古賀志山で見る花たち・鞍掛山ルート(2018年4月5日)

古賀志山は岩場が多くて危険というイメージがある一方で、春から夏は麓から山頂までいろんな花が咲く、花の宝庫でもある。それは古賀志山に咲く花だけを紹介する書籍があることでもわかる。

2015-09-13 20.32.06本の著者は宇都宮市に住むご夫婦で、95年から古賀志山を歩き始めたとプロフィールにあるから、古賀志山4年生の管理人とは年期が違う。古賀志山を隅から隅まで歩き、どこにどんな花が咲いているかを知り尽くしているのであろう。
発行元は地元の日刊紙を発行する下野新聞社で、239種が写真付きで紹介されていて定価は1000円+税。

但し、この本は図鑑とは違うから花の特徴には一切、触れていない。
花を見つけたらこの本でおおよその見当をつけ、帰宅したら図鑑やネットでさらに詳しく調べるという使い方が合っている。
それと、紹介されている花が古賀志山のどのへんで咲いているのかが書かれていない。古賀志山山域はそれほど広くはないが、それでも4.5キロ四方あるから咲いている場所が書かれていないというのは探すのにそれなりの努力を必要とする。
場所が書かれていない理由として推測だがいくつか挙げてみた。
1.古賀志山山域ならどこででも見られる。
2.場所は自分で探しなさい。その方が楽しいでしょという出版社の編集方針。
3.古賀志山は100以上の地図にないルートがあるので場所など説明できない。
4.場所を特定すると多くの人が訪れて踏み荒らされたり盗掘される。

花を愛するハイカーの気持ちとしては上記4の理由が妥当だろう。もっともだと思う。
それだけに、この本に紹介されている花を見たいという人はバリエーションルートやときには藪こぎをしてまで、古賀志山をあてどなく歩き回るという積極的な姿勢が求められる(笑)。いや、笑い事ではないな。それは岩をよじ登ったり崖っぷちを歩いたりするので危険だもの。
管理人の経験では古賀志山で出会う地元の人に丁重に尋ねることで教えてもらえることが少なくなかった。

参考
古賀志山の花の情報についてはブログに詳しく書いてありますので参考にしてください。
検索窓に「古賀志山」と打ち込めば出てきます。
花の情報は4月がもっとも多いです。


2018年4月5日(木)

土日は8時前に満車になるほど利用者の多い宇都宮市森林公園の駐車場。平日は十分な空きスペースがあった。
ただし、ここは時間外は閉門するため、その日に歩くルートによって時間に制約されない隣の駐車場を利用した方がいい。
今日は15時くらいに戻る予定なのでここを利用した。


駐車場を出てすぐ右にアスファルトの林道が奥へ延びている。
この林道を入って10メートル先の右斜面を上る道が鞍掛山へのルート。


すぐ見つかったのはタチツボスミレ。
古賀志山のみならず県内の山ならどこででも見られる一般的なスミレである。


緩やかな歩きやすい道を進んでいくと、、、


すぐにシュンランのお出ましである。
このルートはシュンランが多い。


スミレは種類が多いし同じ種類でも個体差があって管理人のような素人には特定が難しい。
これは葉っぱが細長く、先端が尖っているという特徴からヒナスミレかもわからない。


