古賀志山は岩場が多くて危険というイメージがある一方で、春から夏は麓から山頂までいろんな花が咲く、花の宝庫でもある。それは古賀志山に咲く花だけを紹介する書籍があることでもわかる。
本の著者は宇都宮市に住むご夫婦で、95年から古賀志山を歩き始めたとプロフィールにあるから、古賀志山4年生の管理人とは年期が違う。古賀志山を隅から隅まで歩き、どこにどんな花が咲いているかを知り尽くしているのであろう。
発行元は地元の日刊紙を発行する下野新聞社で、239種が写真付きで紹介されていて定価は1000円+税。
但し、この本は図鑑とは違うから花の特徴には一切、触れていない。
花を見つけたらこの本でおおよその見当をつけ、帰宅して図鑑やネットでさらに詳しく調べるという使い方が合っている。
それと、紹介されている花が古賀志山のどのへんで咲いているのかが書かれていない。古賀志山山域はそれほど広くはないが、それでも4キロ四方あるから咲いている場所が書かれていないというのは探すのにそれなりの努力を必要とする。
場所が書かれていない理由として推測だがいくつか挙げてみた。
1.古賀志山山域ならどこででも見られる。
2.場所は自分で探しなさい。その方が楽しいでしょという出版社の編集方針。
3.古賀志山は100以上の地図にないルートがあるので場所など説明できない。
4.場所を特定すると多くの人が訪れて踏み荒らされたり盗掘される。
花を愛するハイカーの気持ちとしては上記4の理由が妥当だろう。もっともだと思う。
それだけに、この本に紹介されている花を見たいという人はバリエーションルートやときには藪こぎをしてまで、古賀志山をあてどなく歩き回るという積極的な姿勢が求められる(笑)。いや、笑い事ではないな。それは岩をよじ登ったり崖っぷちを歩いたりするので危険だもの。
管理人の経験では古賀志山で出会う地元の人に丁重に尋ねることで教えてもらえることが少なくなかった。
※4月5日(木)の花のようす→こちら
参考
古賀志山の花の情報についてはブログに詳しく書いてありますので参考にしてください。
検索窓に「古賀志山」と打ち込めば出てきます。
花の情報は4月がもっとも多いです。
2018年4月19日(木)
古賀志山は2014年10月から登り始めて今日で60回目となった。
山頂に立った数はそれよりも少ないから広義には古賀志山山域を歩くのが今日で60回目となる。
古賀志山山域には地理院地図に描かれている正規のルートの他に100本以上のいわゆるバリエーションルートがあり、それをすべて歩き尽くすという目標を立てて取り組んだが、100本の中には古賀志山山頂をかすりもしないルートがある。それが必ずしも山頂に立つことがないという理由である。
ところが、それらバリエーションルートがじつに面白い。
花の宝庫であったり滑落の危険がある岩場であったり昔からの信仰の対象が残っていたりと、退屈させない。それらを発見する面白さにつられて60回に結びついているわけだ。
今日の目的はこの時期、古賀志山山域に咲くいろんな花を探し歩くことなのである。
前回5日と同じく、森林公園駐車場からもっとも近い登山口を利用して長倉山へ行くルートを選んだ。
ここはシュンランとスミレが多く、管理人のお気に入りのルートなのである。
ちなみに今日も古賀志山山頂に立つ予定はない。
前回5日から2週間ぶりだったが花もずいぶん変わり、今はこのチゴユリの盛りであった。
ナガバノタチツボスミレ? タチツボスミレ?
