今年初登の女峰山は積雪多く目前で撤退。次回は5月に。

2018年4月12日(木)

我が母なる山、女峰山は、ときに優しく管理人を迎えてくれ、ときに厳しく管理人を拒絶する、日光では希有な山である。
歳を重ねて体力が衰え、もはやこの山に登る資格など失せたかも知れない管理人がこの山に惹かれるのは、その厳しさなのである。
距離往復16キロ、高低差1140メートル、累積標高1800メートルというのは日光の他の山を圧倒する。女峰山の片道が他の山の往復に相当するわけだ。

この山にあと何年、何回登れるかわからないが、この山に登れるのであれば他の山は問題なく登れるであろう。いわば管理人の体力を測定するには絶好の山なのである。
体調が悪くても登れる山は数多くあるが、女峰山はよほど好調なときでないと困難である。そのとき、女峰山ははっきりと管理人を拒絶する。管理人に万一のことが起こらないようにとの慈悲であろう。

極端に雪が少なかった一昨年は4月6日に登っている。
昨年は5月8日だった。昨年も雪の少ない年であった。
そして今年、雪は少なくはない。例年通り雪深いとまではいかないまでもそこそこの量は降った。
したがって昨年、一昨年より状況は厳しいはずだ。
他の山はどうであれ毎年、女峰山は欠かさない。いずれ登らなくてはならないのなら時期は早いほうがいい。これまで見たこともない顔を拝むためにも。

2017年5月8日の様子→こちら
2016年4月6日の様子→こちら

いい青空が広がっている。
先月7日に今シーズン最後のスノーシューツアーを終え、ここを訪れるのはほぼひと月ぶりだが、すっかり春の様相に変わっている。
目を凝らすとまだ数センチだがニッコウキスゲやカタクリの若芽があちこちに見える。


天空回廊から振り返ると春霞の向こうに高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)が薄ぼんやり見える。まるで墨絵のよう。
歩き始めてわずか10分でこのような素晴らしい景色と出会えるのが霧降高原ルートのいいところ。奥日光の山だとこうはいかない。


階段の700段目。
天空回廊はここから傾斜が厳しくなる。
ここから先は100段ごとにインターバルを入れて今日の長丁場に備えなくてはならない。
向こうに見える山はスノーシューツアーでよく利用する丸山(1689メートル)。ツツジの宝庫でもある。


標高1582メートルの天空回廊の最上段に着いた。
所要時間35分。


小丸山に着いたときはこれから向かう先は霧で真っ白。
天気予報によれば今日はほぼ晴れとなっていたが山岳の天気はこれで普通というもの。


ここでチェーンスパイクを装着。
間もなく雪が現れるだろうしそれまで泥濘を歩かなくてはならない。


天気が良ければ正面に赤薙山が見えるはずなのだが、、、


焼石金剛
所要時間は1時間20分。


これから赤薙山直下のヤセ尾根を通過。
雪が溶けた今はただの尾根だが雪が厚く積もると雪庇ができて怖い尾根に変身する。


陽が差さない樹林帯には雪がたっぷり。


2時間弱で山頂に着いた。
一応、計画していた時間である。


鳥居の奥に女峰山と男体山がよく見える場所がある。


男体山


女峰山は赤薙山からピークで5つ目である。えらく長い。
まずはピーク2203の奥社跡を目指すがその前に立ちはだかるのがこのピーク2070である。尾根は極端に細くまた、岩が多い。


ピーク2070で奥社跡が見えてくる。
ここからの標高差130メートル。かなり厳しい。


ガレた場所にトラロープがかかっているがよく見ると切断されている。
この先(画像手前側)あと3メートルほどの長さがあって立木に縛ってある。そのちょうど、中間部分が切断しているのだが、切断は2箇所にわたっていて20センチほどの破片が落ちている。
トラロープはまだ新しく雪の重みで切断したとは思えないほどの見事な切り口である。なにがあったのだろう?
これ以上は邪推になるのでやめておこう。


部分的にこのような歩きやすい平坦路がある。


赤薙神社奥社跡に到着。
雪が積もった不安定な足場だったためかここまで3時間15分かかった。昨年5月はここへ来るまで雪がなかったので2時間50分。途中の休憩時間もほぼ同じなので25分も余計にかかったわけだ。


昨年5月の様子。
雪の量がまったく違う。


7月に咲くシャクナゲ。
今からたっぷりと栄養を蓄えきれいな花を咲かせてほしい。


奥社跡の次はピーク2209へ向かう。
登山道が細いため雪が積もると夏道の見当がつかず、辿るのが大変。


木々の間から見えるピーク2209。
ただし、夏道はピークへではなくやや西へ向かっていて尾根と交わる。


方向はほぼ北だが赤布や赤黄のプレートにしたがって歩けば問題ない。


ピーク2209の尾根に乗る。無雪期であればこれから一里ヶ曽根まで快適な稜線歩きとなる。


ヤハズを通過。


無雪期であれば快適な稜線歩きが楽しめるのだが、この時期は雪の不規則な堆積によって身体が安定しない。


夏道は幅1メートルくらいと狭く、両側からシャクナゲがせり出している。
雪が積もるとシャクナゲは重みで寝て雪に埋もれる。それを知らずに歩くとどうしても犠牲になってしまう。申し訳ない。