右へ左へと目をやりながら咲いている花を見逃さないように注意深く歩いて行く。
だから歩速は時速1キロ程度。犬の散歩のときよりも遅い。


咲いているシュンランすべて写真に撮ったものの、ほとんどがピンぼけ。
下からのアングルだとAFといえども焦点が合わないのだよ。


これもスミレ ヒナスミレ


やがて長倉山に到着。
地図に長倉山の名称はなく、地元の人がつけた名前である。標高は360メートル。
道はここから北へ向かって下りになる。


トウゴクミツバツツジ


常緑低木のミヤマシキミ


キクザキイチゲ
長倉山を下りきると林道と交わりそこに沢が流れている。
沢の降り口で見つけた。


林道を横切ると道は再び山へと入る。
この両側はスミレの宝庫だがまだ1株もない。


咲き始まったばかりのスミレ。
う~ん、なんでしょうね、これは?
ツボスミレかなぁ?、、、
フモトスミレ


鞍掛山への上りで見つけたヤマツツジ。
まだ固い蕾の中で咲いていたのはこの場所だけだった。


これもフモトスミレ


トウゴクミツバツツジ


鞍掛山手前の大岩に到着。
ここは古賀志山や宇都宮市街の展望がいい。


古賀志山


ズミ
まさか古賀志山にズミとは、3年前に初めて見たときは目を疑ったが間違いなくズミであった。
日光に住んでいる者の感覚として、ズミは小田代ケ原や戦場ヶ原といった湿気を多く含む土壌を好んで成育すると思い込んでいるだけに、乾燥した岩場にあることが信じられなかった。

ここで地元の人と出会ったので20分ほど立ち話をする。
花の情報や管理人がまだ歩いたことのないルートなどを教えてくれた。


大岩から平坦路を数分歩くと三等三角点のある492メートルの鞍掛山に着く。
山頂手前まで視界が開けているが先は檜林。


鞍掛山から先の薄暗い檜林を脱けると北面の眺めのいい尾根歩きとなってこの辺からヤシオツツジ(画像はアカヤシオ)が多くなる。


地図には表記されていないが北面の眺めがいい小さいピークに乗る。
標高は480メートルで地元の人によって「シゲト山」という名前が付けられている。


根元から枝分かれした巨大なリョウブ。
鞍掛山ルートを歩く際の格好の目印となる。
ここを右へ行く尾根もあるが盗人山へ行く以外、他に行き先のない尾根である。


シゲト山から先、ルートは西南西、南西、南へと向きを変えやがて猪倉峠に出る。


猪倉峠からピーク431へ向かう途中のヤシオツツジ


これはヒメイワカガミ。
古賀志山一帯に多いがとっくに終わっていた
あとでわかったがこの時点で終わっていたというのは見間違いで、枯れた花弁のように見えたのは他の植物だったようだ。2週後に訪れたときは満開、盛りだった。


鞍掛山ルートと馬蹄形ルートとの分岐点、手岡峠(※)まで来た。
直進するとピーク559、伐採地を経て古賀志山へと至る。
馬蹄形ルートを歩く場合は鞍掛山ルートで来たらここを右斜めに入る。
なお、ここからピーク559、伐採地を経て古賀志山へ至るルートは鞍掛山ルートと馬蹄形ルート共通である。

※手岡峠とはここが日光市手岡(ちょうか)であることから、識別するために管理人がつけた名前である。地図に道は描かれていないし名前も当然ながらない。
一般に、目印となる場所を覚えておくには、そこになんらかの記号(識別名)がないと不便である。もしも記号をつけないとどうなるか?
檜林の中の道で真ん中に大きな岩があって倒木もある見通しは良くない場所で直進すると古賀志山へ行く。そこを右斜めに下る道が馬蹄形ルートの入口。
とあるのを手岡峠を右斜めに下ると馬蹄形ルートに入る、と覚えておけば後々、楽というもの。
※この当時の管理人の知識として、ここは日光市手岡に位置し、馬蹄形ルートへの分岐であることから手岡峠と称していたがその後、NPO法人「古賀志山を守ろう会」のWEBサイト他で手岡峠はこことは別の場所(北東に240メートル行った場所)にあることを知った。
それにともない、この分岐のことを「手岡分岐」と呼ぶことにした。ただし、正式な地名はない。いまではここに道標が設置されている。


ピーク559への尾根。


その先で見つけたエイザンスミレ


巨大な岩が立ちはだかるがここは岩の基部を巻くことができる。


通称559と呼ばれている地図にあるピーク559。
地元の愛好家が設けた丸太のベンチがある。古賀志山に賑わいとは異なりいつ来ても静かだ。
ここでのお目当てはヤシオツツジとヒカゲツツジである。


