紅葉の女峰山と帝釈山。あまりの疲れに幻覚に襲われる。

2017年9月26日(火)

キスゲ平(5:31)~小丸山(6:35/6:40)~焼石金剛(6:48/6:53)~赤薙山(7:24/7:30)~奥社跡(8:32)~一里ヶ曽根(9:35/9:50)~女峰山(11:06/11:10)~帝釈山(11:46/12:20)~女峰山(12:55)~一里ヶ曽根(14:16/14:25)~奥社跡(15:07)~赤薙山(16:01)~焼石金剛(16:24)~小丸山(16:50)~キスゲ平(17:17)
歩行距離:約18キロメートル

今年は山歩きの日数が少ないこともあって体力が低下気味で、10キロも歩くと疲れが激しく、帰りの足取りがおぼつかなくなってしまう。
昨年は山歩きの合間の雨の日にスポーツジムに通って筋トレで筋力の低下を防いでいたが、人口の少ない田舎のスポーツジムの悲しさでマシンはお粗末だし、30分交代で使わなくてはならなかったり、トレーナーはいないから自己流でトレーニングしなければならなかったり、それでいて月謝が高かったりするものだから2年通って辞めてからは山歩きを実践の場として週一での山歩きを課していたものの天気が悪いと行けないし天気が良くても仕事がある日は行けないといったことが往々にしてあり、次第に体力の低下に結びついていったらしい。

今日の山行のひとつ前(20日)は常連のお客さんと那須連峰の朝日岳と三本槍岳に登り、さらに三斗小屋温泉を廻る15キロの行程だったのだが三本槍岳を下山する辺りになって身体に変調を来し、以後、実に辛い思いをしながらのゴールとなった。
なんというか、小石に乗った程度でバランスを崩して身体がふらついて倒れそうになったり、段差のある下りでは後ろ足に重心を残しておくべきなのにまだ着地する前に重心が前足に移ってしまい、身体が前のめりになってヒヤリとするといったバランスの悪さを露呈した。
そのため、トレッキングポールに頼ることになり常に前屈みで歩く始末で、傍目には杖をついた高齢者(には違いないのだが)が歩いているように見えたことだろう。

古賀志山馬蹄形ルートのあとは那須連峰そして、自宅から霧降高原を往復するなど、これまでも同じ距離を経験しているものの疲れの度合が昨年とは違う。
ブランク明けが原因であればすぐに回復するはずなのだが今年はそうではない。
今日これから行く女峰山も正直なところ心配なのだが、その心配が当たってしまった。かつてない経験をしたのだ。作り話ではなく。


女峰山の登山口はキスゲ平の天空回廊スタートはいつもの通りここ、霧降高原のキスゲ平。いまや女峰山のスタンダードとなっているコースである。
1445段もの階段の登りは辛いがここを避けて女峰山へは行くことができない。


日の出に間に合った階段を登り始めて後を振り向くと、今まさに太陽が顔を出したところだった。


見事な日の出今年になって4登目の女峰山だがこれまで天候に恵まれず、景色を眺めることができなかったが今日は期待できそう。


朝焼けのキスゲ平朝日に輝くキスゲ平。
右手が丸山、階段の続く先が小丸山。


キスゲ平のノハラアザミノハラアザミ


雲海の上に高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)振り向いて北東の方角を見ると雲海上に高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)が見えた。


階段700段目。ここから傾斜が厳しくなる。
先を行くのは那須から来たというトレランの青年。彼もこのルートが好きだという。


ズームして高原山(鶏頂山、釈迦ヶ岳、中岳、西平岳の総称)を見る再び高原山


ヤマハハコヤマハハコ


雲ひとつない小丸山標高1601メートルの小丸山に到着。
44分というかなりゆっくりしたペース。
中央に見えるピークは赤薙山。
女峰山は赤薙山を過ぎてさらに5つ目のピークだ。遠いぞ~!
蛇足だが管理人は地図に描かれているピーク(標高値)の他にも2つのピークがあるのを知っている。さあ、どこでしょうか?