あの真っ白な山並みは新潟の山でしょう。
その手前は栃木県と群馬県の県境にある山でしょう、きっと。


ピーク2295の一里ヶ曽根。
今日のように雪が多い状況でここまで来れたのは上出来と言える。
ここで女峰山までの時間計算をした。
これまでの経験だと無雪期で1時間半、少雪で2時間だから今日の雪だとあと2時間半から3時間かかるはずだ。
山頂へは13時半から14時ころの到着になりそうだ。したがって、下山は日没になる。
夜道を歩くのは差し支えないが、ここから山頂を往復すれば2時間半から3時間プラスされる。身体が保つかどうかが最大の問題だ。
昨年から10キロくらいの距離で疲れを感じるようになってきた。足が重く、下山すると緊張から解放され疲れがどっと出る。認めたくはないのだが加齢の影響もあるのであろう。
それを考えると今日のコンディションで是が非でも女峰山の山頂に立つ必然性はない。雪が減ってもっと歩きやすくなってからでもいいではないか。そう自分に言い聞かせ、ある時間になったらその場で引き返そうと決めた。
その時刻は12時半だ。


10分ほどの休憩をとったのち、次のピーク2318へと向かった。
雪の堆積したガレ場を50メートルほど下り、次に急斜面を70メートル上らなくてはならない。


ピーク2318との鞍部に水場がある。
無雪期ならきれいな沢水が流れていて喉を潤すことができる。
しかしこの雪だと沢は埋もれていて水は確保できそうにない。


道はピーク2318で南へ転じ、正面に女峰山への美しい稜線が広がる。
ここから見る女峰山は右端の小さなピークで目を凝らすと山名板が見える(画像はズーム)。


同じ場所から思いきりズームで撮ると山名板が見える。
しかしまだ遠い。


地図にある崖記号のすぐ脇。
歩きにくい嫌らしい部分である。


おぉ、燧ヶ岳だ!
ものすごい雪の量。
昨年6月末に苦労して登ったがその記憶がよみがえる。
今年はいつになったら登れるのだろう。


時計は12時半を回った。
女峰山まで残すところ500メートルとわずかである。肉眼でも山頂がはっきり見える。
あと30~40分も歩けば山頂に立てる。往復1時間強の仕事だ。
力を振り絞って山頂までいけないことはない。
しかし今日は状況がこれまでとかなり違っている。
すでに疲れているだ。
山頂を踏んで再びここまで戻ってくるころには体力を使い果たしてしまうだろう。
帰りの行程も易しくはない。体力の蓄えがなくては下山できなくなる。
悪条件の中、ここまで来ることができただけで十分満足すべきだ。ここで引き返そう。


幅30センチしかない怖い部分。左は切れ落ちている。
この先、急なガレ場を下らなくてはならない。


歩きやすい稜線に乗った。


気温の上昇で雪が緩んだのか、踏み抜く頻度が多くなってきた。
バランスを崩してから体制を整えるのにかなり体力を使う。


ピーク2318からの下りはこれで終わり間もなく水場のある鞍部に着くはず。


水場を指す標識
この時期の水場がどうなっているか、読者にご覧いただくために覗いてみることにしよう。


ここに細い沢が流れていて水を補給できるがこの時期はご覧の通りだ。
雪がなくなって沢が露出するには5月いっぱいかかるであろう。
もう少し下り地面が露出した場所で10分ほど休憩し菓子パンをかじる。


ガレ場を上って一里ヶ曽根。


雪が地面に吸収されて1メートルほどの空洞になっている。
ここで見ると積雪はまだ1メートルくらいある。


ピーク2209の手前、木々の間から奥社跡が見える。


一里ヶ曽根からピーク2209へかけての稜線にはシャクナゲが多く、開花する7月はまるで日本庭園の中を歩いているかのよう。


「ヤハズ」のナナカマド。


日光市栗山の黒部ダムと青柳大橋。
今日の行程が厳しかっただけに下界を俯瞰すると気持ちが和む。


ピーク2209と奥社跡への鞍部を通過。


鞍部から50メートル登り返して奥社跡に到着。
疲れが激しい。ここで10分ほど休憩をとった。
粉末のスープをお湯で溶かして飲み行動食を食べたが疲労の回復には至らない。
この先、赤薙山までギャップをなんどもクリアしなくてはならないため、不安定なアイゼンは外してチェーンスパイクに履き替えた。


目の前にピーク2070。
管理人、これをニセ赤薙山と称している。
女峰山からの帰り、重い足を引きずるようにして赤薙山まで来ればもう安心なのだが、その前に出現するのがこの山である。
早く赤薙山にたどり着きたいと気が急いているいるところへ出現するため、赤薙山はまだ先かと気落ちするのだ。これが赤薙山であったならどれほど楽かと思う。


赤薙山を通過。


ヤセ尾根に向けての笹原を下っていく。


ヤセ尾根から小丸山までの稜線を俯瞰する。


う~ん、いい眺め。疲れが吹き飛ぶ、、、ということはない。


焼石金剛は休まず通過。


ガレ場は浮き石に気をつけながら歩く。


やっとの思いで小丸山まで下ってきた。
この先は階段なのでここでチェーンスパイクを外す。


ここから標高差230メートルを一気に下らなくてはならない。
足がもつれて階段を転げ落ちるなどということがないよう慎重に。手摺りをしっかり握ることも忘れなかった。


カタクリの若芽だ。


これはニッコウキスゲの若芽。


歩き始めて11時間強かかって下山。
張り詰めていた緊張が解け、ここから50メートル先の車までふらつきながら歩いて行った。