満水に期待して行ったが干上がって見る影もなかった西ノ湖。が、意外な事実に謎が解けた。

2016年8月31日(水) 晴れ

極端に少ない雪、長梅雨、晴れる日のない夏といった異常気象を象徴する今年の日光は、秋(8月下旬の日光はすでに秋)に入ってもおかしな天気が続いていて、これは日光だけの現象だけではないのだが、台風が南海上から直接、北上して関東を直撃するなど異常はとどまることを知らない。一刻も早く例年通りの天候に戻ってほしいものだがこれは地球規模の問題であり、一国民の手に負える問題ではない。

夏と秋の自然現象、なかでも台風に伴う大雨は水害や土砂災害などをもたらせ深刻だが人への被害を心配する必要のない、建物も植林地も人工物も一切ない場所では恵みの雨となり、普段では見ることができない自然の美というものが我々の前に現れる。
奥日光でいえばその代表が「小田代湖」の出現である。
台風が強い勢力を保ったまま奥日光を直撃したときだけに見られる現象で、頻度は実に希で数年に一度しかないが、その美しさには惹きつけられる。
小田代ケ原の象徴、貴婦人が湖に映り、そこをカモが悠然と泳いでいるなど、小田代ケ原に足繁く通っている人でさえ滅多に見ることのない光景がそこに展開する(画像は11年10月、台風直後の小田代ケ原)。


一方で、干上がった湖が水位を取り戻すのも大雨による恩恵だ。
中禅寺湖西端のさらに奥にある西ノ湖は、流入する川がないため雨の降らない期間が長く続くと水が湖底にしみこんで水位が低下し、渇水期におけるダム同様、干上がってしまう。
干上がった湖の水位が元に戻るにははやり、雨が降らないことにはどうしようもないわけであり、その雨こそ台風に依存するしかない。

今月になって台風9号と10号が相次いで関東を直撃した。日光もそれなりの降雨量とはなったが、とはいえ日光は栃木県北部に位置するので多くの場合、通過するのは勢力がだいぶ弱まってからだ。
長梅雨そして、台風9号と10号の恩恵にあずかれたのかどうか、この目で確かめられずにはいられない。
画像上は07年9月の台風で氾濫した西ノ湖。ここまで望まないがそこそこあってほしい。


西ノ湖へは赤沼駐車場から出ている低公害バスに乗り、西ノ湖入口で下車するのが一般的。
他には低公害バスの車道を歩くという手があるが、2時間は覚悟しなくてはならない。
ハイキングのつもりなら龍頭滝から中禅寺湖に沿って千手ヶ浜まで歩き、さらに千手ヶ原を歩いて西ノ湖まで、景色やツツジ(5月)を楽しみながら約3時間で行ける。


バス停・西ノ湖入口で下車し道標にしたがって西ノ湖へと向かう。


カラマツとシラカバに挟まれた道は開放的でとても気持ちが良いものだ。
一応、車道なのだが一般車は入ってこない。が、熊が歩いてることがたまにあるらしい。


柳沢川にかかる吊り橋。


鬱蒼とした林の中は夏でも涼しい。
この時期はシロヨメナが咲き誇っている。


バス停から約20分で西ノ湖に到着。
水はずっと後退してこの有様。
満水時はここまで水があるのに今年の長梅雨と台風でもだめだったか。


湖の西から見たところ。
平時なら左の木立ぎりぎりまで水があるのに、まさに渇水状態である。


水際に近づこうと歩いていると不思議な光景を目にした。
干上がった湖底から水が湧き出ていてわずかに残った湖に向かって流れていくではないか。
西ノ湖は外からの水の流入がないばかりでなく、湖底から水が湧いているという話もこれまで聞いたことがない。はたしてどうしてここに水が湧き出しているのか、長年通っているが新しい発見だ。


流れは水際に近づくにつれて幅が広くなり、湖底を潤している。


今度は西ノ湖を東側から眺めてみた。
画像の右の方から水が流れ込んでいる。
今日の現象を考えてみると、湖底に水源があって常時、水が湧き出ているのなら西ノ湖は渇水しない。したがって湖底に水源があるとは考えにくい。
この謎を解く鍵は西ノ湖の北、350メートルに流れる柳沢川だ。
地図で見るとわかるが柳沢川と西ノ湖の水面は標高1300メートルで同じだ。
もしも柳沢川の一部が西ノ湖の近くで伏流しているとすれば、湖底が見えるほど西ノ湖の水位が低下すなわち、水面の高さが柳沢川>西ノ湖になったときだけ両者が同水位になるよう伏流水が湖底からひょっこり顔を出すということが考えられる。管理人がいま見ている現象はまさにそうなのであろう。
ということは、柳沢川の流れが十分にあるのなら雨が降らなくても西ノ湖の水位は復活する、そう考えても良さそうだ。ただし、そのためには西ノ湖の水が湖底にしみ込む量を柳沢川の伏流水の量が上回るという条件がつく。

これまで管理人は、西ノ湖の水位は雨の量で決まる、そう思い込んでいた。
ところが湖底から水が湧き出しているのを目にして、それが答だとは言えない、そう考えるようにした。


西ノ湖が干上がるのはよくあることだ。
そして干上がった湖底のあちこちにイトキンポウゲの愛らしい姿を見ることができる。
花は直径5ミリほど、目を凝らさなければわからないほど小さい。


林の向こうに白根山が見える。
満水状態で言えば管理人が立っている場所は水の中なので平時は見ることができない。


巨大なハルニレの木。


さて、次は小田代ケ原と戦場ヶ原をぐるっと回って花を見ることにしよう。
同じバス停から乗ったのでは面白くないので、千手ヶ原を中禅寺湖まで歩いて低公害バスの終点から乗ろう。


中禅寺湖の西端、千手ヶ浜。
男体山の眺めが実にいい。
6月になるとこの近くのクリンソウの群落を見る観光客でごった返すが、季節外れの今は静かだ。


バスが小田代ケ原に着いた。
まずは小田代ケ原全体を見回すことに。
残念ながら小田代湖はできていなかった。
これから半周して次に戦場ヶ原に入り、車を置いた赤沼まで歩く。


アキノキリンソウ


木道が整備され途中までなら車椅子が入れる。


ニッコウアザミ


ホザキシモツケ


トネアザミ


ハクサンフウロ


トモエシオガマ


戦場ヶ原から男体山を眺める。


ワレモコウ


ウメバチソウ


エゾリンドウ


戦場ヶ原を龍頭滝へ向かって流れる湯川。


今日はCanonのG9Xで撮ってみました。初撮りです(^^)
この画像を撮ったのは左端に写っている、RICOH のCaplio R6。
720万画素の古いカメラですが写りのよさといい手の平にすっぽり収まるサイズといい、山歩きに携行するのに最適で管理人のお気に入り。
1台目はストロボの発光が弱くなったのでボツにして、中古を2台買って使っています。
黒いボディはRICOH のCX5。
これも名機と言われていました。

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