焼石金剛ガレ場が始まるともうすぐ焼石金剛だ。
このガレ場は浮いている石がたくさんあるので不用意に乗るとぐらっと来る。転倒の原因になるので浮き石を避けながらジグザグに歩いたほうがいい。


歩き始めて1時間16分、焼石金剛に到着。
前回8月10日も1時間16分と、まったく同じ所要時間。


赤薙山がぐっと近づいてきた。
あの緑の稜線が終わり急傾斜の樹林帯に入るとすぐ赤薙山である。


緑に見えた稜線は実は笹原で、終わると今度は樹林帯に入る。


ここで赤薙山と女峰山とを分けるが、迷わず赤薙山への道を。
女峰山と示された道は途中で崩落しているのと、歩く人がいないので藪化している。


トウゴクミツバツツジの紅葉トウゴクミツバツツジの紅葉。


赤薙山に到着標高2010メートルの赤薙山に到着した。
歩き始めて1時間と53分、焼石金剛から37分だからこれもいつもと同じ。
1445段の階段ではなんども休憩し、写真を撮るために立ち止まりながら、ゆっくりペースで歩いてきた。
ここから先、女峰山ルートの核心部分で厳しくなるため、力を蓄えておく必要があったのだ。


赤薙山は樹林の中の山頂で眺めは望めないが、1箇所だけ、鳥居の奥に開けた場所があって女峰山と男体山を見ることができる。
手前の大きなピークのすぐ左が女峰山。


これは男体山。


今日の出で立ちはローカットの靴8月の飲み過ぎが祟って体重が2キロも増え、ここ数回の山行は激しい疲れを感じたので、体重の増加分の荷物を減らすつもりで軽装備とした。
靴はローカットにして片足300グラムほど軽減、昼食はSOYJOY他の行動食のみ。飲み水は自作のスポーツドリンクを1.5Lといつもと同じだが、このルートは水場があるので非常用の水は1Lから500ミリに減らした。


5分の休憩の後、歩き始めた。


オオカメノキの真っ赤な実オオカメノキの実


シッポゴケこれは苔なんである。
1センチまで近づいてマクロで撮ってみた。
今年になってどういうわけか突然のごとく苔に興味をいだくようになり、ルート上にある苔を記録として撮るようになった。
これはシッポゴケだと思う。もちろん、後で調べて知ったのだが。


イワダレゴケこれは現時点では名称不明。葉っぱが斜めに向いていることから、どうやらイワダレゴケらしい。
苔の面白さのひとつは名前を特定しづらいことにある。
図鑑を見ても似たような姿形の苔がたくさんあって悩むばかりなのだ。そこが面白い。
名前を知りたいと思い図鑑を買いあさっているうちに6冊にもなった。
それらと首っ引きで名前を調べているがいまだにわからないものばかりである。
その理由として、苔はその日の環境次第で姿形を変化させるからだ。
一般の植物と異なり、大地から栄養を吸収することをしない苔は、日差しや空気中の湿気、二酸化炭素などの影響を強く受けて葉っぱが開いたり閉じたりするため、図鑑に載っている写真と違いが生じるのだということを理解した。
これは面白い。極めてみたいと思う。


キオンキオン


シロヨメナシロヨメナ


赤薙山神社奥社跡奥社跡に到着。
歩き始めて3時間かかっている。
咲いている花が少ないから写真を撮る時間だけ、早く到着するかと思いきや、そんなことはなかった。花が苔に替わっただけだ、写真を撮る時間は変わっていない。


次のピーク、2209への鞍部。


ヤハズピーク2209を過ぎると開放的な稜線の始まりである。
ここはヤハズという場所。木々の合間から遠くを見渡せる。


ナナカマドが赤く染まりとても美しい。


一里ヶ曽根歩き始めて4時間と4分で一里ヶ曽根。
女峰山がぐっと近づいた。


ガレ場を下って次のピーク、2318へ。


一里ヶ曽根の水場鞍部にある水場。
水の噴き出し口はルートを外れて30秒ほどのところにある。
帰りに寄ることにして通過した。


スギゴケスギゴケだと思うんだが断定できない。


オオモミジの紅葉、黄葉オオモミジかな?


ナナカマドの黄葉が美しい深紅に染まるナナカマド。実に美しい。


まるで日本庭園の中を歩いているかのよう。


これもナナカマド


女峰山が間近になった女峰山が間近に迫ってきた(中央のピーク)。


ズームアップすると山名板とそのすぐ下に人の姿が見える。


これもスギゴケだと思う。
胞子を包んだ蒴(さく)が上手く撮れた。


もうすぐだ、頑張れよ!


ミヤマダイコンソウの紅葉ミヤマダイコンソウの紅葉。


幅30センチほどの斜面の際を歩く。


ガレ場を通過。


女峰山200メートル手前のピーク。地理院地図に表記されていない三角点がある。登山者の皆さん、見つけられるかな?


