凍る滝として人気の雲竜瀑へ、こんな季節だから行ってみた。

2016年5月7日(土) 晴れたり曇ったり

合併前の日光市(旧日光市)には滝が48もあるという。
それらひとつひとつを自分で歩き、詳細を記述した人がいて、著書がある。
管理人、この本を参考にしたり人づてに聞いていくつかの滝を訪ね歩いているが、目的の滝に到達するのに川や沢を安全に遡行するといった特別な技術をもっているわけではないので、行ける場所に限りがある。
本の著者はかなり奥まった滝を訪れているので沢登りの技術をもっているのであろうと思うが、管理人のレベルだとそうはいかない。せいぜいハイキングの延長で滝を見にいくという程度だ。

日光最大、落差180メートルという雲竜瀑はどうか。

実は意外に簡単なのだ。
川を遡行するがほとんどフラットだしクライミングの道具も必要としない。川の遡行は全行程の1/3と短く、あとは長い林道歩きだ。それもアスファルト道路なのでスニーカーで大丈夫だ。
などとあまりにも簡単に書くとそれを鵜呑みにして地図も持たず、街歩き程度の軽装で来る人がいるかもわからないので、重要な注意事項を書いておく。
・雨の翌日は水量が多くて渡渉が困難、というよりも流される危険がある。もしも水量が膝より上にあるようならやめておくのが無難。
・雨当日は渡渉するにも岩が濡れているので滑って転倒する恐れがある。そればかりか岩に身体を打ちつけること必至。
・同じく、雨当日は急な増水がある。ここには雲竜瀑を含めて7つの滝があり、それらから集まった水で一気に増水する。
・渡渉は膝下まで水に浸かるため長靴が必須。ただし、苔の上は滑ります。
・川の両岸は切り立った脆い岸壁なので落石がある。ヘルメットを着用するか石の直撃を覚悟。
・お馴染みの「山と高原地図」にルートは記載されていない。また、ネットの情報はほとんどが冬のものであり、それも人によってルートが異なっているので当てにできない。
・クマの生活圏であることを理解しておく。

そんなわけなので、雨の心配がなく、川が凍ってアイゼンを装着していればその上を歩けるという厳冬期よりも注意を要するのがこの時期の雲竜瀑だ。冒頭に、意外と簡単と書いたのは天候を読み、装備もしっかり準備して初めて得られるものと理解されたい(なんちゃって)。

それでは行ってきます。


7:46
東照宮裏手の歴史探勝路と並行する車道をひた走ると道は遮断機で遮られる。ここがそう。
東武日光駅から6キロくらいあるでしょうか、歩くには長すぎるので電車の方は東照宮までバスに乗るか日光駅からタクシーというのが一般的。
林道はここで二股になり、左が雲竜瀑への林道で直進(写真の右)すると砂防堰堤コース。遮断機はロックされていて特殊な鍵がなければ開くことが出来ない。したがって、林道関係者以外はここから歩いて雲竜瀑に向かうことになる。


雲竜瀑の下流は稲荷川で昔は別名、暴れ川と云われ少しの雨でも氾濫し町をひとつ丸ごと消滅させたと聞いている。そのためいくつもの砂防堰堤が造られた。それは大正時代に遡り、現在もなお工事が進行している。
この林道は砂防堰堤の工事に使われている。
それにしても今日のブログは初めから暗い出だしだなw

この時間、霧に包まれていい感じになっているが今日はこの霧に吸い込まれるように昇る雲竜瀑を見たくてやってきた。それを伝えたかったために「霧」で始めてみた次第。五里霧中w


んっ、前方に何かいるぞ!
タヌキか?


こちらに気づくと側溝に身を隠したので帰ってから画像を拡大してみるとタヌキではない。アナグマらしい。熊でなくてよかったぁ(^^)


8:22
日向(ひなた)ダム展望台。
天気が良ければここからダムの全貌が見るのだが今日は霧にかすんで何も見えない。


テーブルとベンチがあって休憩できる。おまけに遊園地並みに双眼鏡まで備え付けられている。
ベンチの向こうの支柱はダムを監視するカメラ。


林道脇の斜面の崩落が激しくてこのような金属ネットで覆われていたりする。
ネットのない場所では大小様々な石が道路上に落ちている。


新緑は始まっているものの、まだ見るべき花は少ない。
バイケイソウが小群落をつくっていた。


これは日光に広く分布しているタチツボスミレ。


林道は山間を曲がりくねっているがコンパスが北を示すと正面に赤薙山と赤薙神社奥社跡を結ぶ稜線が見える。左のピークが奥社跡。右から2つ目のピークが赤薙山。一番右はピーク1767。
と、山の名前を書いたがその場でパッと言い当てることができれば地図読みもプロ並み。管理人はまだそこには至らない。
目を皿のようにして地図を見つめ山の方角、傾斜の具合や遠近から山名を同定するが時間がかかる。なかなか難しいものです。
それにしても晴れてしまったな。天に昇る龍は見られるのだろうか?


