霧降高原・丸山。強運のOさんのおかげで晴れた。

2015年3月13日(金) 天候:晴れ
霧降高原・丸山

管理人がガイドを務めるスノーシューツアーも終盤を迎えた。2月は週に5日続けて開催したこともあったが、3月になるとぐっと減って3日連続開催が最長となった。
日光より南の地方ではサクラの便りが聞こえる季節になり、話題はもっぱらお花見をいつにしようかといったことになっているのだろう。

だが、スノーシューの面白さを知ってしまうと、お花見はまだ2~3週も先の話でもあり今はまだスノーシューを楽しもうと日光を訪れてくれる人が少なからずいる。
今日のお客さまもそのひとりで、スノーシューのガイドを務める管理人が用意している6つのコースすべてを経験済みのOさんと、Oさんが誘ってくれた山友のEさんである。
特筆すべきはOさん、なんと今冬6回目の参加だ。
6つのコースを経験するには6日も必要とされると思われるが、うち2つはロングコースとハードコースを選択することで兼ねる。つまり、Oさんは16キロのロングコース(※1)と6時間を要する難コース(※2)を経験済みであり、丸山は今日で3回目なのだ。

この日はスノーシュー初体験のEさんの強い希望で当初は誰にでも歩ける易しい金精沢を予定していたのだが、スキーを趣味にしているEさんであれば多少の厳しい傾斜があっても問題ないのではないか、そう判断したOさんの説得で直前になって丸山へ変更した経緯がある。

問題はこの日の天気予報であった。春特有の目まぐるしく変化する天気に予報が果たしてどこまで追いつけるのか、管理人の最大の関心はそこであった。雨の日のスノーシューツアーほど惨めなものはない、雨でぐちゃぐちゃになった雪の上をうつむいて歩くなんて、スノーシューの楽しみが半減どころかなくなってしまう。
それを考えているとまたもや胃が痛くなるが、相手はなにしろOさんだ。
過去5回のうち晴れが3回、雪の降る寒い日ではあったが日光では珍しい霧氷が見られたし、金精沢では曇天ではあったがフクロウを見た。Oさん、強い運の持ち主なのだ。ここは神頼みならぬOさん頼みだ。

当日、6時にはすでに晴れていた。最新の予報でも一日晴れとなっている。
いいツアーになりそうだ。

※1 氷瀑・庵滝ツアー
※2 刈込湖~光徳ツアー


IMG_0288まだ雪がたっぷり残る霧降高原だが春の足音は確実に近づいていて、木々の枝はすでに開花を待っているかのように芽を膨らませている。

2本のツノを持つオオカメノキの冬芽。

IMG_0289今週9日、日光広域で降った雨はここ霧降高原も例外ではなく、事前に問いあわせたところ雪質はかなり劣化しているとのことであった。
が、日当たりの善し悪しや木々の多さによって異なり、ふかふかの雪も十分味わうことができたのは幸いであった。

IMG_0292最初の難関はこの沢を渡ることだ。これまでのツアーではほぼ例外なく、参加者を泣かせている。
この日は9日の雨でアイスバーンと化した古い雪の上に、その後降った5センチほどの新雪が重なっていたが、5センチではなんの役にも立たない。スノーシューのクランポンは新雪を通過して硬い氷の上を歩くのと同じだ。
しかも斜面になっているのでスノーシューが沢側に流される。

IMG_0294第2の難関。
ここも斜面を横切るのだが第1の難関と同じでスノーシューのクランポンが利かず、沢側に向かってずるずると滑る。

IMG_0295ザーという音がしたので振り返ると、管理人のすぐ後ろを歩いていたはずのEさんがこんなところに。上の写真の場所から滑落したのだ。
本人はさぞ驚いたことと思うが滑り落ちた距離は5メートル。自然に止まるからなんら心配はない。管理人も同じ場所まで下りていっしょに歩くことにした。
滑落にもめげずに元の場所に登り返したのだから大した根性である。

IMG_0297このあと、丸山の裾野を周って八平ヶ原に到着。Eさん、先ほどの滑落のことなど忘れて良い笑顔で登ってきた。

IMG_0299先に八平ヶ原に着いていたOさん。ここに立つのはこれで今冬3回目だ。
それにしても素晴らしい青空だ。これほどの天気になってくれるとは思わなかった。
Oさんは今日で6回目のツアーとなるが降雪も快晴も雪霞もすべて経験し、それぞれに良さがあることをわかって楽しんでくれている。

IMG_0304滑落により体力が消耗したEさんは少し遅れているため管理人がフォローすることにして、Oさんには先に行ってもらう。
健脚の人が遅れがちの人と同じペースで歩くのはかえって疲れるのだ。
もっとも、管理人が普通の速度で歩いたとしてもOさんの速さにはかなわないから、危険箇所を除いてOさんにはいつも先に行ってもらっている。

