毎年10月は古賀志山記念日。秋の古賀志山も発見ばかり!

2021年10月18日(月) 晴れ

管理人が古賀志山に始めて登ったのは2014年の10月だった。
それまで管理人は日光の山しか知らず、ただひたすら日光の山に登り続けていた。日光の山だけで管理人は十分満足できていたのである。
しかし、10月ともなると紅葉見学の車で市内の道路は大渋滞となるため、紅葉期間中は外出を控えなくてはならない事態となる。
そこで目をつけたのが日光の山とは反対方向に位置する宇都宮市の古賀志山だった。
東照宮や中禅寺湖へ向かう車で渋滞している国道を横目に走るのはとても快適で、事前に見込んでいた通りの時間で駐車場に着くことができた。

これはいい!!

紅葉盛りの時期に奥日光へ行こうとすると通常の3~5倍の時間がかかる。
日光駅前から中禅寺湖まで普通は40分で行けるのに3時間かかるのが当たり前で、混雑のピーク時だと5時間という記録があるくらいだ。

古賀志山は麓の宇都宮市森林公園から登るのが一般的で、同公園が公開しているホームページには写真付きで詳しい説明が掲載されていて、それを印刷して臨んだ。
もっとも多く利用されているルートを利用したから当然と言えるが、山頂へは2時間たらずで着いた。危険な箇所はなく、幼児から高齢者まで誰にでも安全に楽しめる里山なのである。

山頂からの眺めは大展望というわけにはいかず、宇都宮市と鹿沼市の一部が木々の間から見えるだけだった。
そこで森林公園のホームページに紹介されている、東稜見晴台に足を延ばしてみた。
古賀志山山頂とは5分ほどで行き来できる。
見晴台は古賀志山とを結ぶ稜線の突端にあって下は崖である。
それだけに遮るものがなく、遠くの景色が見渡せる。目の前に広がっているのは宇都宮市街で、その先には50キロ離れた筑波山が見える。

2千メートル峰の山頂からだと麓の街並みを垂直に近い角度から見ることになるが、標高580メートルの里山からだと斜め上から眺めることになり、町の様子がとても身近に感じられる。
なるほど、これが2千メートル峰の山とは違う、標高差300メートルしかない里山からの眺めってものなのかと、妙に感心したことを覚えている。

さて、展望を堪能して満足したのか気持ちに余裕が生まれた。
実は今いる見晴台は垂直に近い岩壁の上である。
興味本位で見回すと崖の下に降りられそうなすき間が見つかった。
そこを降りていくのはかなり勇気を必要としたが行けるところまで行ってみよう、そんな怖いもの見たさ、悪戯心に背を押されて行ったところ、、、、この先の話は2014年10月のブログでどうぞ。

その時の恐怖と再挑戦の意欲を忘れることがないよう、古賀志山に初めて訪れた10月を管理人は「古賀志山記念日」と決め、毎年訪れるようになったのである。
最初に訪れた2014年以後、古賀志山の面白さに魅せられて、記念日だけでなく、 “ネジが外れた” かのように日参するようになったのは当ブログに記録しているとおりである。

昨年は帯状疱疹の後遺症で苦しんでいたこともあって12月にずれ込んでしまったが、記録を見るとひと月前後のズレはあっても古賀志山に登っているから 、2014年の誓いは果たせているように思える。
楽しませてもらっている山に対して義理堅いのである、管理人は(笑)

今年もその記念日がやって来た。
きょうの課題は4月に発見したある植物の花を見ることである。
10月に咲く珍しい植物の花なのである。

結果(GPSはGARMIN Instinctを使用した)
・歩行距離:10.4キロ(GPSログをカシミール3Dで処理した値)
・所要時間:5時間25分(写真撮影と休憩を含む)
・累積標高:909メートル(アップダウンのうち、上昇分の累積)
※Instinctは距離、累積標高ともに値が小さく出る傾向にある。

秋晴れに恵まれ絶好の古賀志山日和となったきょう、宇都宮市森林公園の駐車場はこの時間、すでに2/3ほど埋まっていた。
その多くは古賀志山に日参する地元の古賀志山愛好家である。


赤川ダムから眺める古賀志山全景。
これから秋が深まるにつれて木々は赤く染まってまた違った光景が見られる。
しかしそれは12月になってからだ。


時間は一気に長倉山の山頂に飛んだ。
長倉山へは駐車場を出てすぐ山に入っていくのが正しいルートだが、前に挙げた光景をカメラに収めたくて撮影後、駐車場に戻るのが面倒で登山口から遠ざかるようにして細野林道を北上し、ここへ来た。


