読図 地図にない道とあっても通れない道。

10月30日の記事に掲載した地図を再掲。
管理人は山行中、かなり頻繁に地図を見ます。自分が今いる位置はどこなのかを知るとその先の地形が易しいのか厳しいのかを予測することができるし、万一、道迷いをしてもそこから脱出するのに役立ちます。
加えてGPSを使えば現在地の特定がさらに容易となります。

道と標識が整ったコースを歩く分には必要のない地図やGPSですが、ハイカーが行かない場所を好んで歩く管理人には地図、コンパス、GPSは必須のアイテムとなります。
が、肝心なところで使わなくては、、、
まぁ、山行が終わってGPSが記録したデータをPCで再現しながら、缶ビール片手にひとり反省会をするにも役立ちます(笑)。

この日は日光と足尾を結ぶ旧道の細尾峠から歩き始めて薬師岳に登り、南下して地蔵岳、夕日岳と3つの山を縦走しました。

薬師岳への道は地図にはありませんが、日足トンネル(尾根の下)を越えてしばらく行った分岐から東へ向かってハッキリした踏み跡がついていたので、すんなりと山頂にたどり着きました。
山頂でひと休みしてからC地点へ下って地蔵岳、夕日岳へと向かいました。

帰りは薬師岳を迂回してC→Bで細尾峠に戻る予定でした。薬師岳の手前まで来ると朝、通過した見覚えのある分岐Cに着きました。
笹原にわずかな踏み跡があったのでこれがC→Bであろうと考え、笹を分けながら歩いて行くと朝歩いた分岐Aに出たのでそのまま細尾峠へ。
この間、尾根を下って途中で深い沢をトラバースしたり、距離が長いしと、なんとなく地図の道とは違うなと思いながら、です。

家に帰ってGPSが記録したデータを地図上に描いてみました(上の画像の赤線)。するとC→Bだと考えて歩いた道は地図上の道とはまったく違い、分岐Cから西へ伸びる尾根を進み途中で進路を北に変え、今度は北西に変えて沢をトラバースしながら地図上の道と合流(A地点)しているのです。
軌跡を地図に重ね合わせて初めて、尾根を下り沢をトラバースした理由がわかりました。

このように地図上の道や分岐点が実際とは違っている、これをどのように理解すればいいのか、考えたことをまとめてみました。
まず初めにA→D→Cの道ができた理由を推測。
Ⅰ.昔はたしかにB→Cの道はあった。しかし、ほとんどの人が薬師岳に登るためにB→Cは使われなくなり、やがて笹に覆われて見えなくなった。

Ⅱ.それでも歩こうと思った人がいて、見当をつけて歩いたのがA地点からD→Cへと向かう笹原だった。次の人が同じ道を辿るようになって次第に踏み跡となった。

Ⅲ.B~Cの区間で道の崩落があって通れなくなったために代用を探し、もっとも歩きやすかったのがA→D→Cであった。

次に往路でとるべき対応について。
Ⅰ.分岐を見つけたのでそこが地図上のどのあたりに相当するのかを、実際の地形と地図を見比べてあたりをつける。

Ⅱ.コンパスを使って分岐から延びる道の方角を確かめる。

Ⅲ.目的地である薬師岳へ向かっている道を進む。
という手順で無事に薬師岳に到着するはずですが、このケースでは薬師岳への道はハッキリしていてⅠとⅡの対応は必要ない状況でした。

管理人はA地点が分岐していることからそこをB地点と錯覚したのですが、A地点から2本の道が延びている方角の片方は薬師岳に向かい、もう片方は尾根をトラバースしていてB地点から延びる2本の道とほぼ同じです。
地形図を子細に眺めてもA地点とB地点とは際だった差異は見つけられません。管理人には。
わずかな時間でここはA地点であると特定できたとすればそれば地図読みの達人に違いありません。

ただし、こういう場面に遭遇したときに役に立つのがGPSです。具体的には、もっとも簡単な方法としてGPSに表示される地図で現在地を知るということ。
あるいはGPSに表示される緯度経度を地図に投影して現在地を知るという方法があります。ただしA地点とB地点の距離は130メートルしかないので25000地図だと厳密に投影しないとAとBは同じ地点のように見えてしまいます(130メートルは地図上で約5ミリ)。

もうひとつはGPSにあらかじめB地点をメモリしておき、A地点(分岐点)に来たときにGPSに表示される現在地を確認し、ここはまだB地点ではない、と判断する。
しかし、B地点に着いたらそこには薬師岳を迂回する道(地図の点線)がないため多少、混乱するでしょう。

さらにはGPSの高度計機能を利用して、B地点の標高は1350メートルなのに今いる場所(A地点)は1280メートルだからB地点はもう少し先である、と判断する方法もあります。

とまあ、いろいろな方法で現在地がA地点であることを知ることはできるわけですが、現実には薬師岳に向かう方角も分岐する方角も同じでなおかつ、道迷いの心配もないA地点とB地点しかも、130メートルと近接している2地点を特定する必要があるのかどうか、と管理人は考えました。

次に復路でとるべき対応です。
Ⅰ.夕日岳からの戻りで分岐を見つけましたがここは朝、薬師岳から下りるときに確認しているのでC地点であることに疑いの余地はありません。

Ⅱ.問題となるのは薬師岳を迂回するC→Bの把握です。コンパスを取り出して目の前に見える踏み跡の方角を確認すべきでした。

Ⅲ.地図上の道C→Bは北西に向かっていますがその方角に見えるのは笹原だけで、ちゃんとした道は薬師岳への登りしかない。といって踏み跡はほぼ真西へ向かっていてなんだか怪しい。しかし、迂回路らしいのはそれしかないので進む。あるいは、笹をかき分けてでもC→Bへと進む。
この二者択一しかありませんが管理人は簡単な、踏み跡を辿りました。その結果が冒頭に書いたような尾根の下り、沢のトラバース、長い距離となったわけです。


長い時間お付き合いいただきましたが、管理人が信頼する国土地理院の地図(正式には地形図と呼ぶそうだ)であっても、すでに使われなくなった道がそのままになっていたり、地図にない道があることを証明するような山行でした。
もっとも、GPSが記録した軌跡を地図に投影して初めてわかったことなので、その作業をしなければ気がつかなかったともいえます。

蛇足ながら、山行のたびにGPSを持って歩くとこのような事例をなんども経験します。地図上のコースを歩いたつもりなのに実際はそうではなかった。その発見は実に新鮮かつ、驚きです。
そういった経験が読図力を向上させるのではないかと信じ、山行が終わるとGPSで記録した軌跡を地図に投影しては頷いたり首を傾げたりと、終わってもまだなお山行気分に浸っている次第です。
次回は地図とコンパスを頼りにA→B→Cを歩いてみようと思います。

読図 地図にない道とあっても通れない道。」への2件のフィードバック

  1. 谺 拓山

    初めまして、谺 拓山と申します。
    地図読みには自信を持っていると自負している者です。
    C→Bは谷状の斜面を緩やかに下っています。C→Dは急な尾根を下っています。その違いを分からなければいけませんね。
    またAとBの違いは、平坦な尾根のすぐ先か、急な尾根を登った先かである程度は違う位置と分からなければいけませんね。
    普段から地図と地形を見比べながら歩く習慣を付ければ、難しいことではないと思います。

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