がっている特徴があることからアカネスミレとしたが、スミレは細かい部分まで見ないと名前が特定できないのが難しいところだ。
日本のスミレ2百数十種類の中で、管理人が見てパッと名前を正しく言い当てられるのはせいぜい5・6種類に過ぎない。
すべてを覚えようなどという大それた考えは管理人になく、1シーズンに1個、2個だけ覚えていくよう心がけている。
過去のブログには間違えが多々あるだろうが、その当時の管理人の知識レベルとしてあえて修正せずそのままにしてある。


林道はいくつかに分岐するので間違えるとニリンソウ群落地へは行かない。
昨年のGPSの軌跡を頭に入れて歩いて行く。
この分岐は左だ。


涸れ沢にかかる丸太橋を渡る。
丸太橋から先、傾斜がきつくなるがニリンソウの群落地はそれほど遠くないので休まず一気に歩いてしまおう。


着いた~!
予想したとおり、ニリンソウが見頃を迎えている。
画像は全体の一部だが群落の名にふさわしい数だ。


二輪とも咲いているのもあれば二輪目はまだ蕾だったりと様々だが、いずれにしても見応えは十分だ。


開きかけているもの。


一輪目が完全に開いたもの。


二輪目が間もなく咲くもの。


一輪目の花柄の根元に二輪目の蕾が見える。


薄紫のニリンソウもあった。


斜面一面、ニリンソウで埋め尽くされている。


写真を撮り飽きた頃、女性ばかりの団体さんがご到着。
これをもって管理人はここを移動することにした。


この斜面の上が古賀志山と手岡峠を結ぶ尾根(管理人は中央稜と呼んでいる)の手岡分岐近くに合流する、岩場が連続した楽しめる尾根だ。
その尾根に乗り手岡分岐まで行って馬蹄形の一部を歩いて駐車地に戻ろう。


そう思ったのも束の間で、すぐ目の前に別の尾根が目に入った。
昨年はこの尾根の手前を右へ進路を取って手岡分岐に進んだのだが、思えば目の前に見える尾根は管理人未踏のルートであることに思い至り、昨年とは違うルートで駐車地に戻ることにした。
これで未踏ルートを1本潰せる。


始め歩きやすかった尾根は次第に木が密生するようになってきた。
地図によるとこの尾根は二本の林道に挟まれているがやがて林道に合流するように読める。
そして、確かに林道と合流したのだが、、、


林道(地図の軽車道)は土砂の進出あるいは樹木の進出によるものなのか、幅1メートルほどに狭まり、その上、藪と化していた。


藪を抜けてようやく、林道内倉線と合流することができた。
あと15分も歩けば駐車地に着くがいくらなんでも時間が早すぎる。
ここを右に折れて鳥屋山(ピーク444)、腰掛岩へ向かって花の探索をしよう。


右へ分岐するとすぐエイザンスミレが見つかった。
実にきれいなスミレで、始めは珍しがって観ていたが古賀志山山域ではごく普通に生育していることが分かった。
分布の範囲も広く、どこででも見られるが、それでもつい足を止めて写真を撮ってしまう。


ツボスミレかと思ったが葉っぱがどこか違っている。


はっきりした文様の葉。
フモトスミレだった


桧の樹林帯を抜けると一気に明るくなり、日当たりを好む植物が増えてきた。


モミジイチゴ


内倉林道と腰掛岩、鳥屋山を結ぶ短いルートだが明るくて歩きやすいので管理人の最近のお気に入り。
歩いている時は気がつかなかったがこうして画像で見ると木々の新緑が始まっていた。


ニガイチゴ


237号鉄塔の下を通過。
このルートは鉄塔の巡視路となっている。


トウゴクミツバツツジは咲き終わっているのもあればこれのように見頃なのもあった。


ヒサカキ


最近咲いた花なのかなぁ、それとも昨年の花がドライフラワー化したものなのだろうか?
宿題にしておこう。

図鑑を調べていたら「コウヤボウキ」らしいことが分かった。
花期は9~10月とずいぶん遅く、画像で花のように見えるのはやはり昨年の花がドライフラワー化したものだった。
場所はGPSと画像に記録として残っているので、咲いているときに来てみよう。


鳥屋山の手前で大きな岩が立ちはだかるが、ここは右へ迂回。
岩を子細に眺めると登れそうに見えなくもないが昨年秋以後、岩場から遠ざかっていて未だに勘を取り戻せていない。
5・6年前であれば果敢に挑んだものだが今は恐怖が先に立つ。
ゼロから練習を積み重ねてからにしよう。


続いてくさり場が2つ続くがここは岩の基部に巻き道がある。
今日はふたつとも鎖を使わずにクリアしてみた。


やがて鳥屋山(ピーク444)に到着。


鳥屋山を過ぎると尾根は南へと変わり、そこは馬蹄形ルートのランドマークともいえる腰掛岩がで~んと構えている。
西側の展望が開けていて気持ちのいい場所である。
そこにはヒカゲツツジやアカヤシオ、トウゴクミツバツツジがあってすべてが終わるまで2週間以上、楽しめる。
腰掛岩には先着者がいたのでその手前の岩に座って昼食とした。
昼飯が終わり歩き始めたところでアオダモの花が観られた。


近くで見ると花はモシャモシャしていて捉えどころがないが遠目にはとても きれいだ。


腰掛岩から一方的に下ると内倉林道と出合う。
駐車地は近い。


ミツバツチグリ


内倉林道の駐車地に近い場所にもニリンソウを観ることができ、ここのは20株くらいだったろうか、標高が低いだけに全開していた。


オニタビラコ


マルバコンロンソウ


朝、あれほど多かった車は管理人のを含めて5台に減っていた。
山菜採り諸氏は成果があったのだろうか?


昨年、ニリンソウを観る目的で群落地を訪れたが、できることなら周回コースを歩きたいと思い、考えたのが青い線。
今日も同じルートを辿ろうと思ったがニリンソウを観た後で気が変わり、未踏ルートを1本、歩いてみた。
しかし、展望がいいわけではなく岩場があるわけではなく、あまり面白みのあるルートではなかった。今回限りとしたい。
いま思えば尾根の途中で林道に入ったのが間違いだったのかも知れない。
すぐ西に315メートルの小ピークがあるので、そこへ向かって進路を変えたならば別の展開になっていたかもわからない。次の課題としよう。
さて、昨年も今年もニリンソウ目当てに歩いたわけだが、読者におかれては図を見て、ニリンソウ群落地はどこか、見当はつくでしょうか?


次回の花の探索だが、12日6時発表の予報によると今週は快晴日がない。
花の写真を撮るのに曇天は厳しい。
木曜日か金曜日なら大丈夫そうだが、予報が悪化の方へ変化しないことを祈るばかりだ。