長倉山で道は鞍掛山に向かう北主稜線とショートカットして鞍掛山の先へ出る北尾根とに分岐する。
北主稜線は距離が長く時間がかかるためスタートが遅かった今日は北尾根を辿った。


さっそくお目当ての花が見つかった。
10月に咲く数少ない花、コウヤボウキである。
今年4月の花の探索で、葉はみずみずしい新緑なのに花は枯れているという、奇妙な植物と出合った。→新緑時期のコウヤボウキ

帰宅して調べると、図鑑に「コウヤボウキ」と出ていた。
地方によって異なるだろうが、古賀志山のような環境だと花期は9月末から10月中旬頃であろうと推測し、その機会を待っていた。ドンピシャだった。
花は咲いたばかりだった。葉もまだきれいな緑色をしていた。
4月に見たドライフラワーはなくなっていた。


コウヤボウキは枝の先に15ミリくらいの頭花をつけ、頭花は細長い花が集まって構成されている。
花は枯れたあと、ドライフラワーとして冬、春、夏を越し秋に再び咲く。
花はその年に出た新しい枝の先に付くそうだが、そうすると管理人が4月に見た枯れた花(昨年の枝)はいつ、なくなるのだろうという疑問が湧いた。宿題にしておこう。

植物の種類が豊かな古賀志山でさえこの時期に花を見るのは珍しいのでじっくり観察した。
コウヤボウキは高野箒と書き、高野山地方では茎を集めて束にして、箒の代わりに使ったことから名がついたと図鑑にある。
ただしそれは、花後、ドライフラワーになってからのことのように思える。


梅の花に似た美しさ、センブリもあちこちで見かけた。


北尾根からの展望は良い。


深紅の実をつけたツルリンドウを見つけた。
一粒つまんで口に含んでみた。
味はなくまた、ぼそぼそで、水気のなくなった古いリンゴを食べているようだった。毒はないようだが念のため口から吐き出した。
ちなみに、この日見た葉っぱはきれいな緑色をしていたが花をつける前はもっと色が濃く、紫色に近い。
光合成が進むにつれて来年のための栄養素を蓄えるとこのようにきれいな緑色になるのだろうか?
それと葉っぱに不規則な紋様が描かれているが、これはおそらくなんらかの虫が葉っぱの表面を食べながら這いずり回った結果ではないだろうか?


アキノキリンソウがかろうじて生き残っていた。


ムラサキヤシオの狂い咲きなんだろうか?


真っ赤な実をつけたオオカメノキ。
オオカメノキは背が高く、赤い実は鳥に見つけられやすい色のはずなのだがどういうわけか、食べてもらえない。
野鳥の味覚に合わないのだろうか、最後まで残る。


北尾根は大きなアップダウンがないのでとても歩きやすく、管理人お気に入りのルートである。
北面に見える鞍掛山のアップダウンをゼーゼーいいながら歩かなくてもちゃんと古賀志山まで行くことができる。


ツルリンドウの赤い実があちこちで目立つ。
名前の通り蔓性植物のツルリンドウは、近くに別の植物があればそれに絡んで生長するが、何もないと地面を這う。
そのため花をつける前だと目立たず、つい見逃してしまうが実をつけるとすぐに見つけることが出来る。
北尾根だけでずいぶん多くのツルリンドウを見ることができたが、これで古賀志山山域にはたくさん存在する植物であることがわかった。


ご多分に漏れずこのルートも古賀志山らしさをよく表している。


手岡峠(ちょうかとうげ)。
古賀志山は登山口が宇都宮市に属していることから山域全体も宇都宮市と思われがちだが、一部は日光市に属しているし、山域北側の多くは日光市と接している。
ここでいえばこの尾根の中央から左側が宇都宮市で右側は日光市となっている。


手岡分岐と管理人が名付けた馬蹄形ルート入口の分岐。
右斜めに下っていくのが馬蹄形ルート。直進するとピーク559、次に古賀志山へいく。
かつてはとてもわかりづらい分岐で、それが読図の醍醐味だったが今は道標が立ち、ここが分岐点であることが誰にでもわかるようになった。
ただし、問題はこの分岐を入った先である。
初めて馬蹄形ルートを歩く場合、読図は必須となる。