さあ、最後の登りだ。


シャクナゲとハイマツが茂る斜面を上っていくと、、、


ついに女峰山をとらえた。
山頂はこのすぐ先だが、ここを山頂と呼んでも差し支えはない。


社の前から山頂を見上げる。
上空は晴れている。久しぶりに見る青空である。


ようやく山頂に立つ歩き始めて5時間と35分、今年4登目の女峰山である。
所要時間はいつもと同じでゆっくりペース。足の速い人だと4時間を切るが管理人にそれは無理である。無事に下山するためにも5時間半かけて登り、体力の消耗を防ぐ必要がある。


女峰山の西に帝釈山がある。
体調のよろしいときはあそこまで足を延ばすことにしている。
今日は完璧とまではいかないが女峰山までいつもの時間で来たので今日は帝釈山を目指すことにする。


これから帝釈山へガレた急斜面を下る。
んっ、帝釈山が雲で見えなくなってしまった。


女峰山と帝釈山の距離は700メートルと大したことはないが、稜線のほとんどがガレていたり岩場だったりするので侮れない。


赤く染まっているのはコメツツジであろう。


専女山の鎖場専女山の岩場。


振り返って女峰山を見る専女山から振り返って女峰山を眺める。
週明けにはもっと赤くなりそう。


帝釈山に到着帝釈山に到着。
視界は女峰山よりもいい。遠く燧ヶ岳が見える。


すぐ近くに太郎山すぐ近くには太郎山。


ツガザクラゆっくり昼食を食べてから戻ることにした。
キスゲ平から登り始めると完全なピストンになるが、同じルートでも行き帰りは別の雰囲気が味わえるので損はしない。
往きには気づかなかったがツガザクラが咲いていた。
花期はとうに終わっていて最後の花であろう。


コケモモの実コケモモ。
甘酸っぱい味がした。
山を歩いているとテンあるいはイタチらしい糞を見ることがある。中に果実のタネが混じっていることがあるが、コケモモも彼らにとっていい餌になっているようだ。


ツガザクラこれはツガザクラでしょう。
高山の岩場のすき間に根を張って成育する特徴をもつことでそれがわかる。


再び女峰山再び女峰山へ。
先ほどと違って辺りは霧が立ちこめ景色は見えない。


ピーク2318と一里ヶ曽根との鞍部にある水場。朝は通過したので覗いてみよう。


喉はそれほど渇いていないがここで水を飲めるのは11月くらいまで。
12月になると雪に埋もれてしまう。今のうちである。


一里ヶ曽根


紅葉のトンネルを抜けて紅葉のトンネルを歩く。


イロハモミジ?


岩の隙間に根を生やしたトウゴクミツバツツジ(たぶん)。


オガラバナの紅葉オガラバナか?


ピーク2203奥社跡ピーク2203奥社跡。
ここまで戻り、かなりひどい疲れを感じた。
いつもなら通過してしまうところだが少し休むことにした。
岩の上に腰かけて10分ほど休んだが、回復には至らないまま出発することにした。


赤薙山に戻った赤薙山を通過。


目の前に見える丸山にテントが、、、小丸山へ続く痩せ尾根。
赤薙山山頂からここまで木の根が露出した斜面を下ってきたのだが、すでに疲れている上に、こんどは木の根に足を取られないようにずっと足元を見ながら歩いたせいか、疲れはピークに達した。
平坦な尾根まで来てようやく緊張から解放され前方の丸山に目をやると、山頂に真っ白な建物のようなものが数個、建っているのを見た。
いや、建物というよりはイベント会場で目にするテントのようにも見える。
山頂に2つ、その左の斜面にひとつ、右の斜面に2つ見える。そこだけ真っ白に輝いて見え、いつもとは明らかに異なって見えた。
朝見たときにはなにもなかったが、あれは一体、何なんだろう?
明日、なにかイベントをやるためにテントを設営したのだろうか、それとも今の時間なにかをやっているのだろうか?
これまで見たことのない実に不思議な光景である。
丸山まで足を延ばして構造物の正体を確かめたいとも思ったがそこまでの体力と気力は残っていない。
取り急ぎ写真だけ撮っておこう。自宅に戻ってPCの画面で見ればなにかわかるだろう。