ここからの眺めはよく、北に高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)、西に日光連山、東から南に宇都宮市街がよく見える。


切り立った斜面にヤシオツツジ(アカヤシオ)が圧倒的な姿を見せている。


どうです? この色、この形の美しさ。
ツツジの女王様ですぞ(^^;)


数は少ないがこれもツツジの仲間。
ヒカゲツツジといって限りなく透明に近い「緑」色をした、なんとも幽玄的で魅入ってしまうようなツツジです。
分布は狭く、管理人はここと二枚岩、鞍掛山の西の3箇所しかしらない。
いずれも急峻な斜面に育成しているため花をアップで撮ろう思ったら命がけ覚悟(ホントに)。


ピーク559と次の目標地点、富士見峠との中間に伐採地と呼ばれている場所がある。
元々は桧の植林地だったがその桧が育ったために伐採してはげ山になった場所である。
そこに新たな桧を育てるべく幼樹が植林してある。
昨年、悪意ある何者かの手によって20数本の幼樹の幹が折られるという、実に信じられないことが起こった。当然ながら将来の木材としての価値がなくなる。
折られた桧は遠目には育っているかのように見えるが、育っているのは枝ばかりで幹は成長していない。→詳しいことはこちら


ピーク559から古賀志山を目指すがこの先はアブラツツジが数本あるだけ。
画像は富士見峠。左へ行くと赤川ダムへの近道、というか北登山という地図にある道。直進すると突き当たって右へ行くと古賀志山、左へ行くと東稜見晴台へ行く。


古賀志山山頂
地元の人の憩いの場所になっていて昼時は多くの人で賑わうがこの時間、誰もいない。
ちなみに管理人、2014年10月から数えて今日で59回目となるが、必ずしもすべて古賀志山の山頂に立ったわけではない。
ルートによっては山頂から遠くを歩くこともある。
そういう意味では古賀志山山域を59回、歩いたと言うべきところだが、それをいちいち説明するのも面倒なので古賀志山××回と書くことにしている。


東稜見晴台
古賀志山からの下山ルートはいくつかあるが、今日は岩場が続く東稜コースで下ることにした。


東稜最後の岩を下って振り向いたところ。
ここからルートを東へと変えてどんどん下っていくと北登山道入口へ出て終わりとなる。


あれれっ、あの道路に下りたいのだが道がなくなっている。道が削り取られて崖になっているではないか。これは一体、、、


う~む、降り口が見つからない。


斜面の擁壁が見つかったので足がかりとし、命がけで道路に下りて振り返ると、カメラの位置まであるはずの斜面が削り取られている。
2015年の豪雨によってこの下を流れる赤川が氾濫し、甚大な被害が発生した。
今後、水害が起こらないようにするための工事が行われているようだ。
それにしてもなんですな、この岩の凄さ。岩の上にかろうじて土壌が乗っかってるといった感じ。
山域全体がこのような岩盤で構成されているのが古賀志山の特徴というもんです。


桜が満開の赤川ダムの畔をゆっくり歩いて駐車場へと向かった。



上の地図は管理人が今日、歩いたルート。下の図はその高低差を表した断面図。
地図は説明書きが多くて昭文社「山と高原地図」風になってしまったが、赤川ダム手前、宇都宮市森林公園駐車場をスタートして長倉山から鞍掛山へ向かう左回りのルートを歩いた。
出発点と最高標高の古賀志山との標高差は370メートルしかないが、このルートはアップダウンが激しく累積標高で見ると1530メートルにもなる。距離にしても15キロに近いからかなり厳しいと言える。
これに馬蹄形ルートを加えると累積標高は2000メートルを超えるし距離は20キロにもなる。年老いた管理人、あと何回、馬蹄形ルート+鞍掛山ルートを歩けるだろうか?