分岐の少し先にピーク状になった場所があってそこに丸太で組んだベンチが置かれている。
その突端の崖の上に立つとこれぞ里山から眺める景色といった田園風景が広がっていて、これまでの疲れを癒してくれる。


丸太のベンチに腰をかけ、箱庭的な景色を眺めながら1ケ59kcalのクリームパンをひとつ腹に収めた。


10分の休憩を取って先へ進んだ。
北尾根ルートはすでに終わっていて今は北主稜線を歩いている。
このルートも古賀志山を象徴するように岩また岩の連続である。


ピーク540から日光連山を眺める。
アブラツツジが色づき始めていた。


アブラツツジ
他のツツジと同じように秋が深まるとアブラツツジの葉も深紅に染まる。


地元名、赤松岩
古い鎖が朽ちた桧の根元にかかっている。
4月に上がってみたが画像の岩全体を上がるわけではなく、岩の左基部から岩の中段まで上がり、そこで鎖に取り付くようになっている。
鎖の長さは3メートルほどで、岩自体にそれほど危険はない。
ただし、鎖の支点となっている朽ちた桧がいつ倒れるのか、それが問題である。
なお、正しいルートは岩の左を巻くようにしっかり付いている。


崖際の細くて怖い道を上がって行くとT字路にぶつかる。
古賀志山へはここを左に直角に曲がる。
道標には右へも行けるように書いてあるが右を見ると大きな岩が立ちはだかっていて道はない。
岩をよじ登ると初めて道標に書かれた道が現れる。
次にピーク559(地元名:班根石山)へと向かう。


ピーク559から筑波山を眺める。
古賀志山山域は標高は低いものの独立峰の特徴で遠くの展望が利く場所がいくつもある。


富士見峠手前の通称「伐採地」。
管理人が古賀志山に日参するようになった数年前、ここは桧が伐採されて地肌が剥き出しとなった地であった。
地元の人の間ではそのまんま「伐採地」と呼ばれていたがその後、桧の幼樹が植林されて今のように緑が復活した。
なお、古賀志山山域は昭文社「山と高原地図」には収録されてなく、地理院地図が頼りだが、地理院地図に描かれている情報は乏しく、何度もなんども歩き込まないと古賀志山の地理を理解するのは難しい。
古賀志山愛好家で組織するNPO法人「古賀志山を守ろう会」が地理院地図に情報を書き込んだ登山地図を公開(PDF版)しているので参考になるだろう。→「古賀志山周辺地図


富士見峠まで降りてきた。
ここまで来ると古賀志山はそれほど遠くはないが、ここから先でもう一汗かかなくてはならない。
が、きょうの最後の上りとなので頑張ろう。


古賀志山と東稜見晴台とを結ぶ稜線の鞍部に達した。
あと数分で古賀志山の山頂に着く。


鞍部まで上がって右を見ると木の根っ子だらけの斜面が目に入る。
これが古賀志山山頂への最後の上りである。


ふ~、、、
と~ちょ~!
4月以来、半年ぶりの古賀志山である。


山頂は木が生い茂って展望がいいとはいえない。
見えるのは宇都宮市と鹿沼市との境界辺り。
ここでクリームパン2ヶと紅茶を飲みながらマッタリした時間を過ごした。
さ~て、下山ルートはどれにしようかな?
久しぶりに南へ、岩コースを使って降りてみよう。


岩コースで降りてきたものの、途中で魔界へ引きずり込まれるようにして細くて暗い、魅惑的な踏跡に足を踏み入れてしまった。
管理人、未踏のルートなのかなと思ったからだ(帰宅して調べると過去に1・2度歩いたことがあった)。


ルートから外れた林の奥にサラシナショウマがポツンと咲いていた。


赤川ダムへ行く林道古賀志線が見えるところまで降りてきた。


ノハラアザミ(たぶん)


林道古賀志線を歩いて通称「三叉路」まで来ると、ここで再び山道に入る。
ちなみに古賀志山山域を走る林道は自転車のジャパンカップで使われているが、ここが標高が最も高く傾斜が急で、選手にとってもっと厳しい地点。


コウヤボウキがここにも。


そしてツルリンドウも。
昨年、ツルリンドウを探し歩いたのが嘘のように、あちこちで見られた。


スタート地点の赤川ダムまで戻って来た。
湖面は朝と同じくとても静かで穏やかな秋を感じる。