花が濃い紫色で花柄や葉の両面に毛があることからニオイタチツボスミレとした(2021/04/29訂正)。
写真の撮り方が悪かった。
この頃はまだスミレを識別する特徴をよく知らず、花の色や葉っぱの形だけで判断していた。
今は紫条の入り方や側弁の毛の有無、托葉の形、茎の有無を注意して見るようにしている(2022/04/27)。
ツクバキンモンソウ
筑波山で初めに確認されたところから名がついたそうだ。
筑波金紋草というのが和名。
ヤブレガサ
葉が集合した部分から花柄が伸びて先端に地味な花をつける。
50分という長い時間をかけて長倉山に到着。
ここも地理院地図には描かれていないが356メートルのピークである。
道(バリエーションルート)はここで鞍掛山(北)とP431(北西)とに分かれる。
鞍掛山は前回歩いているので今日はP431へと向かうことにした。
ここでアスファルト道路(林道)と出合うので横断して再び林へと入る。
チゴユリ
今日はチゴユリのオンパレードである。至る所で目にした。
ルートから少し外れたところに石碑が建っている。信仰の対象物に違いない。
石の前面と背面になにやら文字が刻まれているのだが風化して読めなくなっている。
尾根の北に面した斜面は伐採されていて眺めがいい。
地図とコンパスで山座同定の練習。
中央に見えるのが鞍掛山。あの稜線は明るくてとても気持ちよく歩ける。
北西に日光連山の全貌が見えた。
一昨日の雨は奥日光では雪だったらしく、白さが増したようみ見える。
尾根の下を覗くと思いがけず、ヒカゲツツジを見つけた。
これで管理人が見つけたヒカゲツツジが成育している場所は4箇所になった。
これはヒメイワカガミ。
ピンクの花を咲かすイワカガミは日光全域でよく見るが、ヒメイワカガミは日光にはない。反対に古賀志山(正しくは山域)にはイワカガミはなく、すべてヒメイワカガミである。
予定のルートから分かれて久しぶりに三角山へ。
国土地理院地図にはこの山の名称も標高も描かれていないが地元の人が付けたと思われる山名板がある。ここで昼ご飯を食べる人が多いことから「おむすび山」とも呼ばれているらしい。
眺めがよく、静かでいい山頂である。
なお、地理院地図の等高線を読むと470メートル。493メートルはないようだ。
三角山から一気に100メートル下って林道へ出て、次に二枚岩へと向かうことにする。
二枚岩への入口を探して林道を南下。
ここでも目を左へ右へとやりながら花を探したがめぼしいものはなかった。
二枚岩の入口にはNPO法人「古賀志山を守ろう会」による立派な道標が立っていた。
鉄塔や送電線の巡視路でよく見る階段があるが、地図にはそれらの記号は見つからない。
二枚岩へのルートとしてあえて敷設したのだろうか。
ここにも「古賀志山を守ろう会」による案内板が。
設置日を見るとわずか半年前の17年9月になっていた。
これが二枚岩の由来。
ふたつの大きな板状の岩が向かい合っている。
よく見ると向かい合った岩と岩は断面がピタリと一致することから、もともとはひとつの岩だったものがなんらかの要因で割れたのではないかと推察できる。自然界の妙というべきであろうか。
二枚岩をあとに次はピーク559へと向かう。
5日に歩いたときのピーク559はアカヤシオとヒカゲツツジが見事だった。
画像はその途中に小群落を作るカタクリ。花はとっくに終わっている。
おぉ、なんと、ヒカゲツツジがまだ咲いているではないか。
一緒に咲いていたアカヤシオはすでに終わっているがヒカゲツツジは健在であった。なんという生命力だ。
アングルを変えてもう一枚。
いいですな~、この楚々とした色、形。
ピーク559。
地元の人が造った丸太のベンチがあり、眺めがいいことからここで昼ご飯を食べる人も多い。
ピーク559で今日3回目の食事を終え、下山することにした。
ここからだと一旦、古賀志山に出て4つのルートのどれかで下山する方法と中尾根ルートで下山する方法がある。
今日は中尾根ルートを歩いてみよう。
ここで中尾根と交わる。
古い道標にしたがって東へ進む。
画像下(南)へ進むと古賀志山へ行く。
中尾根を標高470メートルまで下りた鞍部で直進路と南へ下る道が分岐する。
直進すると中尾根の核心部である岩場の連続である。岩場は上りよりも下りが難しい。
今日は明日のツアーに備えて心身ともに余裕をもって下山しなくてはならないと考え、岩場を回避するルートを選んだ。
古賀志山でもっとも利用者が多い北登山道(地理院地図に記載)と合流。
水場を経て登山口の芝山橋へと向かう。
タチツボスミレは花の色が白に近い紫から濃い紫まで個体差大きく、他のスミレと見間違うことがあるが、葉っぱがハート型していることで見分けがつく。
エイザンスミレ
古賀志山山域でところどころに分布するが日光では見たことがない。
スミレはハート型の葉をしたものが多いがエイザンスミレは葉が大きく切れ込んでいるという特徴をもつ。
チゴユリ(水場の近くで)
チゴユリにしては大柄だしナルコユリにしては蕾がひとつ
ニリンソウ
1本の茎から長い花柄を出し二輪の花を咲かすのが特徴。
しかし、面白いのは二輪同時に咲くのではなく、先に一輪だけ咲いてあとからもうひとつの花が咲くこと。
北登山道はここで終わる。
以前ならこの先の赤川に架かる橋が登山口だったが2015年の豪雨によって橋が流されて以来、登山口として使えなくなってしまった。
その後、工事によってここに道が敷かれたのだが登山口としてどのような形で完成するのか、現時点ではわからない。
宇都宮市森林公園内にある赤川ダム。農業用の水を蓄えるダムで一周できる。
散歩やジョギング、自転車を楽しむ地元の人が多い。