IMG_0306ここが丸山コースでもっとも展望が開けた場所だ。関東平野が一望できるし福島県の山まで見える。
Eさん、山頂近くになって元気を取り戻したのかいいペースで歩いている。
Eさんに登頂の喜びを味わってもらうために、ここで先頭を譲った。山頂にはすでにOさんが到着しているはずだ。

IMG_0308先に山頂に着いていたOさんが、苦労して登頂したEさんを拍手で迎えてくれた。
そういう場面、見ている管理人の方が嬉しくなるじゃないか。
冒頭に書いたとおり、当初の予定では誰にでも歩ける金精沢にしておいたのだが、丸山に変更したOさんとEさんの判断は正しかったと言えるだろう。

IMG_0310灰色の雲がもくもくと出てきたが今日の丸山からは赤薙山とそれに続く4つのピークがよく見える。4つ目のピークに隠れて見えないが、5つ目のピークが我が愛しの女峰山だ。
Oさんの今年の目標はその女峰山に登ることだそうだ。管理人はそれまでに最大限の情報を集め、Oさんに提供してあげよう。

IMG_0325丸山を南へ下る途中に鞍部がふたつある。
管理人はそれを第1鞍部、第2鞍部と呼んでいるが、ここは第2鞍部。第1鞍部の下方に位置する広大な笹原だ。
時間に余裕があるときはここから赤薙山方面に登り返して焼石金剛まで行くのだが、今日は登山道にしたがって小丸山に下りることにした。
ちなみに、焼石金剛へ行くには丸山を二度登るのに相当する運動量になる。

IMG_0327カメラに収まりきれないほど広大な第2鞍部。前を行くOさんの位置からだと天気がいい日には関東平野が一望できるはずだ。
日差しを遮るものがない第2鞍部の雪質は悪く、歩くとバリバリという音がする。

IMG_0330すっかり回復したEさんはペースも上がり管理人と同じ速度で歩けるようになった。

IMG_0333小丸山に着いた。
Oさんの後方に見える構造物はシカ侵入防止のための回転扉とネット。
中に入ると元スキー場のゲレンデが広がっていて、1445段の天空回廊がレストハウスまで続いているが私たちはもちろん、ゲレンデ外の旧登山道を下る。

IMG_0334IMG_0335
同じ位置から赤薙山を仰ぎ見る。
赤薙山は標高2010メートル。
管理人が日光に移り住んで初めて登った2千メートル級の山なので、特別な思い入れがある。しかし、その後はこの山を目的に登ったのは数えるほどしかなく、今では女峰山への経由地としてしか認識しないほど冷遇しているのはいただけない。初心に返って今年はもっと登ってあげなくては。

IMG_0336急な登山道を下ってスタート地点に戻ってきた。
今冬、あと何回スノーシューで登るかわからないが、丸山にはずいぶんお世話になった。
ツアーに参加したお客さんが喜んでくれたのも丸山の存在あってのことだ。
奥日光のコースにはない開放的な景色と厳しい斜面、お客さまの喜ぶ顔と苦しさに耐える顔、どれをとっても充実感溢れるのが丸山コースである。


Oさんにはこの冬だけでスノーシューツアーに6回も参加していただきその上、お友達まで紹介してくれたことに感謝。管理人が主催するツアーは所要時間が長いだけに、お互いの趣味である山の話ができ、吸収できることがたくさんありました。来シーズンもお待ちしています。
Eさんにはスノーシューが初めてにもかかわらずこのような急斜面を経験させてしまい面食らったことと思いますが、達成感があったと聞き安心しました。丸山コースを経験すれば他のどんなコースも歩けるはず(頑張れば)なので、是非また来年もお越しください。


スノーシューツアーは予約ベースで残りあと2日になった。明日と来週の土曜日だが来週は天気次第ということをお客さまに伝えてある。予報では週明けから気温が上がるらしいし雨の日が2日もあるから、雪質の劣化は免れないであろう。雨が雪に変わってほしいと切望するが今年の天候は一筋縄ではいかないほど、苦しめられた。昼食を断念したことなどかつてなかったことなのに、実際に起こった。
先の天気予報に一喜一憂するのは疲れるが、ツアーに参加するお客さまに喜んでいただくための対価として受け止めている。
そんなスノーシューツアーも間もなく終わってしまう。
10年来の常連、Wさんとは管理人も初めての三岳(みつだけ)を経験した。地形が複雑な厳しいコースなので一般客向けのツアーメニューには組み入れないが、ツアーとは違った楽しさを味わうことができた。
このブログになんども登場するOさんとは6回のツアーを通じて、管理人が興味を抱いている古賀志山(宇都宮市の代表的な山)の情報を小まめにいただいている。
スノーシューツアーは間もなく終わるが管理人に新しい時間がやってくると思うと、それはそれで楽しみだ。