焼石金剛を通過焼石金剛を通過。


霧の中を歩く女性の姿が見えたいつものことながら、この時間になると霧が発生する。
小丸山へ向かう斜面は沢から上がってきた深い霧に包まれた。
深い霧の中を女性が歩いているのを見た。
目を凝らして見るとザックは背負っていない。服も軽装である。
霧の中に見え隠れし、やがて管理人の視界から消えた。
下へ向かって歩いて行ったから、そのうち小丸山の階段が見つかるだろう。迷う心配はないようだ。


小丸山の回転ゲートまでたどり着いた。
あとは階段を下りるだけとなった。
いつもなら階段を残すだけになって気持ちが楽になるのだが、今日は違った。
階段を下る体力は残っていない。疲れが極限に達し早く終わりにしたいという気持ちだけで歩いているような気がする。


霧に隠れて見えないがこの階段の下に避難小屋がある。
小屋まで約800段。300段ほど下りたところで先ほどの女性が下っていくのを見た。
もしも追いつけることができたら声をかけてみよう。
いくらなんでもこの時間、この深い霧の中をひとりで小丸山まで上ってくる人などいないはずなのだ。興味本位で上ってきたのか、そのへんの事情でも聞いてみたいと思った。
ひどく疲れているので階段を降りるペースがいつもより遅く、女性になかなか追いつくことができない。そして再び霧の中に消えて、それから姿を見ることはなかった。


霧の中のツツジの紅葉が見事霧に包まれたヤシオツツジ、たぶんシロヤシオであろう。


遭難状態で下山戻れた。
11時間46分かかってようやく戻った。
前回8月9日は12時間16分かかったからそれよりも短いが、疲れは激しい。
一時も早く自宅に帰って横になりたい。頭にはそんな考えしかない。車へ向かう膝が限界を超えてガクガク震えている。
身体はまだ以前の状態ではないのだ。昨年と比べると明らかに体力が低下している。8月のブランクだけが原因ではないような気がする。
加齢による体力低下を認めなくてはならないのだろうか、それとも他に原因があるのだろうか、それを突き止めたいと思う。

今年になって左の肩胛骨から上腕、そして指先にかけて痺れに近い痛みを感じるようになり、5月から病院で処方された痛み止めの薬を服用するようになった。MRIの結果、頸骨にヘルニアがあって、神経が圧迫されているのが痛みの原因であろうと診断された。
薬で治るものではなく、理由はわからないが自然に治り、再発を繰り返すという説明があった。
処方された薬は強力で、眠気と目まいという副作用に悩まされている。危険な作業はしてはいけないと言われている。登山はもちろん危険作業に入る。

今年になってからの激しい疲れと薬がどう関係するのかはわからないが、できることならこの薬の副作用の影響にしたい。そのほうが希望がもてる。
痛みは発症後、4ヶ月経過した今になっても治らないので薬は続けなくてはならないが、眠気と目まいは山を歩くのに致命的である。神経の痛みが治まり薬の服用を止めれば元の身体に戻る、そう信じたい。


先ほどの不思議な光景を記録として残しておくことにしようと思い、丸山を同じ場所からズームで撮っておいた。
帰宅後はあまりの疲れから食事も採らずに寝てしまったので翌日PCで見ると、、、映っていない。あの真っ白なテントが。なぜなのだ?
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幻覚(げんかく、英語: hallucination)とは、医学(とくに精神医学)用語の一つで、対象なき知覚、すなわち「実際には外界からの入力がない感覚を体験してしまう症状」をさす。聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの幻覚も含むが、幻視の意味で使用されることもある。実際に入力のあった感覚情報を誤って体験する症状は錯覚と呼ばれる。・・・ウィキペディアより
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この日は午後から霧が発生して視界から遠近感と色が失われ、丸山は灰色一色に包まれた。
山頂の木々にはすき間があってすき間から覗く色も灰色であった。
ところが視覚の問題なのか背景の灰色と木々のすき間の灰色とは輝度が違って見える。
管理人が見たテントは木々のすき間から覗く輝度の高い灰色だったのだ。ということが帰宅してズームで撮った画像を見て判明した。
それだけであれば幻覚と言うよりも錯覚(見間違い)と呼ぶに相応しいが、それをなんの疑いも持たず素直に受け入れてしまう精神状態にあったことに我ながらショックをうけた。
数十回と登っている丸山の山頂にテントが建つことなどあり得ないと理解するのが錯覚であるが、テントの存在を疑うことなく受け入れてしまったのはやはり幻覚なのであろう。