進行右手の斜面にオオカメノキが花をつけていた。


林道の本線から別れて雲竜瀑へと向かう。


ここでさらに別れるので右へ進む。向こうに見えるガードレールが本線なのだがそこは斜面の崩落が激しくて、路上に大小の岩が堆積している。


9:32
別れた林道の終点に来て初めて道標と出合う。示す方向に河原へ下りる階段がある。


さあ、ここで河原を歩く準備。
片手に長靴をぶら下げて歩いてきた。それをここで履く。
長靴は普通のと違って農作業に使う薄手で足に密着するタイプだ。膝下まで水に浸かるため普通の長靴のようにガバガバだと水の浮力でうまく歩けない。よって、これがベスト。コンパクトに折りたためるし。


同じ場所から目を遠くにやると雲竜瀑の最上部、滝の始まりが見える。
長さは180メートルもあるのでここから見えるのはほんの一部で、大部分は岩陰をぬうようにして落ちているため見えない。


河原へ下りる立派な階段があるがむろん、ハイカーのためではない。
ここを雲竜渓谷と呼び雲竜瀑の先にも6つの滝がある。それらから流れ出る岩、土砂をくい止めるための堰堤工事の計画でもあるのだろうか、河原のあちこちに国交省が付けたであろうピンクのリボンと岩に打ち込まれたボルトが見られる。階段はそれら関係者が渓谷を歩けるように設けたものと考える。


河原は雲竜瀑に辿り着くまで終始、こんな具合。BBQができるような砂地の河原をイメージしていると期待を裏切られる。
川の両側は切り立った壁となっているが度重なる増水によってえぐられ、河原はそこから流れ出た大小の石や岩で埋め尽くされている。


管理人、これで4回目だが水量はいつもこれくらいだ。雨が降らない限り、変化はないのかもしれない。
渡渉するには流れが緩やかで水深の浅い場所を探して、慎重に。


時節柄、プランクトンが発生するためか水の透明度は悪く濁っている。また、生臭い。


河床は苔が生えていて滑るので出来るだけ岩を伝いながら先へ進むのが得策。
時折、こんな大股開きを強いられる箇所があるが、管理人の短足のせいにしておこうw


10:14
河原を歩くこと40分。前方に滝が見えてきた。意外と近いでしょ(^^)
ここまで来ると滝の最上部は岩に隠れて見えない。


雲竜瀑近撮。
地図によると滝は3段で構成されているのでここから見えるのはおそらく、二段目と三段目であろう。
近くまで寄れないため華厳滝ほどの迫力を感じないが、それにしてもすごい落差だ。
今月末あたりになると岩壁に張り付くようにして生育している木々が芽を吹いて、滝がよりいっそう映えて見える。
朝は霧が立ちこめていたので雲の上に昇る龍を見られるものと期待していたのに残念。



今から6年前の9月の雲竜瀑。
これぞまさに龍が雲を突き抜けて天に駆け上るといった光景。今日もこんな雲竜瀑を見たかったのに~(^^)


11:07
雲竜瀑を見終わってブログはいきなり、先ほどの階段まで来てしまった。なにしろ同じ河原を往復したので(^^;)
ここに段々畑のような四角い石が並んでいる。もちろん、人工物。流れを弱めるための障害物だ。
水に浸かっている石の表面には苔が生え、それが実によく滑る。行程中、もっとも気をつけるべき場所かもしれないw


靴を履き替えた場所まで来て、ここにこんな階段などあったかなと思う。
左に見える堰堤の落差は5メートル以上あるが、この階段を下りればさらに下流の河原に下りられるのではないか、そうすれば車を置いた場所まで別ルートで戻れる。よしっ、行ってみよう。


おぉ、斜面に鎖まで付いている。これなら間違いなく河原に下りられる、と確信したのでどんどん下っていく。


やっ、道は途切れ河原まで5メートルもある崖に出てしまった。周りを見回してもこの先に踏跡はない。
あの階段、あの鎖はなんだったのか? 途方にくれる管理人である。川が凍ってその上に雪が厚く積もったときのルートだろうか、しばし考えるも答えが見つからない。
ここは危険を冒してはならない。熟考の末、引き返すことにした。


時間はまだ早いので朝は気が急いてみる余裕がなかった植物を観察しながら帰ろう。
これはアジサイ科のイワガラミ。名前の通り岩を伝い成長していく。そばに木があれば絡みついて成長する。それが名の由来。花はガクアジサイと同じ(装飾花の枚数に違いがあるが)。
同じ性質を持つツルアジサイの葉とそっくりだが、鋸歯の荒さが異なる。


12:45
日向ダムの展望台まで戻ると朝は霧で見えなかった砂防堰堤が一望できた。
河原からの高さ46メートル、幅173メートルの巨大堰堤だ。そしてここに溜めることができる土砂はなんと、10トントラック換算で21万5千台分。
ちなみに総事業費は43億6千万円だそうだ(と、説明板にある)。


数は少ないがトウゴクミツバツツジが見頃ですな。


ヒトリシズカ


セントウソウ


帰りは下りなのでさすがに早い。


13:43
往復距離14.4キロ、所要時間、約6時間の冒険でした。


オマケで別のハイキングコースのご紹介。
上の写真の遮断機を出るとすぐ左に別の遮断機がある。その脇を通り抜けるとこのような道標があるのでここを右へ、道標の「砂防堰堤群」方向にしたがって歩くと稲荷川に沿って、有形文化財となっている砂防堰堤を見学しながら東照宮の裏手に出られる。